平凡な俺と完璧美少女

翔也

第1話

 ―「あなたの事が好きです…」


 俺は読んでいる小説をそこのページを閉じ、顔を左側に向ける。

 俺こと芝崎拓斗しばさきたくとは、学校に割りとよくいる普通の男子高校生、友達と呼べる人は居ても彼女は居ない。


「お兄ちゃん、急にどうしたの?」


 嬉しそうな甘えた感じの声でそう呟いたのは、妹である芝崎悠衣しばさきゆい

 悠衣は俺と同じ高校に通う華の女子高校生で年は一つ違いだ。そんな悠衣と放課後、今は誰も居ない教室で何故か二人きりなのだが…


「…さっさと離れろ、鬱陶しいし暑苦しい」

「えー、いいじゃーんケチ」


 そう言いながら悠衣は離れた。

 悠衣は他の女子とは違い、世間一般で言うところのブラコンと言う奴だ。人目がないからって好き勝手しやがって…


「…はぁ、悠衣?お前のせいでこっちは大変なんだよ」

「付き合ってるって言う噂でしょ?実の兄にそんな感情はないっていっつも言ってるのに…」

「あーもう!抱き着くな!」


 兄じゃなかったら持ってるのか心の中で叫び、ドアの向こうから人の気配を感じた。

 ――アイツが戻ってきたか。


「…あなた達、ホント仲が良いのね」


 そう呆れながら教室に入ってきたのは、クラスメイトの上野琴音うえのことね。成績も運動も常にトップを維持する上野は自他共に認める完璧少女。

 その見た目はかなり美人で、モデルのような彼女は何故か俺にだけこんな態度を取る。現に今もご機嫌斜めだ。


「上野…どこをどう見たらそんなこと言えるんだ?」

「……どこって…っ!」

「どうした?」

「…………何でもない」


 いつもこうだ、なにか拗ねたような感じで接してくる。

 いつの間にか悠衣は既に離れており、上野は俺達の目の前まで来て


「は、話が…あるの」


 いつもより真剣な表情かおでそう告げた上野の表情は、少し頬が赤くみえた。






















《上野視点》




 私はいつも完璧だ。

 勉強だって、中学までだけど部活も常に一位。それなりにモテたし、友達だって少なくなかった。


 そんな私は高校二年生になって、初めて気になる人が出来た。同じクラスの芝崎拓斗という男の子。この時はまだ独りで居るのが、ただ気になっていただけ。


 そんなある日、私は女の子が仲良く喋っているところを遠くから眺めていた。理由は簡単、彼がいたからである。


 仲が良いんだなって思った矢先、その女の子に対して頭を撫で始めた。その女の子は目を細め、幸せそうな表情をしながら彼と一緒に微笑んでいた。


私は胸が締め付けられたのと同時に、急に心拍数が上がった。彼が笑ったその表情かおがまともに見れなくなった。


私は、訳が分からなかった。何故自分がこんなに乱されるのか。何故さっきより気になってしまうのか。そして何故―――彼のそんな優しい顔が魅力的に感じてしまうのか

























 それから私は気付いたら、目で追うぐらい好きになっていった。でもこの感情に気付くのはもう少し先のお話。

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