1-7 10月3日
刈り終わった稲穂の香ばしい匂いが漂う頃。
週はじめの10月3日。俺は学校へ出勤する。出勤したばかりの仕事と言えば、欠席連絡の電話に対応することだったり、教員同士で諸連絡をしたりである。
休日明けの月曜日は、欠席や遅刻が比較的多い。
そんなことをぼんやり考えていると…。プルルルル!俺の近くにある電話が鳴った。さて、蒼眞か、藤岡か。どちらだろうか。俺はガチャリと受話器を取る。
「はい。桂秋中学校の
「あっ!新田先生~おはようございます!蒼眞の母です~!すみませんね、 蒼眞、寝坊しちゃって!遅刻ってことでお願いしてもいいですか!すぐ行かせますので!」
蒼眞。今年で10回目の寝坊。去年は15回寝坊したが、今年はどうだろうか。
「分かりました。それから、先週持って帰った給食着を忘れないように言ってもらえると助かります。」
「え!(あんた給食着持って帰ったって言っとらんかったやんけ!)そうなんですねー!ありがとうございます!あの子ったらそういうの全然言わないからも~!あはは、今週もお世話になります~、それじゃあ失礼します~!」
ガチャリ!と通話が切られる。パワフルなお母さんだ。電話越しに聞こえた親子の会話から、なんとなく光景が思い浮かぶ。
さて、そろそろ朝の会の時間だ。出席簿を持って教室へ向かう。歩きながら、出席簿に蒼眞の遅刻の旨を記入する。蒼眞や藤岡の遅刻がところどころ目立つが、基本的にはみんな欠席や遅刻が少ない。しかし、何か違和感がある。
(俺のクラス、全員で34人だったか……?)
上から下までざっと眺める。出席番号は34番までだ。最近、転校した子はいない。ずっと34人だったはずだ。なのに、なぜ違和感がある?
(いや、気のせいだろう。去年だって、俺のクラスは34人だったはずだ。)
そうだ。去年から持ちあがりでクラスの担任をしているが、ずっとこの人数で変わりないはずだ。おかしなことなんてない。
ふわり。甘い香りがした。これは、金木犀の匂いだ。近くに花はない。鼻腔に残った花の香りが、いやにまとわりついているようだ。
(花の匂いが、なんだっていうんだ……。)
まとわりつく違和感を振り払いながら、俺は足早に教室へと向かった。
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