貯金残高───
幸次君と呼ばれていた男の子はランドセルから計算ドリルを取り出すと私の座っている横に来てテーブルの上で宿題を始めました。
計算ドリルに『三年生』と書かれていたからまず間違いなく三年生でしょうね。妹の幸乃ちゃんはと言うと「おいくちゅでしゅか?」と目一杯可愛く聞いてみたけど、バタバタバタと急いで逃げてしまい刈谷先輩の足にしがみついて私を睨み付けました。
もしや私の"子供大好きアピール"が見破られたのかしら?それとも私をライバル視してるの?なかなかやるわね、
「ほいどうぞ」先輩がお茶を入れてくれました。
「ズズズ・・・ふうっ、あったか~い」
11月に入ったばかりで昼はまだ暖かい日も多いけど、さすがに夕方になってくるとひんやりします。
「で?どうしたんだ?またフラれに来たのか?」
「ズヒチャッ!」油断していた所にいきなり心臓をわしづかみにされて、危うく飲みかけていたお茶を吹き出しそうになってしまったじゃないですか。
「あっ!あの!私まだまだ先輩のことを……ん?」
顔を上げると幸次君と幸乃ちゃんと布団のお婆ちゃんもじっとこっちを見ていました。
「いえ、あのエヘヘな~んかお手伝い出来ることないかな~なんて思って、あれ?もしかして先輩が食事作るんですか?」
台所を見るとさっき先輩がお茶を入れながら作り始めていた夕御飯の切りかけの野菜がまな板に載ったままになっていました。
「おう、だいたいは俺かな、調子のいい時は婆ちゃんも作ってくれるけどな」
「へえ~凄いですね、あっ!そうだ私にお手伝いさせて下さい」
即決断!即行動!そうと決めると私は先輩の返事も待たずに台所に向かい切りかけの人参を手に取り見事な とは言い難い包丁さばきで勝手に料理を始めました。
「あれ?先輩、このシンクの中にある切った人参はどうしちゃうんですか?」
「えっ?そりゃ皮だったりヘタだったりもちろん捨てるよ」
「えええっ!もったいない!これまだまだ食べれますよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます