第5ページ「白井家訪問(後編)」
「なんで
「いや、な、成り行き?」
いやちゃんとした理由あるだろ。焦って変な回答するんじゃない。
「マ、お母さんなんでこの人家に入れたの」
「雪が休むから明日までに提出の書類をわざわざ持ってきてくれたのよ」
「じゃあ受け取るだけでいいじゃない!」
「まぁまぁ落ち着きなさい、とりあえずお茶と
「は、ちょっとそれはさすがに無理よ!」
「そう、じゃあ今日の事は学校に報告するわね」
「脅しじゃない!卑怯だわ!分かったから!」
「よろしい」
いや壮絶。何を見せられてるんだ俺は。友達がどうとか気が弱そうな事言ってたけどめっちゃ強かったマッマ(白井)。
話が終わると「少し待っててね」と言いながら下に降りていき、俺と白井の二人になった。なんだこれ。助けてくれ。この状況下で俺と
恐る恐る白井の方を見ると、こちらを
「はぁ、お母さんに言われたからしょうがなくよ。部屋にあるものは触らないでね」
「か、かしこまりました」
この場所では白井が絶対のルールだ。聞かないと死ぬ。または死ぬ。
嫌そうな顔をしながら扉を開けて俺を部屋へと招き入れる。おお、これが初めて入る女子の部屋!なんか興奮してきた。
けど、そんなふざけた幻想はすぐにぶち壊された。
「なによ、人の部屋ジロジロ見て」
「なんか、ザ・ヲタクって部屋だな。
「期待させたなら申し訳ないわ。あなたの言う通り私はヲタクよ。可愛い女の子が好きなの」
ほーう、壁にはタペストリー、ポスター。天井にはポスター、本棚には漫画やラノベ。さらにさらに棚には美少女フィギュアが。凄い。あ、あの子かわいい。
どこを見ても女の子らしさが少ない部屋だった。なんかイメージと違う。もっとこうふわふわした感じだと思ってたんだけどな。ごっついわ。ベットは……
「ちょ、なんで布団なんか見てるのよ」
「いや、そこだけが女の子だなぁって思える場所だったからつい」
「締めあげるわよ」
「ごめんなさい」
くすん。ただ俺は女の子の部屋にドキドキしたかっただけなのに。
冗談はここまでにして……ドキドキしたかったのは本当だが。本題に入ろう。
「昨日ゴメンな。白井の事も考えずに誘ったりして」
軽く頭を下げ白井の顔を見ると意外そうな顔をしていた。
「なんだその意外そうな顔は」
「いや、なんか風間くんって女を取って食ってそうなイメージだったから」
「俺そんなイメージだったの?」
「教室でいつも素野田くん達とわちゃわちゃやってるから」
わちゃわちゃて。
「それに別に気にしてないわ。ちょっと驚いただけだから。とりあえずそこ座ったら」
「そっか、良かった。ありがとう」
よし、モヤモヤは取り除かれた。もう後は白井(母)を待ち帰宅するだけだ。ミッションコンプリートだ!
それにしても、俺の知らないラノベが一杯あるな……。本屋にも知らんのいっぱいあったけどほんとにいっぱいあるな。こんなにあって内容頭に入りきるかな。面白そうなのもあるな。
「何冊か貸してあげようか?」
本棚を見つめていた俺は、いつの間にか本棚の前まで行っていたみたいだった。
「いや、いいよ。家に上げてもらった上にお茶まで貰ってるに悪いし」
「ほんとね。でも私的には同士が増える事は嬉しいのよ?是非歓迎したいもの」
「学校に素野田とかいるぞ。よくアニメとかの話してるのに興味ないんだな」
「あのタイプはただ苦手なだけよ」
どんまい素野田。アニメとかラノベが好き同士であってもお前という人間が受け入れられないらしい。
「てか白井が休むなんて珍しいな、そんなにそのゲーム楽しいのか?」
「楽しいわけないじゃない、時間はかかるしお金は飛ぶし。でも推しのイベントだから走るしかないのよ…!」
「それで休むって白井も意外と悪い子なんだな」
「違うわよ、普通だったら学校行ってる。ただちょーっとイベント回ってて気づいたら外が明るくなってて寝過ごしちゃったの…」
なるほど、貴様も朝チュンか。
話してる間もゲームしてるけどそんなに大変なゲームなのか……。
話し終えて少し無言の時間が来る。なんか気まずいな。何か話題は、と考え始めた時コンコンとノックされた。扉を開けて入ってきたのはもちろん白井の母親だった。
「お茶どうぞ」
「すみません、ありがとうございます」
お茶とプリンを置いて白井(母)は部屋を出ていった。
話すきっかけが出来て良かった……。
「このプリンすぐそこのケーキ屋のなんだけど知ってるか?」
「ええ、知ってるわよ。甘いものが食べたくなった時たまに買いに行くわ」
「値段もお手頃だし丁度いいよな。美味しいし」
「そうね」
再び訪れる無言の時間。
プリンも食べ終えたし帰ろうかな。
「あ、書類ってなんの書類だったのかしら。明日までだったら今書いておかないと忘れるわ」
「住所変更するかしないかのプリントだとよ」
「それくらい明日渡せばかけるじゃない……」
「印鑑とか持ち歩いてないだろ」
「確かにそうね」
溜息をつきながらケータイを置き、立ち上がった。そのまま机の置かれる方へ歩いていき、ボールペンを一本と印鑑を持ち、俺が座る前にやってきた。
「これ引越ししないに丸するだけじゃないの、印鑑持って来いって連絡すればいいのにめんどくさい」
なんというかギャップのオンパレードだったな今日は、学校ではずっと教科書見てて勉強しかしないやつだと思ってたのに、ちょっと覗いてみると色んな表情持ってて、少し白井雪という人間を軽く見すぎていたのかもしれないな。
入れられたお茶を飲み干し、俺は立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ帰るわ。明日は来るのか?」
「ええ、ある程度走っておいたから大丈夫だと思うから」
「そうか、じゃあまた明日な」
「ちょっと待って」
「ん?この事は誰にも言わないから大丈夫だよ」
「そっちじゃなくて、それも大事だけど……」
白井も立ち上がって本棚の方へ行く。
何やら探してるようだけど、俺待つ必要あるのか。まぁ、待てと言われたから待つんだけど。
その数十秒経ってから「あった」と小さい声でいい紙袋の中に綺麗に詰んでいき、それを俺の方へ持ってくる。
「これ、貸してあげるわ。素野田くんの口から出なかったけどこれもとても面白いわよ」
「あ、ありがと。でもいつ返せばいいんだ?学校だとこういうの読んでるのばれるだろ?バレたくなさそうだし」
「ライン教えるから読み終わったら連絡してくれれば問題ないわ。放課後誰もいなくなったら受け取るわ」
「闇取引みたいだな。分かった」
渡された紙袋の中には二作品入っていた。結構重いし、何冊入ってるんだろ。
その紙袋を大切に持ちながら階段をおり、俺は白井の母親に挨拶をした。
「お邪魔しました。お茶、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそプリンありがとうございます。またいつでも来てくださいね」
「はい、機会があれば」
機会があればまた来たいな。なんかすごいいい匂いするし。白井ともまた喋りたいしな。
そうして、俺は白井家を後にした。
言いたかった事も言えたし、白井と少し仲良くなれたし、家に上がれたしそれに部屋にまで入れたし……。悪くなかったな。感謝するぞ担任。
信号を渡ってすぐにつくが、晩飯の材料を買うのを忘れていた事を思い出し、少し歩くが近くのコンビニに行っておにぎりと少しの惣菜を買って家に帰った。
家に着くと結構な重量だった本を持つのに疲れ、すぐにソファに倒れ込んだ。
「重すぎだろ、何冊入れたんだよ」
読み始めると止まらないと思うからまずはさっきコンビニで買ったものを食べ、風呂に入り疲れた体をいやした。
紙袋の中を見ると中には二十冊くらい本が入っていた。二作品十冊ずつかな…。なかなか読み応えあるし、楽しみだな。
しかし、それはとりあえず置いておいて、先日買った『かわいも』の続きを魔封波をとき読もう。
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