ラノベ作家とイラストレーター
烏丸 ノート
プロローグ
放課後の教室、二人しかいない空間で、赤く眩しい夕陽が窓から差し込む。
「この子頭固くねぇか?」
「そう?女子は大体そんなものだと思うのだけれど」
窓の外には部活動を終えた生徒達の疲れきった声がここまで届く。
「いやいや、ここまで頭固い女子だったら誰も付き合わねぇよ」
「そう?、主人公に告白されてホイホイ付き合うような女の子より、なかなか自分のものにならない方がやりがいがあって良くない?」
その、二人しかいない教室に俺達の声が響く。
「いやそういう事じゃなくてだな、主人公が勇気振り絞って授業抜け出して二人で遊びに行こうとしてるのになんで断るんだよ」
「それは……授業はちゃんと出ないとダメでしょう?小学校や中学校と違って高校は義務教育じゃないのよ?ちゃんと受けないと留年、酷ければ退学になるわよ」
「そこが頭固いって言ってんだよ…」
俺の言葉に、少し濁った表情を浮かべる少女。
「普通は好きなやつに遊ぼうって誘われたら行くもんなの、特に高校なんて思春期だし悪いことの一つや二つしてみたいんだよ皆」
「なぜ…そんな事をするの?訳が分からないわ。ちゃんと授業を受けないと今後困るのは自分なのに……」
「著者が自分の書いた主人公の行いを否定すんなよ!」
自らの意思で書いた主人公の決意を踏みにじるかのような正論を語るこの少女こそ、この頭の固い子の生みの親、
「え、ここはヒロインが主人公に今自分のやるべき事は授業だと言う事を分からせて、「あ、この子は自分の成績の事を心配してくれてるんだな(ドキ♡)」って感じにときめくシーンよ」
「わかりずらいわ!どんなラブコメだよ!なんだよドキ♡って!てか主人公もお利口さんだな!今自分女の子誘ったのに授業の方が大事って断られたんだぞ!?それを気にせず授業に勤しむって勤勉か!脳が震えるよ!」
「うるさいわね、もう少し静かにして貰える?」
「マイペースにも程があるよ!」
確かに自分でもうるさいと言われるまでに大声を出したのは認めよう。
それに……
「それに私は、別にあなたに頼んで読んで貰ってるわけじゃないのよ?成り行き、成り行きなのよ?」
「分かってるよ……」
その言葉を終わりに、白井は教室をあとにした。
外ではもう部活をしている生徒の声はない。
何を思ったのか俺は教室を飛び出し、白井を追いかけた。
廊下にはもういない、だったら階段か。長い廊下を渡り、階段の方へと足を向けるが、階段にもいなかった。足速いな…。
下駄箱まで行ってやっと白井を見つけた。靴を履き終え、校門へ向かおうとしている途中だった。
そして俺は、廊下に響き渡るほどの大きな声で呼んだ。
「白井!」
白井は振り返る。
赤い夕陽が髪の毛に反射して眩しい。
「何?風間くん」
名前が出たのでここで一旦自己紹介を挟む。
俺の名前は
「風間くん?用がないなら帰るけど」
「あぁ!ごめん!あのさ、さっきの話だけどさ、白井が小説家になるの俺にも手伝わせてくれないか?」
キョトンとした顔でこちらをじっと見てくる。
すると、一旦息を整え、つかつかと俺の方へと歩いてくる。
そして、俺の前に立つ。
外から吹く風に煽られ、白井の髪が揺れる。
真っ直ぐに俺の顔を見ながら、言った。
「私は、真剣です」
「分かってる、だから手伝いたいんだ」
「条件があります」
「条件?」
「はい、貴方が私の夢を手伝ってくれるのなら、私も貴方の夢を手伝わさせてもらいます」
ニヤリと笑う白井の顔は、何故かかっこよく見えた。
俺の夢なんてきのうやおととい出来たばかりで白井には到底及ばないし、本当に叶えられるかもわからない。だけど、背中を押して貰えるなら……
「分かった。よろしく頼む」
「こちらこそ。お願いしますね」
これは、風間冬野と白井雪が一つの夢を叶えるための戦いの物語───
「帰りにアニ○イトよって行きましょう」
「いいぞ、丁度俺もよってこうと思ってた」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます