触手使いの現代ファンタジー

ペンダグラム

第1話「とあるメモ」

 二千二十五年二月十日:


 本日、緊急速報が入った。大阪にて妙な通り魔事件が発生したのだ。この事件は俺の担当ではないが、どうも妙なのでメモ代わりに知った情報を簡単に書いていく事にする。

 まず、この事件の妙なところは似た様な事件が日本以外の複数の国で発生している事にある。つまりただの通り魔事件ではない可能性が高い。

 次にこの事件の犯人は現在全員死亡している。精神的にも肉体的にも正常な状態ではない為に逮捕が難しく、日本でさえ射殺をしたというのだ。

 

 話によると正気を失った状態でまるで映画に出てくるゾンビのように歩き、誰彼構わず襲いかかったらしい。異常なのは犯行に及んだ際に人に噛み付きまるで獣のように肉を食い千切ったと言うのだ。

 しかも取り押さえようにも男複数でかかっても取り押さえる事が出来ず、それどころか木製とは言えバットで頭を殴られても平気で立ち上がった映像が出ている。

 一体、この犯人は何なのだろうか。もしかして、新型の薬物によるものなのだろうか。遺体は現在司法解剖に回されておりその結果待ちである。



 二千二十五年二月十一日:


 例の通り魔事件だが、また同じ事件が各国で発生した。事件が起きた国は全部被っているわけではなく、昨日か今日のどちらかで事件が起きなかった国もある。

 今日の事件では一部の国では確保に成功したようだが、やはり精神状態は正常ではなく言葉は全く通じないらしい。尋問で情報を得る事は難しいかもしれない。

 それと妙な情報が二つほど入って来た。片方は既にニュースでは流れた事だが、今回の犯人は全員が身元不明だと言うのだ。そして、もう一つは司法解剖の結果、薬物等を使用している形跡はなかったらしい。ただ、心臓の内部に妙な丸い石が発見されたとの事だが、関連性は不明だ。



 二千二十五年二月十二日:


 今日もまた同じ事件が発生した。しかも、事件の数が明らかに初日、昨日よりも増えている。

 事態を重く見た首相により各地に自衛隊が派遣され、暫くの間自衛隊が警戒に当たるそうだ。

 初日、二日目、三日目の犯人の全てが身元不明。そもそもこの犯人達は一体どこから来たのかが分からない。調べてみてもまるでいきなり現れたとしか思えないのだ。

 ネットでは新型の薬物、新種の寄生虫、宇宙人の仕業等々様々が噂が流れ、ゾンビのような動きからこの犯人達をゾンビと呼ぶようになったようだ。

 未だに司法解剖の結果は公表されない。最初の事件の分はもう結果が出てもいいはずだ。



 二千二十五年二月十三日:


 薄々分かっていた事だがこれはただの事件じゃない。 ついに各国で非常事態宣言が発令された。

 事件は今日も起こった。だが、今日現れたのは今まで出現していたゾンビに比べて遙かに凶悪だった。背丈は250センチを超え、異常なまでに肥大化していた。相変わらず凶器は何も持っていないのだが、素手でライオットシールドを装備した警官隊を吹き飛ばし拳銃程度では全く通用しない。殺害するまでに今までとは比べ物にならない程の被害が発生した。

 未だにこいつらが何なのかは分かっていない。だが、何かが起っているのは間違いない。それもどうしようもない事態が進んでいる。そんな予感がする。



 二千二十五年二月十七日:


 予感は当たった。当たって欲しくなかったが当たってしまった。

 二十四日にゾンビを始めとした様々な化け物共がそれまでとは比較にならない程の数で出現した。あれ程の数、今までどこにいたというのか。どこかに隠れる事なんて出来る筈もないのに。だけど、現実はいるのだ。

 被害が一体どれ程出ているのかはもう把握できていない。最悪なのは誰かが死ぬと、そいつも化け物になり果てる事がある点だ。このせいで化け物どもの数は増える一方。不幸中の幸いなのはそれが確実に起こるわけではない点と漫画やアニメのように怪我を負っただけでは化け物にならない点だ。

 

 二十三区では東側が一番多く化け物が出現し、次いで北側と副都心が多かったそうだ。ただ、最初は暴れながら他所を目指す素振りを見せていた化け物達はある時を境に一定の範囲内からは出なくなったらしい。その為、都心と二十三区の西側は今では落ち着いた状況になっている。

 他県の中には既に壊滅しているところもあるという話もある。だが、それを正確に知る事ができない。今やネットや電話が使えない状態が続いているのだ。

 連中を討伐しようにも化け物の中にはミサイルの直撃を喰らっても平気な顔をしている個体もいるらしく、成果は芳しくない。あのゾンビが大きくなったような個体ですら銃では歯が立たないのだ。

 地球は、世界はどうなるのだろうか。

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