風車の街

白と黒のパーカー

第1話 プロローグ

 僕が生まれたのはとても大きな風車が回る街だった。

 とても気持ちの良い暖かくて、けれどどこか切なさも感じさせる風の吹くいい街だった。

 そんな朧げな記憶を頼りに今日も僕の生まれた場所である風車の街を夢に見る。

 幼いころ両親の都合でどうしても今いる小さな田舎の村に引っ越さなければならなくなったのだ。

 けっしてここが嫌なわけではない。仲のいい友達もいるし、面白いお話をしてくれる物知りなおじいさんだっている。

 むしろ僕はこの村が大好きだ。

 とはいえ、それとこれとは違うのだ。

 大きくなればいずれ忘れていくだろうと思っていた故郷の記憶は、年を重ねていけばいくほど強く惹かれるようになっていった。


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