4月18日(土) 晴れ

 想像力は大事だ。


 かつて喜劇王チャーリー・チャップリンは言った。

 人生で大切なのは勇気と想像力、そして少々のお金だ、と。


 想像力は危機回避や、他者への思い遣りにも必要だ。


 しかし、今日の僕には想像力は憂鬱に働いた。


 仕事の行きに珍しく雹が降った。

 フロントガラスを、車の屋根を、アスファルトを、この街を叩いて鳴らす無数の雹。

 それを僕はコロナで死んだ人の怨嗟の声のように想像してしまった。

 昨日の日記の段で、死者は確か14万人だった。

 天から降る沢山の白い玉。14万粒より多いだろうか。屋根や窓を鳴らすカンカンという音は、のうのうと生きて、自粛要請中にも関わらず働きに出ようという僕を責め立てているかのようだ。


 お前はなんだ?

 何故生きている?

 俺たちは死んだのに?

 お前に死んだ俺たちより価値があるのか?

 今また身勝手に働こうとしてるお前に?


 サバイバーズギルトとか、生存者罪悪感と言われるものだと言うことは、阪神淡路大震災や311を経た僕は知識としては知っている。しかしだからと言って、一度抱いてしまった余りにも象徴的な天候に付随するネガティブなイメージを綺麗さっぱり割り切れる程、人間は便利にできてない。


 緊急事態宣言後初出勤だが、まあ予想通り普通に営業だった。

 社会正義や公共の福祉を優先するならば臨時休業の方がいいのかも知れんと内心は思いつつ、自粛要請下に買い物に来るお客様の対応をするのは本当にモヤモヤする。僕自身が数日前にパートさん達に語った「当店は新生児さんのための商材を提供するライフラインである」というお題目に、僕自身が縋り付きながら一日を過ごす。正直とても疲れる。


 県下に、22日から営業自粛要請が出るようだ。その中でも営業するなら、僕のモヤモヤはより一層濃密な重たいものになるが、果たして。


 帰ると香奈の機嫌が悪い。

 由美が彼氏に会いに出かけたらしい。

 まあ許してやってくれ。

 僕が君と付き合ってる最中なら、多分時々会いに行ったよ。



政府による7都道府県緊急事態宣言から11日目。

全国緊急事態宣言から2日目。


全世界感染者 225万6千人

死亡 15万4千人

(*WHOによる集計)


国内感染者 9795人

退院 1069人

入院中 8572人

死亡 154人

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