第2章 結成、魔法少女隊!

第11話 魔法少女爆誕!

 どうしても急ぎ足になるカタリナをなんどか留めつつ宿屋へ。

 2階に上って部屋に入って、扉を閉めたと同時にカタリナが転移門へダッシュ。

「お風呂のお家!」

 カタリナにとってはあの家はお風呂のお家らしい。

 まあそうだよな、最初にあの家に行ったのはお風呂の為だから。

 可愛いなと思いつつ、俺とサリナも続いて森の家へ。

 階段を上がろうかどうしようか迷っているカタリナがいた。

「ねえ、魔法を使うのとお部屋を決めるのどっちにしよう」

 おいおい。


「じゃ先に魔法を使えるか試してみようか。屋上でやるからついてきて」

 この家には屋上がある。

 入口の階段が隠れているからサリナやカタリナは気づかなかったようだけれど。

 階段2階踊り場に立ち、廊下側を向いて天井から下がっている紐を引く。

 廊下部分の天井が斜めに降りてきて階段が現れた。

「わーすごい!」

「この紐はこのためだったんですね」

 階段を3人で登って屋上へ。


 扉を開ければほぼ平らなスペースだ。

 屋上の床面は構造材の上に薄い銅板を張って、更に焼いた土で強化してある。

 これで完全な防水効果とある程度の耐熱効果がある訳だ。

 元々は魔法の実験に使えるようにこういう構造にしていたのだけれど、魔法の練習にもちょうどいい。

 何せこの家の外はうっそうとした森林で獣道さえも無い状態だから。

「さて、まずは魔法を使うための下準備から」

 ポシェットから紙と鉛筆を取り出し、呪文をささっと書く。

 口に出すと呪文が発動してしまうのでその辺慎重に。


「まずサリナから。声を出してこれを読んでみて。読めるよね」

「大丈夫です。えーと、『メタモルフォーゼでメイクアップ! 藍色のネイビー氷雪スノウ!』」

 俺は視界を録画モードにしてサリナを見守る。

 サリナはまずくるりと右回りで1回転。

 キラキラと周りに濃い青色の光を纏い、その後全裸になって両腕を伸ばし、白地に藍色のコスチュームを纏う。

 藍色の長手袋とブーツを着装し、右手にキラキラしたステッキが現れて着装完了。

 なお今まで着ていた服は収納庫に入ったのを確認した。

 ついさっきまではこの着装方法を考えた以前の俺をくそみそに思っていた。

 でも今なら考えた意図もその良さも萌えポイントもよくわかる。

 ぶっちゃけ以前の俺、グッドジョブ!


 一方サリナは着装終了後、案の定固まった。

 まあそれは予想の範囲内だ。

 気にせずカタリナの作業にかかる。

「次はカタリナ、ここに書いてあるのを読んでごらん」

「わかった! 『めたもるふぉおぜでめいくあっぷ! ぶるうおーたー!』」

 発音が大丈夫かと思ったがちゃんと起動した。

 うん、カタリナの着装シーンも可愛いな。

 あとで脳内再生しよう。


 サリナが固化から戻ったのを確認して次のステップへ。

「この服は着た人の魔力を強化する服なの。サリナの服は氷や雪の魔法、カタリナの服は水の魔法がそれぞれ強化されるようになってる。だからまずカタリナ、川で水が流れているのをイメージして、『水よ出ろ!』って言ってみて」

「わかった。水よ出ろ!」

 ザザーッ。

 大鍋1杯分くらいの水が現れ、流れていった。

 よし、成功だ。


「出来た!」

「これって、ひょっとして……」

「次はサリナの番。冷たい氷を思い浮かべて、氷の柱が立っているのを思い浮かべて唱えてごらん、『氷柱!』って」

「氷柱?」

 あっさり木材サイズの氷柱が現れた。

 うん、思った通りの高性能だなこの魔法強化装備。

 魔法を使えない普通人レベルの魔力を初歩の魔法使いレベルまで上げてくれる。

 それにしても2人とも俺より強化具合が大きくないだろうか。

 やはり本物の女の子と元は男の女の子では可愛さに差が出るのだろうか。

 ちょっと悔しいが、まあ2人が魔法を使えるんだからいいだろう。

 勿論2人は元々の魔力が魔力だから、今はまだ初級魔法しか使えない。

 でもこれで訓練すればいずれ他の魔法も使えるようになる筈だ。


 さて、サリナには一応説明しておいてやろう。

「この服は着ている人の魔力を思い切り強化してくれるの。特にそれぞれの服の属性にあう魔法を強化してくれる感じ。だからサリナは初歩の氷雪魔法を使えるし、カタリナは同じく初歩の水魔法を使えるわけ。今はこの服無しでは魔法はまだ使えないけれどね。

 でもこの服を着て毎日練習をしたら、いずれ身体が魔法に慣れてこの服を着なくても魔法が使えるようになるよ。だからこれからは毎日少しずつ練習ね」

「凄い。水よ出ろ! 水よ出ろ!」

 カタリナ、完全にはまっている。

 そうだ、そう言えばもう少しだけ魔法を強化できるかな。


「あとこの服はちょっとした癖があってね。カタリナ、今度は『お水さん出て下さい』って言ってみて」

「わかった。お水さん出て下ちゃい!」

 うん、可愛い。

 そして予想通り威力アップ。

 前の十倍以上の水が出て跳ねる。

 おかげでカタリナは水浸しだ。

 でも喜んでいる。

「凄い! 楽しい! お水さん出て下さい! 出て下さい!」

 おいおい。

 でもまあ楽しそうなので服だけ魔法でこっそり乾燥させる。


「次はサリナ、同じように『氷さん、お願いします』って唱えてみて」

「氷さん、お願いします」

 今度は氷柱じゃ無くて四角い氷だ。

 高さはやや低いが圧倒的に大きく多い。

「こんな感じで可愛くお願いすれば魔法もちょっと強化されるの。そんな訳でこれから毎日練習よろしくね」

 これで毎日着替えシーンを堪能できる訳だ。

 勿論これは2人の為であって邪念はちょっとしか無いけれど。


 さて、カタリナが疲れてきたようだ。

 見ると只でさえ少ない魔力が限界になっている。

 そろそろかな。

「あ、眠い」

 ふらついたカタリナをさっと近づいて抱き留める。

 魔力を使い果たしてカタリナは眠くなったようだ。

「カタリナは大丈夫ですか」

「心配無いわ。魔法を使い過ぎて眠っちゃっただけ。少ししたら起きるから。運動しすぎて疲れたのと同じよ。だから大丈夫」

 そう、問題ない。

 むしろこれくらい派手に魔法を使いまくった方が魔力の上昇も早いだろう。

 だからサリナももう少し練習して貰おう。

 サリナの残りの魔力を確認する。


「さてサリナ。今と同じ方法で氷を5回出してみて。出したら今日の練習は終わり。お風呂に入って、それからご飯を食べに行きましょ」

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