第9話 お昼ご飯の前に
冒険者の身分証明書を受け取り、もう一度礼を言ってから掲示板へ。
冒険者宛ての依頼一覧を確認する。
やはり魔獣や魔物は継続依頼になっている。
つまり狩ってくれば常に報奨金を貰える訳だ。
例えば黒狼が1匹で小銀貨5枚、灰色狼が1匹で小銀貨7枚。
ゴブリンだと1匹で正銀貨2枚になる。
討伐確認部位は魔石で物によっては毛皮や肉も買取対象になる。
村を救った時のゴブリン、あの魔石を集めていればそこそこいいお金になったなと思う。
でもとっくに誰かが集めているだろう。
案外集めて村で管理しているかもしれないし。
大体俺は魔物から魔石を取る方法とかやった事が無い。
まあゴブリンとか素材にならない魔物は燃やせば魔石は捕れるけれど。
魔石は基本的に燃えないから。
狼系統の魔獣のように肉とか毛皮の価値があるものは、倒した状態で直接ここに持ち込めばいいな。
手数料が幾らか取られるけれど買い取ってくれるようだ。
他に依頼は他に商隊の護衛とか荷物配送とかあるけれどとりあえずパス。
最初は魔獣や魔物を倒すだけでいい依頼を中心に受けるつもりだ。
いずれにせよだいたいの見当はついた。
今日は2人が待っているし働くのは明日からにしよう。
朝一番だと面白そうな依頼もあるかもしれないし。
宿屋に戻って2階へ。
部屋に入ってみると……あれ、2人ともいない。
買い物かなとも思ったが付近にはいないようだ。
なら村の家かな。
そう思ったところで転移門が起動した。
2人が戻ってくる。
「あ、遅くなってすみません。お帰りなさい」
「いや、ちょうど帰ってきたところだよ」
ここの部屋は狭いし村の家で休んでいたのかな。
そう思った時だ。
「お風呂のおうち、綺麗になったよ」
えっカタリナ今なんと言った。
サリナが申し訳なさそうに頭を下げる。
「すみません。余計な事だとは思ったのですがどうしても気になったので掃除と片付けをしてしまいました」
なんと。
あの只でさえ散らかっていたのに色々捜索して更に散らかったあの魔境をか。
念の為見に行ってみる。
簡易型転移門を通った先は……
おおっ!!!
あれだけ荒らした部屋が綺麗になっている。
通行可能部分以外は見えなかった床が見えるぞ。
「ごめん、大変だったでしょ」
大判の本は結構重いし龍の骨だのサーベルタイガーの牙だの大きくて重い資材も異世界の道具も大分あった筈。
それが全て綺麗に片付けられ、本棚だの部屋の隅だのに仕舞われている。
「凄い。よくこんなに綺麗になったね」
「戸棚とか仕舞う場所は色々ありましたから。他の部屋も掃除できる部分は全部やりました」
「カタリナも手伝った」
どれどれ。
この家にはリビングの他に9部屋ある。
見てみると……おおっ、おおっ、おおっ、おおっ!
どの部屋も片付いている!
まあ使っていない部屋が半分以上だったのだけれども。
強いて言えば研究室の『遺伝子書換・テロメア長回復装置』。
あれだけは大きいのでそのままだ。
でも下手に分解されて壊れてしまうよりはずっといい。
あれが壊れると男に戻れなくなる。
代替装置も作れないことは無いが必要資材が色々多すぎるのだ。
次回起動するのに必要な消耗品もいい加減入手困難な素材が多いがそれでも装置を1から作るよりは大分ましだし。
「ありがとう。まさかこんなに綺麗になるとは思わなかった」
「でも広くていいお家ですね。明るいですし風が入らないのに外が見える窓もあるしお風呂も気持ちいいですし台所も広いですし」
「上にも部屋がある」
この世界では一般的では無い透明ガラスとか魔法照明とか色々ついているからな。
ただこの家の本当の利点は実はその辺じゃなかったりする。
丸太組みで必要以上に頑丈に作ってあるのだが、実はその理由は……
まあ今はまだいいか。
「これからはサリナとカタリナの家でもあるしね、自由に使って。何なら空いている部屋を自分の部屋にしてもいいわ」
「本当!」
「あの大きい機械がある部屋以外だったどの部屋でも」
おっ、カタリナが部屋を見比べに行ったぞ。
ちなみに研究室以外はどの部屋もほぼ同じ造りだ。
窓の向きが違うけれどその程度の差。
2階に6部屋で1階に2部屋。
1人で住んでいるのに何故こんなに部屋があるのか。
ある意図を持ってこの家を作った際、どうせなら最大級の大きさにしてやれと思ったからだ。
ただ強度上の問題があってこの大きさが限界だった。
材料になる材木の長さとか金属フレームの量と長さの限界とか。
何故その辺頑丈に作ってあるかはまあそのうち。
「あ、あと結構お金が落ちていました。取り敢えずそこの戸棚の一番上の引き出しにしまったんですけれど……」
小銀貨以下のお金は集めるのが面倒だから放置したんだよな。
それもまとめてくれたらしい。
「それは全部2人のお小遣いでいいよ。どうせ気にしていなかったし」
「でも多すぎます」
「自分の部屋が出来るじゃない。そのお小遣いで買い物をして家具とか服とかカバンとか色々置けばいいわ。簡単な家具なら言ってくれれば私も魔法で作れるしね。
とりあえずカタリナの方を見に行きましょ。2階に行ったから」
「はい」
2人で2階へ。
カタリナは2階廊下を行ったり来たりして部屋を品定めしていた。
「広さも中身も家具もどれも同じだよ」
「こっちの窓と向こうの窓、どっちがいいか考えてるの」
なるほど。
なお中は机、ベッド、本棚、戸棚、洋服掛けがある。
あと魔法照明がついていて、木製の枠をずらせば明るさも調整できる。
更に魔法石を使った洗面台もある。
トイレは一応北側中央奥に2室あるのを共同で使うけれど。
カタリナは廊下の端と端を行ったり来たりしながら部屋を比べている。
なかなか決まりそうに無い。
そして俺はある事を思いだした。
そう言えば昼食の時間だよな、そろそろ。
「カタリナ、部屋を決めるのは後でいいから取り敢えず昼食を食べにいかない?」
「あ、お腹空いた」
シンプルでよろしい。
そんな訳で俺達は片付いた家から転移門を通って宿屋へと戻る。
「一応魔法で洋服を綺麗にしておくね」
掃除をして若干汚れた服を魔法で綺麗にしておく。
「便利ですね。私も魔法を使えたら掃除とか洗濯が大分早くできるのでしょうか」
ん、そうだな。
サリナの魔力は……
俺が見る限り魔法を使えない一般人程度だ。
でもそこでちょっと俺は面白い事を思いついた。
よし、後で試してみよう。
でもまずはご飯を食べてからだな。
それにご飯を食べたらある程度買い物もしておこう。
食事はまあ宿で食べるからいいとして、保存食だの2人の身の回りの色々だのを買っておく必要がある。
色々とやる事が多そうだ。
でもそれがちょっと楽しい。
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