美受肉してしまった! ~俺の異世界魔法少女伝~
於田縫紀
プロローグ 俺、三姉妹の長女になる
第1話 美受肉実施計画
俺が最初に見たものは木製板張りの天井だった。
松とかいわゆるパイン材系統の木材だな。
そう思った後、ふと気づく。
ここは何処だろうと。
見るとログハウス風の部屋の中だ。
ただ中身がちょっと普通では無い感じがする。
何せ俺が寝ている場所はちょっとベッドとは思えない代物だ。
金属製の角が滑らかな棺桶と言うべきだろうか。
それにパイプだのタンクだの怪しげな装置だのついている。
これは確か『遺伝子書換・テロメア長回復装置』だよな。
生まれ変わったり若返ったりする為の魔法機械。
確か俺自身が様々な知識と材料を寄せ集めて開発したものだ。
でも俺は誰だろう。
俺は誰で此処は何処か、その辺が一切記憶に無い。
でもそれ以外の記憶はだいたい残っているので状況はわかる。
若返りか身体改造措置を施した結果、俺自身についての記憶を無くしてしまったようだ。
御間抜けな奴だな俺は。
まあ取り敢えず起きるとするか。
身体を起こして気づく。
俺では無い、私だった。
おかしい。意識は間違いなく男性的なのだけれども。
これは性同一性障害というものではない。
きっとこの装置が動く前、俺は男だったのだ。
装置に若返りの他、性転換まで組み込んで自分を入れて起動。
結果俺から私になってしまった訳だ。
まあ仕方無い。
取り敢えず寝心地の悪い金属製容器から外へ出る。
鏡があったので取り敢えず身体を確認。
13歳から15歳といったところか。
それ以上だとすれば胸がちょい寂しすぎる。
体型細め身長やや高め、黒髪肘くらいまで。
顔は自分で言うのも何だが美人系だ。
それ以上は自分の身体だからか性欲を感じないし観察する気も起こらない。
意識は完全に男のままなのだけれども。
髪はあとで整えた方がいいな。
そう思いつつまずは服を探す。
確かこの戸棚の引き出しの中に……とりあえず下着発見。
そして服は……
戸棚を開けて、そしておもわずうええっ、と思う。
確かに女の子らしい格好だ。
でもこんなの着るのかよ。
薄くてひらひらで派手でフリフリな
しかも何着もある。
白地に赤色、白地に黄色、白地に水色、白地に藍色、白地にピンク……
一人でファッションショーでもやるのかよ。
実はこれらのコスチュームは見かけ以外でも普通の服では無い。
魔力強化装備だ。
これらの衣装を着ることによって俺が大幅にパワーアップする。
しかもそれぞれ色とデザインだけでなく性能にも違いがある。
例えば赤色は炎系の攻撃魔法が数段強力になる。
同様に黄色は電撃魔法、水色は風魔法、藍色は氷雪魔法という感じ。
無論着用しないときと比べるとどんな魔法も強化されるのだけれど、特定の属性については更に数段強力になる。
しかし何故こんなデザインにしたんだろう。
これを着るのはちょっと恥ずかしすぎる。
言っておくが普通の服はこんな派手な色なんかしていない。
生成りとかなめした毛皮にちょっと色をつけただけというのが普通だ。
貴族のパーティ用でもなければこんな派手な色の服は無いだろう。
だいたい貴族のパーティでもこんな服はまず着ない。
へそ出し超ミニスカートって水着かよまったく。
それ以外の服も一応掛かっていた。
黒猫の着ぐるみ型のオーバーオール(猫の頭型耳付きフード&しっぽ付)。
赤色に白い線の入ったジャージ。
あとフリフリの服の上に着る為用らしいコート。
いずれも怪しく恥ずかしいコスチュームほどでは無いが魔法効果がある。
黒猫さんオーバーオールはおそらく睡眠用で疲労及び魔力回復効果。
ジャージはトレーニング用らしく鍛錬効果5倍。
コートは温度調整魔法付きだ。
ほんの少し悩んだ後、ジャージを着用させて貰う。
なおジャージなんて服はこの世界には無い。
他の世界の知識を魔法で調べた際、便利そうな服なので作っただけだ。
若返る前はこの世界に限らず色々な世界から知識を集めていたから。
さっき寝ていた装置だって様々な世界の知識を集めて作り出した代物だ。
それにしても何か、起きて服を着ただけなのに非常に疲れた。
何考えているんだよ若返る前の俺。
そう思って、そう言えば俺が誰なのか此処が何処なのか何も解決していないことを思い出す。
でも『此処は何処? 私は誰?』以外の記憶はほぼ完全。
だから手がかりになりそうなものがある場所だってすぐに思い出せる。
確か俺は日記こそつけていないがメモとか案とかをノートに書き殴っていた。
そのノートの位置は確か机の一番上の大きい引き出し。
机をがさると思った通りノートがあった。
パラパラページをめくって中を調べる。
そして俺は理解したくない事実を知ってしまった。
この姿になる前の俺が何を意図していたかについてだ。
汚い文字でこんな記載があった。
『いよいよ美少女受肉実施計画実施の時が来た。ブサメンに生まれたが為に虐げられ陰に潜みひたすら魔法知識を究めていた暗い日々はもう終わる。メタモルフォーゼでメイクアップ! 美少女に生まれ変わってウフフに生きるのだ』
駄目だ。俺は精神にダメージを受けた。
若返る前の俺はこんな奴だったのか。
もう沢山だ。
俺はノートを閉じる。
今見た事は忘れた。
俺は新たな人間として生まれ変わったのだ。
あとはもう無かった話にさせて貰おう。
でもとりあえず意識があわないし男に戻るかな。
でもそう思って気づいてしまう。
男に戻るためにはあの『遺伝子書換・テロメア長回復装置』をもう一度動かさなければならない。
それには膨大な魔力と様々な材料が必要だ。
例えば大龍レベルのモンスターの魔石とか、月に照らされた妖精の泉の水とか、童貞のユニコーンの角とか。
そんなものの在庫はこの家には無い。
装置を使う時に使ってしまったので残っていないのだ。
しかも今の状態の俺、素の状態では大した魔力は無い。
いや普通の魔法使い以上の魔力と魔法の実力は一応残っている。
でも大龍レベルのモンスターとかを相手にするような化物レベルではないのだ。
つまりは当分この姿でいなければならない。
何かもう絶望しかない状態だ。
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