世界観設定

◆「永世王国 エタニティ」現在の歴史

 この世界は永遠を生き続ける国王陛下によって作られました。

 民は毎日農作業などの仕事をして、それの報酬として国王が民に何不自由のない暮らしを約束しています。

 食糧不足もなく、全ての人々に住居があり、不平等などはなく、病気などもなく、一切の苦しみがない、全て国王が作り出した魔法術式システムによって供給されるのです。

 そこには争いや不満などは一切ない、ただただ平穏だけが存在する世界です。

 誰もが純粋無垢な、欲にかられることのない、何一つ不自由のない完成された平穏な世界です。


☆世界の真実

 本来、この世界には無限にも思えるほどの本が存在していました。

 それはこの世界ができたすぐに、様々な神様がそれぞれが綴った書物をこの世界に残していきました。それはこの世界の物語もあれば、違う世界で綴られた書物などもあり、物語もあれば伝書、図鑑、歴史書、詩集などありとあらゆる書物を残していったのです。なぜ神様が残していったかはわかりません。ですが、ありとあらゆる本を残していった、という事実だけが残っています。

 そして、その本を残された人々は、その本からいろんな知識を得て、それらを使って世界を発展させていきました。できたばかりの世界では法などは存在せず、誰もがありとあらゆる本を読むことができたのです。

 人々はありとあらゆる書物を通して夢を見るようになりました。希望を持つようになっていったのです。この主人公のようになりたい、こんな国を作ってみたい、こんな暮らしをしてみたい、と沢山の夢を見たのです。

 しかし、それは同時に人々に欲望を与える結果にもなりました。そう、この世界が発展していった先には、人同士、国同士による大きな、とても大きな戦乱が起きました。それによって多くの人々は、世界は傷つき続けました。

 そんな世界で、人々が安穏を得ることができるのは夢の世界だけでした。夢の世界だけはどんな人々でも繋がることができる世界であり、こんな世界が現実であったら、そう思っていました。

 そして、ある時、一人の国王が現れました。その国王はありとあらゆる戦乱を制して、散り散りになっていた国を一つにまとめ上げました。そして国王は一つにまとめ上げたその国を「永世王国エタニティ」としたのです。

 

 一つにまとめ上げられた世界では、人々は一時の平穏を得ることができました。

 その国王の下、法を敷かれ、誰も傷つくことがない、そんな世界を作ろうとしました。しかし、ひとたび知識を、欲望を持った人々には法を作ったとしても止まらず、罪を犯すものはどこにでも存在していました。


 そして、そんな世界が続いた結果、国王はすべての本を焼き尽くす、と宣言しました。

 彼の言い分としては、人々に知識があるから人々は争う。争いの無い、完成された世界を作るためには人々には知識は不要、と断じたのです。

 彼の完成させた魔方陣によって、人々の欲望から焔が生まれ、その焔たちは次々に人々の収めていた本を消し炭にしていきました。そして、かねてから準備していた秘術によって人々に魔方陣を刻み込みました。それは人々から不要な欲望を生み出す知識を奪い、完全に人々を管理するための魔法術式システムでした。

 ですが、彼ら国民もそれにひれ伏しはしませんでした。確かに本は人々に欲望を与え、戦乱を巻き起こしました。しかし同時に本は子供たちに、私たちに希望と夢をくれた、大切なものだと思っていました。

 その物語を全てこの世からなくなるということは、これから生まれてくる子供たちに自分たちのような夢と希望を抱けなくなるのでは、と危惧しました。

 そこで、彼らは夢の世界へと至る秘術を用いて、夢の世界に図書館を作り出しました。その図書館に向けて人々はたくさんの本をおさめたのです。

 そして、全て納めた後、彼らはその夢に至る扉を完全に閉じてしまいました。これによってエタニティから本に干渉することはできなくなってしまいました。


 それ以降、エタニティからはその図書館に干渉することはできず、人々は物語も詩もない、それ故に悪しき感情もうまない、ただ平穏だけが存在する世界となりました。

 ですが、この世界でもまだ繋ぐ可能性は残っていました。それは「20歳未満の子供」であることです。

 20歳未満の子供だけはある時、眠ると夢の世界を通じてこの図書館へとやってきます。その図書館にいる司書が彼らに相応しい本を選んでくれます。

 その本に宿っている著者の思い、願いが形となって子供たちに自分の書いた本を伝えるのです。または、白紙の本もあります。

 この物語が、子供たちに未来への希望と夢を与えると信じて……。


●重要ワード

◆夢の世界「レアリゼ」

 エタニティに住む子供たちが眠ることで行くことのできる世界です。

 この世界はありとあらゆる人々の意識がつながっており、遠くて出会うことのできない人々とも出会うことができます。

 かつてはもっと広々としていて、いろんなお店などがあり、色んな世界があったといわれています。

 しかし、夢の世界が閉ざされた後は、全て夢幻図書館の内部にある町となっています。

 喫茶店など本を読むのに適した場所や、雑貨などを作ることのできるお店などもあり、本を読み聞かせながら子供たちと紡ぎ手ストーリーテラーが交流することのできる場所もあります。

 また、紡ぎ手ストーリーテラーであれば紡ぐことでチェス盤やオセロといったボードゲームを出すこともできます。子供たちの中には物語の読み聞かせをしてもらっている際に一緒にゲームも教えてもらうこともあるでしょう。

 

 この世界に行くことのできるのは子供たちだけ、夢魔と紡ぎ手ストーリーテラーに招かれた子供たちだけが入ることの許された世界なのです。

 


☆世界の真実

 本来はエタニティ国王が魔法で作りだした世界。

 一般的には夢とは睡眠中に見る、過去の記憶に関する事柄から生成されるもの、とされている。 

 しかし、かつての国王は夢の中には無意識にあらゆる人々がつながっている場所があることを突き止めました。

 その場所で有れば、どれだけ離れた場所であろうとも繋がることができる。そう考えて、彼は夢を管理する存在を魔法によって生み出し、そこで夢の世界を作り上げました。

 ありとあらゆる人々が繋がることができる、例え戦乱などでバラバラになっている人々でも繋がることができると信じて……。

 その結果、戦乱の中にいた人々は心の平穏をその場所に求めるようになりました。誰が作ったかは人々は知りません。ですが、戦乱で心を傷つけた人々にとってそこだけは平穏そのものだったのです。

 

 現在は、その世界は一人の司書が管理しています。その管理している司書の正体は国王が作り出した夢魔です。国王が不老不死になる前に作り出した、その時の思いを込められた存在です。

 彼女は彼が不老不死になる前の思いをトレースしてこの世界を存続させています。

 

◆夢幻図書館

 夢の世界「レアリゼ」に存在する巨大な図書館です。この図書館にはありとあらゆる書物が収められています。

 それは小説だったり、伝記だったり、歴史小説だったり、その本の種類は多岐にわたります。

 そして、その本一つ一つにはそれを書いた著者の想いが宿っています。

 本はそこにあるだけでは意味を成しません。それを読む人がいて本の存在価値が生まれるのです。

 それは、本を書いた著者の想いも同じであり、そのためこの図書館に存在する本は著者の思いが具現化して人の形をとり、この図書館に来る文字も読めない子たちに読み聞かせてあげています。

 

 時々、別の世界から来た存在が、自分で書いた本を図書館に残していった、なんていうこともあるそうですよ?


☆世界の真実

 夢の中に現実に存在するものを入れることは不可能です。そのため、ここに存在している本はすべて、実際にいれたわけではないのです。

 これらすべては、本がすべて焼かれる前に人々が夢の世界に集って、そこで自らの思いの残したい、希望を、この本たちを残したい、その想いを司書が集め、新しい魔法として作成したものです。

 それぞれの想い、そしてその内容を宝石にすべて刻み込まれています。その宝石を本という媒体に投射することでこの図書館にある本は作られるのです。


 また、別の世界から来た人が、空白の書に綴ることもあります。その空白の書が完成された時には司書が宝石を渡します。その宝石にその想いを込めることで、図書館に収められます。そうした本は後々新しい紡ぎ手ストーリーテラーを生み出すのです。


紡ぎ手ストーリーテラー

 夢幻図書館に収められている書物の著者の想い、著者の魂、それが具現化した存在です。

 夢幻図書館にある本たちはすべて、魔法の宝石が付けられています。

 その宝石には、それぞれつけられた物品に込められた思いを汲み取り、そして他者からのその物品を大切にする思いをため込むことで、その装飾品を核として著者の魂が具現化するのです。

 書物は小説だけではありません。歴史書や詩集、楽曲などもあります。それらにもまた、子供たちに残したい、という思いがあり、それが著者の魂を具現化させるのです。

 紡ぎ手ストーリーテラーの力の源は信仰心。読者の思いが力となります。読者リーダーからの思いがなければ魂が宿っても動くことも、物語を綴ることもできません。

 そして、全ての紡ぎ手ストーリーテラーは同じ思いを抱いています。それは子供たちに自らの物語を伝えたい、希望を与えたい、その想いがあるのです。

 それ故に、彼らは図書館の本を焼き尽くそうとする国王の意思を断じて許さず、それに抗い、子供たちに自分自身の物語を残そうとしているのです。


☆世界の真実

 著者の想いが込められたもの、それが紡ぎ手ストーリーテラーたちの共通認識ではありますが、正確には異なります。

 著者そのものの想いではなく、正確にはかつての人々のこの書物を、この感動を、希望を残したい、という想いを集めて作り出した魔法の宝石です。

 そして紡ぎ手ストーリーテラーとは、その想いのカケラが子供たちに伝えるための手段として、人の形をとっているのです。

 そのため、紡ぎ手ストーリーテラーの人格は書物への思いから形成されており、その著者本人の人格になることもあれば、この書物を書く人はこんな人だろう、という人々の思いから人格ができることもあります。また、その容姿もその書物への思いが反映されるため、異形の姿になることもあります(例えば、人魚姫のような作品であればそれに影響されて鱗を持つこともあります)。

 そのため、彼らはこの夢の世界、そして彼らの読者リーダーが存在しなければその姿をとることができないのです。聞いてくれる存在がなければ、人の形をとる必要もまた、ないのですから……。


読者リーダー

 エタニティに住む子供たち、まだ20歳にならないながらもしっかり自我を持っている年頃の子供たちです。この世界の人々には必ず魔方陣が体の一部に浮かび上がっています。その部位は人によって様々です。

 子供たちは勉学などは受けることができず、文字なども読めません。

 生まれたときから国王が作った魔法術式システムによって育てられます。小さいころは生きていく上で必要なことのみを教えられ、ある程度成長したら大人の仕事を手伝ったり、弟や妹がいるのであればそう言った小さい子の面倒をみたりして過ごしています。

 この世界の人々は基本的にそう言ったありかたに不満も抱くことはありません。何故なら彼らには知識がないからです。ここより外の事など知らず、その村の中で国王のために働く、それだけで満足なのです。

 そのため、本来子供たちは夢を見ることもありません。睡眠はただ、身体を休めるためのものなのです。

 しかし、その年はそれぞれ異なりますが、20歳までに子供たちは夢を見ることがあります。

 その夢こそが、夢幻図書館に、そして読者リーダーとなるために必要なことです。

 読者リーダーには20歳未満で有ればどの子供でもなることができます。いいえ、なるのです。

 それはすべての子供たちがそうなります。まるで招かれるようにして、いつの間にか夢を見るようになるのです。

 そして、どの子供たちも初めての物語に夢中になるものです。何せ、今まで娯楽といえるものも何もなかったのですから。

 確かに最初は物事を知らず、知らない単語が出ればそれを紡ぎ手ストーリーテラーに聞きます。しかし無知ではありますが、知能は高く、一度聞けば理解することができます。

 そして初めて聞く物語に対して深く思いを抱き、もっと続きが読みたい、結末を知りたい、という求める心が、紡ぎ手ストーリーテラーの力になるのです。

 

 初めて抱いた「続きを読みたい」という気持ちこそが、彼らに夢と希望を与えるのです。


☆世界の真実

 この世界に住む人々は全員、魔法術式システムによって管理されています。

 生まれたときに魔方陣を刻印されます。その魔方陣を通して人々は魔法術式システムを受けています。それによって病などはすべて自動的に排除され、その人の必要なものを常に供給され続けます。

 生きるために必要なことも全て魔法術式システムによって脳に刻み込まれます。そのため、人々は何不自由なく暮らすことができるのです。

 余分な知識もないことで、欲望もまた、持つことがないのです。


 そして、彼らは皆、寿命も50年と決まっています。50歳になると眠るようにその命を終えるのです。

 老いによる苦しみも与えない。誰も苦しませない。誰も争わせない。

 それこそが、国王が施した魔法術式システムなのです。


 しかし、この魔法術式システムも体がまだ未成熟な子供にすべての機能を使うと子どもの身体が先に壊れてしまいます。そのため、子どもの間は出力をセーブされています。そのため、夢を見ることができると考えられます。

 また、人によっては魔法術式システムが効きやすい人もいれば効きづらい人もいます。それによっては人よりもより早く大人になる子供もいれば、魔法術式システムに縛られず、欲望を抱いて、体から欲望の焔が噴き出る、焔の子が生まれたりします。


◆迷い子

 まだ紡ぎ手ストーリーテラーとつながっていない子でも、夢の世界にたまたま迷い込むことがあります。それが迷い子です。

 それは偶然であり、紡ぎ手ストーリーテラーとつながっていない子供たちは現実に戻ればそのことを忘れてしまいます。

 しかし、迷い込んだ子供を蔑ろにすることはありません。他の紡ぎ手ストーリーテラーがペアの読者リーダーと一緒に読み聞かせをすることもあれば、読者リーダーが来ていない時にゲームを教えてあげたり、遊んでもらったりすることもあります。

 現実に戻って、読者リーダーではない子供はそのことを忘れてしまいます。それでも心には何か残るものがあるのです。


◆心のインク

 戦いに勝利すると司書からもらうことのできるインクです。

 このインクを用いることで読者リーダーの心に直接、綴った物語を刻み込むことができます。

 一度に刻むことのできる文章は、読者リーダーに読み聞かせてあげた範囲までとなります。

 そして、その書物を全て心のインクを用いて完結まで書くことで、読者リーダーの心に永遠に忘れることはなくなるのです。そう、魔法術式システムを用いても決して消えず、読者リーダーの心に刻み込まれるのです。

 そして、心に刻まれた書物は子供たちが大人になっても、子供たちに夢と希望を与え続けるのです。


☆世界の真実

 心のインクとは、司書が子供たちのもっと先を読んでみたい、どんな物語が続くのか楽しみ、という書物への思いを汲み取って形作ったものです。

 そのため、心に刻み込まれる、というのは、子供たち自身が忘れたくない、という強い思いからのものでもあります。その思いが無いと例え魔法を用いても子供たちの心自体が拒否してはじいてしまうのです。

 そのため、物語全てを一度に書くことはできません。なぜならまだ子供たちはその物語を聞いている訳ではないのですから。


◆焔の子

 子どもの中には体に描かれた魔方陣から焔が出てくる子供がごくまれにいます。それが「焔の子」と言われます。

 焔の子はこの国の中ではあってはならない存在、とされており、焔の子が出てきた際にはすぐに隔離処置が行われます。

 そして、およそ1年ほど経過すると、焔の子は元の状態に戻って帰ってきます。周りの大人たちと同じように、落ち着いた様子で戻ってくるのです。


☆世界の真実

 人々の中には魔方陣が効きにくい人がいます。そういった魔方陣が効きにくい人は世界に対して疑問を持ちやすく、それによってもっとこうしたい、こうありたい、という欲望を持つことがあります。そして、この刻み込まれている魔法術式システムはそういった欲望から焔が生み出されるのです。

 そう、つまり焔の事は、欲望を抱いた子供、ということです。ただし、そういった魔方陣が効きにくい人と言うことは、その魔方陣より生み出されている焔に対しても強い耐性を持っており、直ぐに焼き切ることはありません。そのため、一度城の中の魔方陣で一年をかけて調整されるのです。それは魔方陣だけではなく、人体そのものを大きく調整されます。

 そして、調整されることでその体は、精神は他の大人、つまり希望を一切抱かないものへと変えられてしまうのです。


◆永世王国「エタニティ」

 面積約900万㎢という巨大な王国です。この王国には、戦乱で生き残った人々が住んでいます。

 首都は居住区となっており、木製建築が立ち並んでいます。それらすべての木には魔法が宿っており、常に適度な環境が保たれています。

 居住区に住まう人々は常に決まった日常を送っています。朝起きたら朝食を食べ、時間になれば人々に刻まれている魔法術式システムによってそれぞれ仕事場につきます。仕事場は調理場か農場を割り振られます。農場では作物と魔力を蓄える作物を栽培しています。途中で昼食を挟み、既定の時間になると再び居住区へと転移され、夕食を食べ、そのまま眠りにつきます。魔法術式システムによって常に体は清潔を保たれているため、風呂に入る事も不要です。

 そして、首都の中央には石造りの巨大な城が存在しています。国王が住んでいること以外には、その内部には何があるのか、ここの住民たちはだれ一人知りません。なぜなら誰一人として入ることはできないからです。


☆世界の真実

 中央に存在する巨大な城は、巨大な魔方陣となっています。その魔方陣は魔法術式システムを起動し続けています。同時にこの魔方陣には防衛の魔法も刻まれており、この世界に存在するものでは何一つ傷をつける事が出来ないようになっています。

 そして、その魔方陣の中心には国王が座っています。国王がこの魔方陣を一人で管理しており、この世界を常に支え続けているのです。


◆喫茶店「四季」

 夢の世界「レアリゼ」の中にある一軒の喫茶店です。

 この喫茶店では不思議なことに、入るとその度に窓から見える風景が春、夏、秋、冬と変わっています。それに伴って喫茶店で提供されるお茶やお菓子も変わってきます。

 とても静かな空間で、周りに人がいない、二人だけの空間にしてくれます。

 そのため、紡ぎ手ストーリーテラーには好んでこの喫茶店を利用する人が多くいます。


混沌の焔ブレイズ

 エタニティ国王がかつてありとあらゆる本を燃やすために作り出した黒い焔、それこそが「混沌の焔ブレイズ」です。

 エタニティ国王が作り出した儀式魔法で、この魔法は書物を燃やし尽くすまで存在し続けます。その姿は黒い焔ですが、燃やす際には黒い人影の姿をとり、周りには炎が取り囲み、その焔からは何かの映像が陽炎のように浮かび上がります。

 かつて、この混沌の焔ブレイズによっていくつもの書物が焼かれました。しかし、それでも人々は残った書物を夢の世界へと残すことができました。


 しかし、エタニティに書物が無くなった後も混沌の焔ブレイズはその役目を遂行し続けています。

 夢の世界に至ることのできない混沌の焔ブレイズでしたが、子供たちが物語から希望を見出していくと、その心の輝き、心の焔から発生することができるようになりました。

 子供たちが夢の世界に行けば必ず混沌の焔ブレイズは発生する。しかし、子供たちを招待しなければこの世界自体が意味を失ってしまう。

 もしも混沌の焔ブレイズに敗北した場合、新たな紡ぎ手ストーリーテラーが送り込まれるまで多くの書物が焼き尽くされます。それは、希望を見出す限られた物語が、書物が永遠に失われることになります。

 そのため、紡ぎ手ストーリーテラーたちは混沌の焔ブレイズが発生するたびに破壊するために戦う、永遠の戦いをしなければならないのです。


☆世界の真実

 混沌の焔ブレイズとは、書物を燃やすための焔、という認識でありますが、正確には異なります。

 エタニティ国王が行った魔法陣とは、世界中の人々、世界の理に対して行ったものです。

 その理とは、人々が生きるために必要な三大欲求以外の欲望を抱いた瞬間に、その抱いた対象を壊す焔を人々の心から生み出す、といったものでした。

 つまりは、この混沌の焔ブレイズとは、人々が生きる上では不必要な欲望そのものなのです。

 混沌の焔ブレイズが人の影の姿をとるのは人々の欲望を映し出しているからこそです。そして、その陽炎はその欲望によって引き起こされる悲劇が映し出されているのです。その悲劇とは、その欲望があることで引き起こされるかもしれない未来の姿かもしれません。


 希望とは、欲望から生まれるもの。その希望があるからこそ、魂は輝く。そう考えた国王が行った儀式とは、欲望そのものを焔とすることだったのです。

 そうすれば、世界から欲望はなくなる。人々の輝きがなければ、世界は滅びることはないのですから……


混沌の紡ぎ手カオステラー

 元々は紡ぎ手ストーリーテラーだった存在ですが、混沌の焔ブレイズによって燃やし尽くされた結果、生まれるのが「混沌の紡ぎ手カオステラー」です。

 彼らにはまだ元々あった物語が残っていますが、既に燃え尽きてしまう寸前なのかもしれません。

 それでもなお、彼らは残そう、という意思でその物語を紡ごうとします。しかし、彼らが紡ぐ物語は他の書物を燃やそうとすることでしょう。

 彼らはこのまま存在しては他の書物すらもすべて燃やし尽くそうとしてしまいます。既に燃え尽きてしまったことから、倒したらその物語は永遠に消失してしまいます。

 それでも、紡ぎ手ストーリーテラーは物語を守るために、かつての仲間を倒さなくてはいけないのです。


☆世界の真実

 紡ぎ手ストーリーテラーたちの目的は「子供たちに自分自身の物語を残す」ことです。

 しかし、紡ぎ手ストーリーテラーの中には自分自身の物語こそが至上のもの、それ以外の物語は必要ない、という考えに至る人もいました。

 また、元々そういう思いを持っていない紡ぎ手ストーリーテラーも、ヒーロー/ヒロインが破れそうになる、つまりは自らの物語が破れそうになると、この物語だけは、自分の物語だけは残したい、と強く思います。そしてその窮地を打破する際にその思いをゆがめていくことでしょう。そのゆがめた先には、自分の物語こそ史上のもの、と考えるようになります。

 一度でもその欲望が生まれると、そこからブレイズは発生します。そして、紡ぎ手ストーリーテラー自身から発生した欲望は、紡ぎ手ストーリーテラー自身を燃やし尽くしてしまうのです。

 そして、燃やし尽くされ、焔自身となった紡ぎ手ストーリーテラーは、自らを薪にしてさらに大きく、大きく燃え上がるのです。

 自分の物語こそが至上、その欲望がさらに混沌の焔ブレイズを、紡ぎ手ストーリーテラーを燃え上がらせていき、その結果、混沌の焔ブレイズよりもより強大な存在、ありとあらゆる物語を燃やし尽くす混沌の語り手「混沌の紡ぎ手カオステラー」へと変貌するのです。

 

 混沌の紡ぎ手カオステラーへと変貌すると、読者リーダーである子供自身にも影響を及ぼします。子供もまた、その混沌の紡ぎ手カオステラーの本を至上のもととして、まるで狂信者のように魅了されてしまいます。

 そして、そんな物語の著者であるカオステラーの言うことを何でも聞いてしまうようになってしまうのです。

 

 紡ぎ手ストーリーテラーにとっては混沌の紡ぎ手カオステラーもまた、倒さなくてはならない敵なのです。

 例え、それが元々は同じ、「子供たちに物語を残したい」という思いから生まれた存在であったとしても……。


 

人物紹介

◆エタニティ国王

「私がいる限り、この世界は永遠に平穏で有り続けましょう」

 名前:シン

 性別:男 年齢:不明(見た目は40歳後半)

 所属組織:永世王国エタニティ

 約百年前、乱世で国々が崩壊していたこの世界で、戦乱をおさめ、すべての国々を統合し、平穏を築き上げたこの国の王様です。

 若くしてありとあらゆる魔法を使いこなし、その力でもってこの世界を一つにまとめ上げました。

 かつての戦乱を見てきたためか、争いを人一倍憎んでおり、この世界が永遠に平穏であることを目指し、そのためにこの世界そのものを変えようとすらしています。

 初老の男性で、穏やかな顔をしています。彼の姿はずっと変わらず、そのままの姿であり続けています。それはまるで、この王国の平穏と同じように、ずっと変わらないままなのです。

 現在はあまり人々の前に顔を出すことが少なくなってしまったそうです。



 国王の正体:かつて、戦乱をおさめた後、もうこのような戦乱を起こしてはいけない、この平穏な世界を続けさせる、そう考えていました。

 確かにかの国王が禁忌の魔法によって不老不死となった人物。不老不死になったが、同時に眠ることすらできなくなった存在です。

 目をつぶって、いやなことから目を背けることもできず、ただただ、世界の行く末を見続け、やがてそこに意志は存在しなくなり、ただ平穏に過ごさせるための魔法術式システムへと変わってしまっています。

 彼の願いは「平穏な世の中」。戦乱の世を生きてきたからこそ、この世が乱れることを嫌う。そして、それはロアテラによって乱れることもまた、嫌っています。

 そのために、彼は平穏のために、ロアテラに壊されないために、この世から希望を消し去る、という結論に達したのです。

 すべては私だけが決断しよう。他のものはただそれに従うだけでいい。それで、この世は穏やかになる。余計な知識があるから欲望が出る。それならば、知識も、心も不要であると。

 それは、彼自身でこの世界を壊すような行為であったとしても、そのように決断してしまったのです。

 

 夢を見ることもできない彼は、ただ希望の無い平穏な現実だけを見続けているのです。


◆夢幻図書館司書

「あら、初めて見る子ね。あなたの運命の書物はこちらよ」

 名前:ヨミ

 性別:女 年齢:不明(見た目は20代前半)

 所属組織:夢幻図書館

 夢の世界「レアリゼ」に住んでいる女性。

 誰に対しても物腰柔らかな態度を示して、その瞳はまるで母親のような慈愛の思いが込められている、と人々に思わせます。

 夢の世界「レアリゼ」の事柄は常に把握しており、夢幻図書館の本もどこにどの本があるか、そしてどの本と通じ合っているかをすぐに見つけて、読者リーダーとなる子供たちを紡ぎ手ストーリーテラーのもとへ案内してくれます。

 そして、混沌の焔ブレイズ混沌の紡ぎ手カオステラーが発生した際には彼女が結界を張って、戦いのさなかで被害が広がらないように食い止めてくれているそうです。

 彼女がなぜここまで力を貸してくれるか知っている人は少なく、彼女から話すことはないです。しかし、彼女がこの世界が壊れるのを止めようとしていることは誰もが感じ取れることでしょう。


☆世界の真実

 国王が禁術を行使する前に国王が生み出した存在、夢魔と呼ばれるものです。

 元々レアリゼは国王自身が管理していました。国王が戦乱の世の中で一番初めに作ったのがこの夢の中に存在する世界なのです。

 夢の中であればすべての人々はつながることができる。たとえ、戦乱という人々の心が散り散りになった今でも、繋がることができる。そんな夢という場所に一つの希望を感じて、国王は夢の中に世界を作り出したのです。

 しかし、エタニティは自らが常に見ていなければ平穏がいつ何時崩れるか分からない。眠っている間にいつ何時、再び戦乱が起きるとも限らないと考えました。そして、彼はこの世界に永遠の平穏をもたらすために自らを不老不死へと変えたのです。それと同時に、彼は眠ることすらできなくなると確信して……。

 そこで、彼は自らの分身ともいえる存在を夢の世界で作りだしました。「この世界が人々の希望となりますように」その願いを込めて、彼女は作られたのです。

 彼女はこの世界を去る前の国王の思想を完全にトレースしています。そして、その意志を引き継ぎ、この世界を管理していました。

 そして、約十年前、エタニティにすべての書物が消えると聞いたとき、すぐさま彼女は残す決断をしました。それは、かつての国王にとっても書物とは、人々の心を豊かにするものだと考えていたからです。

 彼女の今の願いは自らを生み出してくれた国王に、穏やかな眠りを望んでいるのです。


「私の主様。あなたはとってもとっても頑張ったのです。だからゆっくり、お休みになって……」

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