4話目 後編 化け物と呼ぶのならば
「全く、あなたたちは何を考えて……!」
事情を知ったアリアママが俺に喧嘩を売った男たちを正座させて説教をしていた。
「大体あなた!隊を率いる隊長でありながらなぜそのような愚行に走ったのですか!?戦場で戦鬼と恐れられていても、これではただの戦闘狂です!こんなことをさせるために雇ったのではありませんよ!」
そして誰より怒られているのが、二つの大斧を振り回していた大男であった。
なんとなくそれっぽい風貌をしてたから予想してたけど、やっぱコイツらの責任者だったのかよ。
上司がめちゃくちゃだと部下が苦労するとはよく聞くけど、コイツらの場合は「ペットは飼い主に似る」だな。
「でもなんでここがわかったんだ?」
「言ったじゃにゃーか。僕の耳は凄いんにゃよって」
俺の疑問にそう言って答えてピクピク動く自らの獣耳を指差すレチア。
ヤバいどうしよう、今物凄くこの子の頭を撫でたい衝動に駆られてる。猫の耳がピクピク動くと撫でたくなるのって俺だけ?
するとゾッと悪寒が走る。
横を見るとララが据わった目で男たちを睨んでおり、彼女からピリピリと怒りが伝わってくる。
「まさか知らないところでヤタがなぶられていようとはな……消すか?」
「やめたげて?俺も途中までイジメられてるみたいな雰囲気だったけどそこまでしなくていいから。もうあの人にこってり絞られてるからそれで勘弁したげて」
手をかざして本気で言うララを止める。
それにイジメったって、あれくらいなら俺にとって許容範囲だ。アリアが冒険者をやってた時にも似たようなことあったし。
「だけど、いくら隠すのをやめたからって言ってもずいぶん大胆になったにゃ。誰よりも平穏を欲してるんじゃなかったにゃ?」
俺の横に来てレチアが意地悪な笑顔でそう言う。
「欲しいに決まってるだろ?別に戦いたいわけじゃないし。なんだったら一生養ってくれる人がいたら土下座して足を舐めるまである」
「気持ち悪っ!」
割と本気で言い放つレチア。
いや、こっちも冗談なんでそんなに強く言わないで遅れ?涙が出てきちゃうから。
そしてなぜアリアさんは近くの手頃な机に座って恍惚な笑みを浮かべながら片足の靴と靴下を脱いでるんですかね?
「舐めてくださるの?」
「あー、今のは冗談というか言葉のアヤってやつでしてね……?」
「舐めてくださらないの?」
ちょっと残念にするのやめてくださる?俺が悪いわけじゃないのに落ち込ませたみたいで罪悪感を感じちゃうから!
その後、彼女はアリアママに注意されると頬を膨らませて不貞腐れてしまった。
「むぅ……僕にもお金があったら……いや、もっと頑張れるようになれたらヤタに足を舐めさせても?」
「ふむ、今の我なら荒事にも強い。人が手が出せずにいる強い魔物を倒して素材を売る手もあるな」
「ふひっ、ヤタが足を舐める……それならわた、私もパパから教えてもらった薬でお金作れるかも、よ?」
「まぁ、そもそもあっしらは人の町に入るのが難しいので生活どころじゃないんですがね」
なんだか不穏な相談をしている女性陣。まともな発言をしたのがガカンだけというのは何なのだろうか……
「ヤタ、アシナメタイノ?イクナノアシナメル?」
意味を理解してないんだろうし自覚もしてないんだろうけど、イクナが可哀想な人を見る目でそう言ってくる。
違うから!別に俺は人の足を舐めたい人じゃないんだからね!
……今度から不用意な発言はなるべく控えよう。
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