言葉を重ねず

椎名由騎

嫌いだった父

 私はお父さんが嫌いだ



 いつも何かと怒っている姿を見ていたせいで大人と話すだけで涙が出て相手を困らせた



 私がこんな風になったのはお父さんのせいだ



 だから家を飛び出した



 それから一度も実家には帰っていない



 最初は声を聞かずにいることが至福でようやく解放されたと思った



 しかし、いつしかお父さんに似たような人を見かける度にどうしているのかと考えるようになった



 何故だろう



 辛かった日々から逃げ出したのに………



 今すぐ会いに行けと頭の中で小さな私が叫んでいた



 手遅れになるという言葉に私は背を向け続けた



 そして最期まで会うことはなかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

言葉を重ねず 椎名由騎 @shiinayosiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ