牛の鳴く頃に
瀬戸内海晴夫
序幕
序幕
【スタンフォード監獄実験】
スタンフォード監獄実験(Stanford prison experiment)とは、アメリカ合衆国のスタンフォード大学で行われた心理学的実験である。
一九七一年八月一四日から一九七一年八月二〇日まで、心理学者フィリップ・ジンバルドーの指導の下、普通の人が特殊な肩書や地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう事を証明する目的の為に行われた。
実験の舞台を監獄と設定し、ランダムに選ばれた大学生などの被験者二十一人のうち、十一人を看守役に、十人を受刑者役に分け、それぞれの役割を、実際の刑務所に近い設備を作りその中で演じさせた。囚人達には、屈辱感を与え、よりリアルに囚人役を演じてもらう為、看守たちの前で脱衣させ、また彼らの片足に常時南京錠が付いた金属製の鎖を巻き付かせた。また、トイレへ行き時は目隠しをさせ、看守役にはサングラスを着用させたりもした。
次第に看守たちは、自分達から囚人役に罰則を与え始めるようになった。反抗した主犯格は、独房へ見立てた倉庫へ監禁、その主人役のグループにはバケツへ排便するように強制させた。囚人役の一人が実験の中止を求めるが、ジンバルドーはリアリティを追求し、そのまま実験は継続された。途中、精神を錯乱させた一人の囚人役が、実験から離脱する事もあった。
実際の刑務所で働いてた牧師のカウンセリングによると、この囚人役の行動は、実際に監獄へ入れられた囚人の初期症状と全く同じだったと言う。
看守役の行為はさらにエスカレートし、素手でトイレ掃除を行わさせたりし、ついに禁止されていた暴力が開始された。
牧師は危険性を感じ、被験者達の家族に連絡、協議の末、この実験は予定よりも一週間早い、六日間で中止された。
この実験から、ジンバルドーは二つの心理学的結果を手に入れた。
一つ、強い権力を与えられた人間と、持たない人間が狭い空間に居ると、次第に理性の歯止めが効かなくなり、暴走してしまう事。
二つ、人は役割を与えられただけで、元々の性格とは関係なく、その役割を演じてしまう事。
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