17. <幕間> ライムの弟子日記、RHYME IS VERY EASY.

◇◇◇

17. <幕間> ライムの弟子日記、RHYME IS VERY EASY.



(ライムの日記より抜粋) 



私が見た、ケイジさんの強さの秘密 …やはりあれは…違う世界のものだ。


魔力自体の出所が、今の私ではわからない。


結果、引き起こされる現象も解析できない。

この国の魔法とは全く違う体系で出来上がっている。



私の知る限りの呪文構成と詠唱の術式では、呪文を全て、意思のとおりに構成するのは上級魔法師にも難しい。


精霊や天地から魔素を引き出すために伏句フックが必要で、魔力を増幅させるためには装飾の呪節も組み込むのが当然の型。

だから普通、呪文全てが術者の感情の乗る言葉にはならない。



―ケイジさんの呪文は即興性と独自性が異常に高い。


術者の情念・情動は詠唱に対して自乗効果を生む。

ケイジさんの呪文は全ての言葉を感情句にしており、伏句フックと言えるものが入っていない。


他から魔力を得るためのターンがもし不要なのであれば、その魔法の速さ、即効性は理解できる。


しかし相手の意識を刈り取るほどの威力を、全部自分の内在魔力で行っているとしたら、一級魔法師なんてものじゃない、神仏級だ。



一体あの魔力は――どこから…?



その秘密は早急に見極めておかなければならない。




もう試験本戦が始まってしまう。


このままレコードどおりに事態が進めば― 本当の大厄災が…。



ケイジさんには本当に申し訳ないことをしてしまっている。

それも三晩も続けて。


すでに私たちの、この国のことに深く巻き込んでしまっている。

それは避けられなかったのかもしれないが、「仕方ない」で済ませていいことでは決して無い。



でも本当にケイジさんに会えたのだから――必ず遂げてみせる。 



私はカッサネール家四女であり、魔法学士を目指す者。

この国を担う者。



―たとえ全てを裏切ることになろうとも。




(ライムの日記より一部抜粋)




◇◇◇


(第18話より新章開始)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る