192 塔をワンフロアずつ攻略しようとしてももう遅い。なんか勝手に最上階に連れてこられました

 どうも、リビングアーマーの俺です。


 天空塔ダンジョンを攻略中。

 途中、バラバラになってしまう事態もあったけど、今は無事合流できた。


 そして俺はなぜかモンスターを吸収し、四属性魔法を身につけた。

 その上『霊体*#&%変換』という詳細不明の謎スキルも。


 気にはなるけど、この場でじっとしているわけにもいかない。


 そもそもこのダンジョンに挑んだのは、異常事態の解決のためだ。


 ダンジョンの入り口にあるはずの『館』がなくなってしまった。

 そしてモンスターが外に溢れ出してきてたのだ。


 さらに言うと、天空塔ダンジョンの最上階にある高純度の魔鉱石。

 それに、ヴォルフォニア帝国の研究者がなにかの装置を取り付けた。

 十年前の話。

 その研究者の名前はライレンシアというらしい。


 それも気になるところだけど。

 ともかく、その装置のせいで、周囲に住むオークたちが理性を失ってしまった。


 天空塔ダンジョンを管理していた方のオークたちは困ってしまった。

 装置を取り外そうとしたのだが、さらに困ったことが起きてしまった。


 ダンジョン最上階にドラゴンが住み着いてしまったのだ。

 そのドラゴンはマグラ。

 ドグラの双子の妹である。


 つまり、俺たちがやるべきことは。


 最上階まで行き、ドグラに妹を説得して退けてもらう。

 オークをおかしくしている謎の装置を取り外す。

 可能なら、ダンジョンからのモンスター流出を止める方法を探す。


 ……ってことになる。


 そんなわけで、とりあえず最上階に辿り着かないと話にならない。


 めちゃくちゃ面倒だ。

 この塔、すごい高いし。

 エレベーターとかなさそうだし。


 でもまあ、やるしかないよな。


〈そろそろ出発しよう〉


 美味しそうな貝を食べ終わったみんなに向かって告げる。


 みんなそれぞれに頷いた。

 腹ごしらえをして、気力は充実したようだ。


 よーし、行くぞ、タワーダンジョン攻略!


 ――やっと、見つけた。


 ……ん?


〈今、誰かなんか言ったか?〉


 みんな首を横にふる。


 おかしいな。

 気のせいかな?


 ――どうぞ、ここまで来てください。


 いや、気のせいじゃないぞ!


 今度はみんなにも聴こえたようで、辺りを見回す。


 しかし、周りには俺たち以外に誰もいない。


 大体、声も妙に反響していた。

 四方八方にあるスピーカーから発してるみたいな……。


〈うわ……!〉


 な、なんだ!?

 急に床が揺れ出したぞ!


「これ、上に登ってってる」


 ロロコの言うとおり、俺たちが立っている床が上昇を始めたようだった。


 いや、床だけじゃない。

 この巨大なフロアが丸ごと、上に移動してってる。


 ……あるんじゃん、エレベーター!


◆◇◆◇◆


 やがて、俺たちを乗せた巨大エレベーターは停止した。


 そこはまさに最上階。


 周囲は、城壁とかによくある、ギザギザした形の壁がぐるりと取り巻いている。


 最上階っていうか、屋上だな、これは。


「すごい」


 ロロコがその外側を覗き込んで、感嘆の声をあげる。


「我でも、なかなかここまでは飛ばぬな」


 ドグラも吐息を漏らす。


「すっごーい! ハーレンファラスとどっちが高いかな?」


 ラファがぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。


 ちなみに、ハーレンファラスは絶海の孤島ダンジョンの巨大樹のことだ。


「な、なんで私たち、こんなところに連れてこられたんですかね……?」


 アルメルは遠くを見てはしゃぐことなく、俺の隣でビクビクしている。

 まあ、これが普通の反応だよな。


 俺も一応警戒は解いていない。


「気をつけろ、誰かいるぞ」


 反対側の隣に立つクラクラが剣を構え、言う。


 え?

 どこどこ?


 周囲を見回していると、フロアの中央あたりの床に穴が空いた。

 そしてそこから、人の乗った床が競り上がってくる。


 全体がエレベーターになっているこのフロア。

 その中央がさらに舞台のセリみたいな昇降装置になってるのか。


 ややこしい……。


 それはともかく、現れたのが、俺たちをここに呼び出したやつなんだろう。


 一体誰なんだ?


「……え!?」


 真っ先に驚いた声を上げたのはクラクラだった。


 俺も驚く。


 その顔は……。

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