187 冒険書とアルメル・Ⅲ

 どうもリビングアーマー改め冒険書の俺です。


 ……全く意味がわからないな。


 リビングアーマーならまだ人型だし。

 そういうモンスターに転生しました、で納得できるんだが。


 まあ、それはいい。


 それより。


〈ところでアルメルは何に悲鳴をあげてたんだ?〉


 そう。

 俺が動けるようになったきっかけは、アルメルが俺を落っことしたから。

 そして落っことしたのは、何かに驚いたからだ。


「あ、それはですね、ええと……そこにある巨大な石像がモンスターだと思ってびっくりして……」


 照れ臭そうに言うアルメル。


 なんだ……。

 まったく、アルメルは慌てん坊だなぁ。

 あっはっは……。


〈……その石像、どこにあるんだ?〉


「え? あそこにあるじゃ……あれ?」


 …………。


 俺はバサバサ羽ばたきながらぐるっと回って、元きた道を見る。


 石像、ないな……。


 嫌な予感がしますね。

 これは大体当たるやつだぞ……。


「リビタンさん、上!」


〈っ!〉


 アルメルの言葉にとっさに横に避ける。

 俺がさっきまでいた場所を巨大な重量物が落下していった。


 石像が着地し、石畳がめちゃくちゃにぶっ壊れる。


 うわー! うわー! うわー!


「ぎゃーーーーーーー!」


 逃げるぞ!


 走り出すアルメル。

 バサバサ羽ばたく俺。

 音もなく追いかけてくる石像。


 ……怖いよ!

 せめて石らしくガタガタ音をたててくれ!


 ――!


 石像が、無音で腕を振りかぶってきた。


 やばい、避けきれない!


〈アルメル!〉


「いやああああああ!」


 どがごおおおおおおん!


 あれ?

 石像の腕がぶつかるより先に、横の壁がぶっ壊れて、石像が埋まってしまった。


 なんだなんだ?


「なんじゃ、今度はどこに出た?」


「あ、アルメル」


 ぶっ壊れた壁の向こうから出てきたのは。


 ドグラ(彼女が壁をぶっ壊したらしい)と俺の両腕パーツ。

 ロロコと俺の兜。


 そして火吹き鳥。


 ――ふごおおおお!


 だから最後のはいらないっての!

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