185 冒険書とアルメル・Ⅰ

 どうも、リビングアーマーの俺です。


 リビングアーマー……?

 それにしちゃ、なんか変だな。


 こんなパーツ、鎧にあったか?


 どうもおかしい。

 自由に動くこともできないし。

 いや、鎧が動けるほうが本来はおかしいんだけどさ。


 しかも声も出せない。

 おかげでさっきから、俺を抱えているアルメルに話しかけることができない。


「もー……みんなどこ行っちゃったんですか? わたし、戦闘要員じゃないんですから、一人にしないで欲しいんですけど……」


 そんなことをブツブツ言いながら、ドワーフ嬢は歩いている。


 あたりは真っ暗闇だ。

 それが、本当に暗いせいで見えてないのかはわからない。

 俺の視界が確保できていないせいかもしれないからだ。


 声が聞こえるわけだから、五感が失われたわけではないと思う。

 抱えているアルメルの感触もあるし。


 しかし……。

 アルメルは抱えているものが俺だと気づいていないのか?


 気づいてたら、自分一人だとは思わないだろうしな。


 それだけ鎧っぽくないパーツってことか。

 そんなパーツあったかな……?


 考えてみたが思い当たらない。


 バラバラになった他のパーツを探ってみるが、感知できなかった。

 このダンジョンの妨害機能でも働いているのかもしれない。


 もし感知できたら、消去法でこれがどのパーツかわかると思ったんだけどな。


 まったく、不便極まりない。

 まるで、転生して最初の、バラバラの鎧の状態に戻っちゃったみたいな気分だ。


「ぎゃーーーーーーー!!!!」


 わ!

 な、なんだ!?


〈いてっ!〉


 アルメルの悲鳴に続いて、身体全体に衝撃が走った。


 なにに驚いたか知らないけど、いきなり落とさないでほしい。


 ん?

 いま俺……。


「冒険書がしゃべった!?」


 そう、しゃべれた!

 

〈あ、あー、あー、あー〉


 おお、声が出る!


 ラッキー。


 え?

 冒険書?

 ってどういうこと?


 まさか……。


 と、思ったとたん、俺は、今の俺の状態を認識できるようになった。


 …………。


 俺……。


 冒険書になってるーーーーー!?

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