180 両脚とクラクラ・Ⅱ

 どうも、リビングアーマーの俺(脚パーツだけ)です。

 俺を履いているのはエルフのクラクラ。


 一緒に街の見た目をしたダンジョンの宙高く浮き上がったところ。


 周囲を囲う城壁の向こう側がどうなってるのか見ようと思ったんだけど……。

 その城壁が、


 ぐいーーーーーーーーーん!


 と背伸びをするみたいに伸びてしまった。


〈どうなってるんだ、これ?〉


 ここは天空塔ダンジョンの中だ。

 塔自体はたしかにめちゃくちゃ高かったけど、それでも建物の中。

 1フロアの天井の高さには限界があるはずじゃないのか?


「どうも空間魔法が使われているようだな」


 空間魔法か。

 たしかアルメルも言ってたな。

 このダンジョン自体、フロア同士を入れ替えるのにその魔法が使われてるらしい。


 しかし、どこまで行っても果てがない、っていうこれは入れ替えとは質が違う。

 そんな感じがするんだけど……。


「いや、根本的には同じものだ。空間魔法は、空気中の離れた場所に存在する魔力同士を干渉させることで、空間を歪めるという魔法だ。魔力同士を結びつければ、離れた場所を繋ぐことができるし、魔力同士を反発させれば、その間の空間を引き伸ばすことができる」


 前者がフロアの入れ替え、後者がこのどこまでも続く街と壁ってわけか。


〈しかし万能過ぎないか、その魔法?〉


「ああ。誰にでも扱えるものではない。そもそも現代の魔法使いで扱えるものはいないと思うぞ」


 そうなんだ……。

 まあこの塔は大昔、魔王の魔力で生み出されたとかって話だしな。

 魔王ならそれくらいのことできてもおかしくないのかもな。


 ……と、そんな知識が増えたところで、現状をどうするかって話だが。


「アルメル殿の話では、フロアごとにモンスターがいて、それを倒すことで次のフロアに行けるのではなかったか?」


〈そういう話だったが……〉


 しかし今このダンジョンの魔法の術式だかが壊れてるんだろ?

 ってことは、その攻略システムもうまく作動してないのかもしれない。


 さっきからモンスターがまったく現れないのがその証拠……。


「いや……リビタン殿。あれを」


 とクラクラが眼下の街の一角を指差す。


 べつになにもいないように思うけど……いや。


 教会みたいな建物の左右にある塔の最上部。

 あそこに大砲なんてあったか?

 さっきまで鐘じゃなかったか?


 よく見ると、街のあちこちに大砲が設置されている。

 絶対さっきまでこんな武装都市みたいな見た目じゃなかったぞ!


〈これは、まさか……〉


「ああ、ひょっとすると……」


 俺たちの意見が一致したところで、


 ――どぉおおおん!


 大砲発射!

 やっぱりかよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る