175 兜とロロコ・Ⅲ

 どうも、リビングアーマーの俺です。

 こっちは人犬族のロロコ。

 それと巨大な火吹き鳥。

 その炎攻撃を防いでくれた謎の壁。


 え、なにこれ?

 俺が出したの?


 しかしタイミング的にはそうとしか思えない。

 ロロコを助けるために壁を出したい! と思ったら出てきたんだもん。


「リビたん、魔法使えたの?」


〈魔法? え、これが?〉


「土属性の魔法。ちがうの?」


 どうなんでしょうか?

 わからん。


 しかし土属性魔法と言われるとたしかにそんな感じがするな。

 壁は床から生え出ていた。


 床っていうか地面だな。

 塔の中なのに周りはサバンナみたいな景色。

 足元も普通の土だ。


 その土が盛り上がって壁になったのだ。


「リビたん」


 ん?

 どうした?


 ――ふごおおおお!


 うわ!

 てめ、鳴き声出さなくても火吹けるのかよ!

 さっきのリズムはなんだったんだよ。


 火吹き鳥はちょっと位置を変えて、壁を避けるように炎を吹いてきた。


 ヤバいヤバいヤバい!

 壁壁壁壁壁壁壁壁!


 壁よ出ろ……!


 ――どーーーーーーん!


 やった、また出た!

 しかもさっきより大きくて分厚い。

 炎をあっさり防いでくれた。


〈よし、逃げるぞロロコ〉


「りょうかい」


 俺たちは一目散にその場から離れる。


 兜だけの俺はフヨフヨ宙を飛びながら、後ろ側にも視界を追加。

 前方を見ながら、同時に追いかけてくる火吹き鳥の様子もわかるようにする。


 ――ふごおおおお!


 とやつが火を吹いたらとっさに、


 壁壁壁壁壁壁!

 ――どーーーーーーん!


 壁を発生させて火を防ぐ。


 ――ふごおおおお!

 壁壁壁壁!

 ――どーーーーーーん!


 ――ふごおおおお!

 壁!

 ――どーーーーーーん!


 いいぞ。

 だんだん簡単に壁を出せるようになってきた。


 そしてわかってきた。


 この土魔法は、鎧に刻まれた術式とさっきの苔モンスターが反応して発生してる。


 たぶん、苔が兜のどっかにちょっとだけ残ってるんだ。

 それが、さっきのフロアを出たので増殖を止めた。

 あと、ドグラみたいにこの鎧自体が苔の力を抑えているのかもしれない。


 とにかくその苔の力が術式で変化して、土魔法発生装置みたくなってるんだ。

 ……たぶん。


 実際のところどうなのかはわからないけど。

 とにかく助かるんならなんでもいい。


「出口」


 ロロコが指差す先を見ると、たしかに扉があった。

 さっきとは反対方向のはずなので、その先は別のフロアのはずだ。


〈よし、飛び込め!〉


 火吹き鳥の最後の攻撃も壁で防ぎきって、俺たちはこのフロアを脱出した。

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