121 いいもわるいもリモコンしだい

 どうも、リビングアーマーの俺です。


「こっちも塞がってました」

「こっちもだ」

「そうか……」


 手分けして出られる通路を探してくれていたリザルドさんたち冒険者部隊。

 しかし、全部のルートを確認し終えてしまったみたいだ。


 結論。

 俺たちがいる場所は完全に孤立してしまった。


 原因は、沖の方にいるあのゴーレム。

 あいつがゴーレムパーツを漁ってダンジョンを破壊したせいだ。


 しかし、そのゴーレムが脱出の鍵となるかもしれない。


 俺はリザルドさんに話しかけた。


〈あの、脱出する方法があるかもしれません〉


「なんだと?」


〈俺があのゴーレムを操ってみます〉


「……は?」


 リザルドさんたちは顔を見合わせると、ドッと笑い出した。


「いやいやいや、無理するな。こんな状況でジョークの一つも言いたくなるのはわかるけどよ」


〈いや、ジョークじゃなくてですね〉


「心配すんな。俺たちの仲間が捜索してくれてるはずだ。必ず助けはくる」


 そう言って俺の腕をガインガインと叩くリザルドさん。

 なんか慰められてしまった……。


 まあ、彼らにしてみれば俺たちなんかひよっこだもんな。

 そんな扱いになるのも頷ける。


 まあいいか。

 実際、うまくいくかどうかわからないしな。


 俺は改めてゴーレムを見る。


 落ち着いたアルメルが説明することには、だ。


『霊体操作のスキルがアップしたので、リビタンさんの操作能力がゴーレムの能力を上回ったのかもしれません』


 とのこと。


 それは逆に考えれば、俺があのゴーレムを操っちゃえるってことだ。


 あくまで可能性だけど。

 試してみて損はないだろう。


 というわけで、いくぞ!


 ――ぐぬぬぬぬぬぬ……!


 意識を飛ばす感じで念を送ってみる。

 分離したパーツを操ったときと同じノリだ。


 ただ、ちょっと距離があるので難しい感じ。


 ……ん?

 なんか声が聞こえた気がする。


『操作操作操操作信号を受信受信受信信』


 お、これは。

 ひょっとしていける?


 俺は続けて、右手を上げる念を送る。


 右手だぞ。

 右手右手右手右手右手……


 ざばー。


 やった!

 ゴーレムの右手が水面から持ち上がった!


 よし次は左手だ。

 左手左手左手左手左手……


 ざばー。


 おお!

 いけるいける!


 よーし、じゃあそのままこっちに来てくれ。


 ざばーざばーざばーざばー。


 ゴーレムが水面をかき分けかき分け、こっちへ歩いてきた。


「げ、リザルドさん。ゴーレムのやろう、こっちに来ますよ」


「マズいな。おい……って、まさか」


 俺がゴーレムをまっすぐに見つめているのを見て気づいたらしい。

 リザルドさんは驚いた声で呟いた。


 俺は頷くと答えた。


「はい。ゴーレムは今俺の言うことをきいてます。あれで〈ドラゴンの巣〉に渡りましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る