116 ゴーレムパーツ食べ放題会場

〈おーら、こっちだこっちだ!〉


 俺は両腕を振ってゴーレム団子を呼び寄せる。


 ――ギュイギュイギュイギュイギュイ!


 ゴーレム団子が高速回転しながら近づいてくる。


「こっちだよー!」


 次はラファが左腕を振る。


 ――ギュイギュイギュイギュイギュイ!


 ゴーレム団子は今度はそっちへ向かう。


「よし、押し出すぞ! せーの……」



「「「「「「ファイアー!」」」」」」



 冒険者の皆さんで魔法を使えるメンツとロロコが炎魔法を放つ。


 その勢いでゴーレム団子の進路が変わる。


 岩のくぼみに引っ掛かったゴーレム団子はそこで少し止まる。


 その間に俺とラファは移動して、ゴーレム団子をおびき寄せやすい位置に向かう。


「こっちは安全です!」


 アルメルは進路の先にモンスターがいないか確認する役だ。


 ……うん。

 なんとかなりそうだな。


 俺たちは協力してゴーレム団子を誘導していた。

 目指すは、大量のゴーレムパーツが眠る場所。


 そもそもリザルドさんたち冒険者部隊は、ゴーレムパーツの発掘をしにきた。

 なので、このダンジョンのどのあたりにゴーレムパーツがあるか知ってるってわけだ。


「逸れたほかのメンバーもとりあえずはそこを目指してるだろうしな。仲間と合流するためにも、俺らはそこを目指したい」


 とのことだ。


 ちなみに、一番ゴーレムパーツが多いのは、海の先にある孤島エリアだそうだ。

 今向かってるのはその少し手前。


 ま、どこでもいいよ。

 ゴーレム団子の脅威から逃れられるのならね!


 ――ギュイギュイギュイギュイギュイ!


 ゴーレム団子は相変わらずすごい回転だ。

 くぼみの岩をあっという間に削って自由に動けるようになる。


〈こっちだこっちだ!〉


 ふたたび俺が誘導。


「こっちだよぉ!」


 ラファが誘導。


「「「「「「ファイアー!」」」」」」


 炎魔法で押し出し。


 その繰り返しだ。


 すんごい地道な作業。

 ゲームの攻略法だったらうんざりするパターンのやつだ。


 けど、現実の作業の場合気を抜けないのが辛い。

 ミスればどこかで人が死ぬかもしれないんだからな。


 俺たちは気を張り続けながら単純作業を繰り返す。


 けど、やがて終わりがきた。


「ついたぞ! ここだ!」


 冒険者の誰かが声をあげた。


 俺とラファが誘導して、ゴーレム団子を広い空間に導く。


『同期信号を確認。信信号信号信号号信信多数多数多数数多多数』


 ゴーレム団子が俺たちを追いかけるのをやめた。

 その場に止まって、地面にゴンゴン体当たりを始める。


 ――ギュイギュイギュイギュイギュイ!


 すごい勢いで岩を削っていく。


 リザルドさんが言ってくる。


「ここは地下に大量のゴーレムパーツがある。それを掘り起こしてる間、しばらくは移動しなくなるだろう」


 やった。

 これでゴーレム団子との追いかけっこは終わりだ。

 あとはせいぜい、お腹一杯になるまでパーツを食い続けてくれ。


「よし、移動しよう」

〈はい〉


 俺たちはゴーレム団子を置いてダンジョンを進むことにした。

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