22 決着! 巨大コウモリ集団!

 ――キシャアァア!

〈のわー!〉

 ――ギャアォオォ!

〈ぬわー!〉


 また巨大コウモリから逃げ回ってます、リビングアーマーの俺です。

 犬耳っ娘のロロコも走り回ってる。


 俺は疲れないからいいけど、ロロコはきつそう。

 息は上がってないけど、ちょっと動きが鈍くなってるよな?


 しかも、追ってくるコウモリたちの数が増えてきてる。

 それに、デカいのが多くなってきたな。


 さっきまでは幼いやつが狩りの訓練で俺たちを狙ってたらしい。

 ここからは、歴戦の勇士が本気モードってわけだ。

 こっちサイドも熟練の冒険者とかいていいのよ!


 ……いないので、俺とロロコでなんとかするしかない。


 と言っても、特になんの策も思いつかねえ。


 コウモリは、本体は魔法に弱いが、魔法抵抗力の高い羽で身を守れる。

 その羽は物理攻撃には弱いが、こっちにはやつらに届く武器がない。

 羽をどうにかできれば、ロロコの魔法でやつらを倒せるんだが……。


 あの羽は厄介だ。

 そこらじゅうに長い爪がついてるから、素手じゃ絶対攻撃が届かない。


 せめて俺が普段の身長に戻れればなーと思ったんだけど。

 さっき手に入れた鱗状鎧は役に立たなかった。

 鱗同士をつなぐ針金が壊れてて、強度がなくなってるのだ。

 なんか、今にもバラバラになりそう。


 ――バラバラー!


 わー!

 言ってるそばから!


 鱗状鎧が壊れて、小さい板みたいなパーツが地面に散らばった。


 ひ、拾わなきゃ!

 一回身体に載せたせいで、あれも俺の身体の一部った扱いになってしまってるのだ。


 ――ギシャアア!

〈うわああああ!〉


 だ、ダメだ。

 コウモリたちが群がってきて、後戻りできない。

 ああ、さようなら、元俺の胴パーツ……。

 短い間だったけど、お世話になって――ないな。


 なんの役にも立たなかったな……。


〈ん?〉

「どうした、の」


 聞いてくるロロコの声はちょっと息が弾んでいる。

 苦しそうだ。

 早くなんとかしてやりたい。


〈なんか……あの鱗鎧、動かせるような……〉


 鎧の、壊れてしまった一枚一枚の鱗。

 平べったい金属の板だ。

 形は、ビート板にちょっと似てる。

 それを、ふわりと浮かせて……。


 ……移動させられるぞ。


 前に、バラバラになってしまった下半身のパーツを、集めたことがある。

 あのときと同じ要領。

 霊体操作のスキルだ。


〈これって……〉


 ひょっとして……なんとかなるかも。


「……なにしてる?」

〈えっとね――〉


 内緒の相談をする。

 ごにょごにょごにょごにょ……。


「――うん」


 俺の考えを聞いたロロコは、小さく頷いた。


「いけるかも」


 よし!

 どうせ、他に手は思いつかないんだ。

 やってみる価値はある。


 俺たちはコウモリの様子を見つつバラバラに移動。


 コウモリたちは、俺とロロコそれぞれを追うためバラける。

 その分、攻撃の手が弱まった。


 その隙に俺は、針金をちぎって、鱗状鎧の残りをバラバラにしていく。

 バラバラになった板は、適度に地面にバラまいていく。


 ……よしよし。


 板一枚一枚が俺の身体の一部だ。

 しっかり意識していれば、それらがどこにあるのか、ちゃんとわかる。

 宙に浮かし、動かすこともできる。


 だいたいバラまき終えたたころで、ロロコの様子を確認。


 おいおい!

 いつの間にかコウモリたちに取り囲まれてるぞ!

 まだ逃げれてはいるけど、だんだん包囲が狭まっていってる。


 ――って、俺のほうもそうじゃん!


 くそ、いつの間に。

 生粋のハンターだなこいつら。


 けど、いいさ。

 お前らは俺たちを追いつめたと思ってるかもしれないけど。

 本当は逆だってことを教えてやる。


〈いくぞ、ロロコ!〉

「いつでも」


 おりゃーーーー!


 ――ふわっ。


 鱗状鎧の材料である金属板が浮かび上がる。


 ぬおーーーーーー!


 ――ギュルギュルギュルギュル。


 何百枚ものその板たちを、回転させる。

 フリスビーみたいな感じ。

 そういや前に、ダンゴムシールドでも同じことやったな。

 あれは手で投げたけど。


 ふおーーーーーーーーーーー!


 回転する板は、一斉に針の山から飛び出す。


 ――ギュオオオオオオ!?

 ――ギアアアアアアアアア!?

 ――グオオオオオオオオオオオ!?


 コウモリどもが異変に気付いた。

 けど、もう遅いぜ。


 俺の身体の一部である金属板は宙を飛び回り、高速回転してコウモリに襲いかかる。

 狙うは魔法攻撃に邪魔な羽だ。

 布みたいに薄い羽は、金属板によって簡単に斬り裂かれていった。


 ふっふっふ。

 金属板はそこらじゅうにバラまいた。

 ロココを取り囲んでたやつらも、一網打尽だぜ!


〈ロロコ!〉



「ファイア・アロー!」



 ――ビヒュン!


 ロココの放った魔法は炎の矢だった。

 ファイアやフレイムよりは威力が弱そうだが、そのぶん数が多い。


 大量に放たれた矢が、コウモリたちの胴に突き刺さる。


 ――ギヤオオオオオオオオオン!


 悲鳴をあげながら、コウモリたちがどんどん墜落していく。

 中にはガラスの針に突き刺さってしまうやつもいた。


 やったぜ!


 俺たちを襲っていたやつはだいたい一掃できた。


〈ロロコ、この隙に逃げよう!〉

「わかった」


 俺たちはガラスの針の隙間を通って、とにかく遠くへ移動した。

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