12 必殺! ダンゴムシールド・プレス!

〈ぎゃあああああああああ!〉


 ガシャンガシャンガシャンガシャン!


 俺は洞窟で、巨大カマキリの群れから逃げ回っていた。

 カマキリは全部で五匹。

 前に遭遇したやつとほぼ同じサイズだが、一匹だけ、妙にでかいやつがいる。

 ボスカマキリとかかな?


 ――シャアアアアアアアアア。


 とカマキリたちは不快な音を発しながら俺を追ってくる。

 なんで俺なんか追いかけるの!?


 ここにこいつらがいるのはわかる。

 巨大ダンゴムシの装甲があったからね。

 あいつがいるってことは、その死骸を食うクモさんたちもいる。

 そのクモを食うカマキリもいるってことだ。


 でも、その食物連鎖に、リビング・アーマーは含まれてなくない!?

 なんでカマキリは鎧なんか追かけるんだ。


 自分たちの餌場を荒らされたとか思ってるのか?

 だとしたら、テリトリーを外れれば追ってこなくなるはず。


 そう思ってひたすらまっすぐ走ってるんだけど、カマキリたちは飽きずに追ってくる。

 ときどき、鎌を振るってきたりもする。

 俺の胴体、あの一撃でぶっ壊れちゃったからね。

 当てられるわけにはいかない。

 これ以上ちっこくなってたまるか!


〈うげ〉


 ばしゃん!

 と俺の足が水に触れた。

 洞窟の奥に見えてた池みたいなところまで来てしまったらしい。


 見れば、池はけっこうな広さがあるようだった。

 池っていうか、地底湖?

 なんかちょっと幻想的。


 なんて浸ってる場合じゃない!

 俺は即座に右向け右して湖ぎわを走り出す。

 カマキリたちはまだ追ってくるのだ。


 ひょっとして、水に入ったら追ってこないんじゃないかとは思ったんだけどね。

 俺、鎧じゃん?

 金属じゃん?

 沈むじゃん?

 この湖、どのくらい深いかわからんし。

 浮かんでこれなかったら嫌だ。


〈――おわ!?〉


 ストップストップ!

 いきなり地面がなくなってる。

 湖がカーブして、行き止まりになってた。

 湖面ははるか下。

 え、うそ。


 俺は振り返る。

 迫るカマキリたち。

 なんか、サスペンスドラマで崖に追いつめられた犯人みたいになってる!

 やばいやばい。

 どうするんだよこれ。


 一か八か湖に飛び込む?

 いや、でもなぁ……。


 ――ブォン!


 うぉ!

 ちょっと!

 いま考えてるとこだから!

 攻撃とかやめてよ!


 しかし相手は待ってくれない。

 ボスらしい一番でかいカマキリが、めちゃくちゃでかい鎌をかまえて迫る。

 うわー。

 刃だけで5メートルはありそう。

 それが二本。

 あんなんでやられたら、もうバラッバラだろう。

 くそ、どう避ける?

 右か? 左か?


 ――ヒュ!


 突き!?

 ちょ、フェイントやめてくださいよ!

 カマキリが鎌で突きとか聞いたことねえよ!


 ――がいいん!


 お?

 とっさに左腕を持ち上げたら、鎌を受け止めれた。

 なんで?


 あ!

 ダンゴムシールド!

 肘パーツに取り付けた、巨大ダンゴムシの装甲が守ってくれたのだ。

 いけるじゃんこれ!


 カマキリは自分の攻撃を受け止められたのが不可解そう。

 半歩さがって、構え直す。

 そして今度は左斜め受けから鎌を振り下ろしてくる。


〈ぐっ!〉

 がいん!


 また受け止めれた。

 ふーははははははは!

 どうだ鎌やろう!

 お前の攻撃はもはや俺には効かぬ――ぬぅお!?


 右側から水平に鎌が振られた。

 やばい。

 そっちにはダンゴムシールドがない。

 くそっ。


〈ふおおおおおおお!〉


 俺はとっさに鎌攻撃をかわした。

 上半身だけを浮かせることで。

 下半身は地面に立ったままだ。

 鎌は空振り。

 俺の身体の間を素通りする――。


 ――そうだ!

 俺はとっさに、浮かせた上半身を、すぐに勢いよく落下させる。

 通り過ぎようとしていた鎌は、俺の身体同士の激突に挟まれる。


 ――がしゃあああああん!


 とガラスが割れるような音がした。


 ――シャアアアアアアア!?


 カマキリはギョッとした様子で一気に身を後退させた。

 その鎌の片方は、見事に粉砕され、折れていた。


 ふっふっふ。

 そう。

 俺の上半身と下半身は、安定のためにダンゴムシの装甲をつけていた。

 間にものがあるときにくっつこうとすれば、その装甲同士で挟み込むことになる。

 ダンゴムシの装甲はかたいからな。

 それだけで、充分な攻撃力になる。


 名づけて、ダンゴムシールド・プレス!

 どうだ!

 ダサいか!?

 ダサくてもいいさ!

 効果はあったんだからな。


 カマキリたちはめっちゃ警戒してる。

 俺が一歩近づくと、二歩後退する。

 二歩近づくと、四歩後退した。


 くくく。

 俺が怖いか?

 怖かったら、さっさと退散していいのよ?


 ――シャアアアアアアア!

 ――キシャアアアアアアアアア!

 ――ギジャアアアアアアアア!!!!


 え、ちょ、なんで!?


 カマキリたちは、五匹いっせいに飛びかかってきた。

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