11 盾をゲットだぜ!

 どうも、転生したら鎧になってた俺です。

 胴パーツがぶっ壊れたせいで、いまはSDキャラみたいなシルエットになってます。


 いや、これはひどい!

 すげえ歩きづらい!


 上半身が安定しないのだ。

 本来あるパーツを省いてるんだから当たり前か。

 仕方ないので、上半身をちょっとだけ浮かせたりしてバランスをとってる。

 天上から糸で吊って人形を操ってるみたいな感覚だ。


 で、いま俺は洞窟の広い空間を歩き回っていた。

 もと来た道を確認しておきたいんだけど、見つからない。

 よっぽど勢いよく転がってきたんだな……。


 あ、冒険書と、コインが入った布袋は無事見つかった。

 今度は、なくさないように、首まわりパーツの余ってるベルトに縛りつけておいた。

 使うときに不便だけど、なくすよりはマシだろう。

 冒険書も、敵と戦ってるときに見るわけじゃないしね。


 あ、そうそう。

 いつの間にかレベルがまた上がってた。

 こんな感じだ。


『リビングアーマー LV.3 名前:なし

 HP:398/443(436/543)

 MP:260/325(264/331)

 物理攻撃力:65(57)

 物理防御力:75(63)

 魔法攻撃力:3(3)

 魔法抵抗力:1(1)

 スキル:霊体感覚、霊体操作

 称号:駆け出し冒険者

 称号特典:なし』


 総HPと総MPが減ってるのは、胴パーツがなくなったせいかな。

 前は手甲とかが欠けた分、現在HPのほうが減ってたけど。

 今回は、これが通常状態とみなされちゃったというわけか……。

 いや、俺もいつまでもこんな格好でいたくはないんですけど。


 物理攻撃力と物理防御力はちょっと上昇したな。


 魔法攻撃力と魔法抵抗力はまったく変化なし。

 俺ってば、魔法の才能はあきらめたほうがいいのだろうか。


 スキルに霊体操作ってのが増えた。

 たぶん、バラバラになったパーツを集めるみたいなやつのことだと思う。

 普通の人間の動きとは違う動きを鎧にさせられる感じな。


 霊体感覚は霊体が感覚を持つこと。

 霊体操作は霊体が操作すること。

 そんなイメージ。


 で、だ。

 そもそも、なんでレベルが上がったん?


 という疑問は、モンスター図鑑のページを見るとわかった。

 新しいモンスターが追加されてたのだ。


『ベイビー・アラクニド

 平均HP:46

 平均MP:24

 平均物理攻撃力:12

 平均物理防御力:32

 平均魔法攻撃力:15

 平均魔法抵抗力:12

 解説:アラクニド種の幼体。主に洞窟に生息。集団でモンスターの死体などに群がり食料を得る。』


 これ、あのクモさんたちのことだろう。

 俺をここまで運んできやがった大カマキリが、鎌で何匹かぶっ倒していた。

 それが俺の経験値ってことになって、レベルアップにつながったんだろう。


 巨大ダンゴムシのときといい、経験値が入るシステムも謎だよな。

 ここまで俺、まだ一度も自分の手でモンスターを倒してないんだぜ。


 ……自分で言っててむなしくなるな。

 あと、魔法力のふたつ、俺はあのチビグモたちより低いのな。


 そんなこんなで歩いていると。


〈ん?〉


 なんか落ちてる?


 黒い、四角くて平たい鉄板みたいな……。


 これ、巨大ダンゴムシの装甲だ!

 頭近くに、こんな形のパーツがあったはず。


 見ると、そこらに、他の装甲もちらほら落ちている。

 で、その中身は綺麗さっぱりなくなっていた。


 これ、例のクモさんたちに食われてた死体かな?

 にしては距離が離れすぎてるか。

 別の個体が死んで、食われたあとかもしれないな。


〈…………〉


 そ~。

 っと、俺は装甲板を拾ってみる。

 ……なにも起こらないし、襲ってくるモンスターもいないな。

 板の裏にクモさんがびっしり!

 なんて気持ち悪いこともないみたいだった。


 よし!

 俺は手頃なサイズの板を探して、何枚か確保する。

 なにをしてるかっていうと、前に言ってたダンゴムシ装甲による補強だ。


 できれば、胴パーツを作りたいところだけど、そんな加工技術は俺にはない。

 なので、左の肘パーツの出っ張りにはめ込んで、盾みたいにしてみた。

 名付けて、ダンゴムシールド!

 うわ、だせえ!


 よし、じゃあ、こんなのはどうだ!

 装甲を横にして首回りパーツの下と、腰パーツの上にそれぞれベルトで固定。

 ダンゴムシの装甲同士、似た曲線のパーツが重なるので、上半身が安定した。

 お、これはけっこう良さげだな。

 ただ、高速で移動しようとすると、上半身がずれてしまうな。

 だるま落としみたいになりそう。


 うーん、まだけっこう余ってるな。

 ほかになんかいい使い道はないかな?


 ツンツン。


 ん?

 なんすか。

 いまいいところなんで、邪魔しないでくださいよ。


 ツンツンツンツン。


 いや、しつこいな。

 いったいだれ――だれ!?


 俺は振り向いた。


 そこには、巨大カマキリの群れがいた。

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