5 恐怖! ダンゴムシの襲来!

 ダンジョンで発見した白骨死体が所持していたらしい謎の本。

 この本のおかげで、ついに俺のステータスが明らかになった!

 ばばん!


『リビングアーマー LV.1 名前:なし

 HP:165/223

 MP:12/12

 物理攻撃力:23

 物理防御力:34

 魔法攻撃力:2

 魔法抵抗力:1

 スキル:霊体感覚

 称号:なし』


 ……よわっ!

 ねえ、俺、弱くね!?


 レベル1だし、称号はないし。

 うわー、これはテンション下がるわー。


 ……いや、まあ、わかってましたけどね。

 だってネズミの体当たりで穴あくし。

 木の扉殴っただけで腕壊れるし。


 俺は弱い!


 認めるしかありませよねー。

 まあいいさ。

 元の世界にいたときだってフツーの人間だったんだ。

 転生したら強くなってるとか、そんなうまい話はそうそうないだろう。


 え? よけい弱くなったんじゃないかって?

 あーあー気にしーなーいー!


 ……さて。

 せっかく判明したステータス、ひとつひとつ確認してみましょうかね。


 最初の『リビングアーマー』ってのは、種族名みたいなもんだろう。

 レベルは1。まあ、転生したばっかだしな。

 大ネズミは何匹かぶん投げたけど、あれは倒したうちに入らなさそうだし。


 気になるのは名前。なしって……。

 転生したら、元の世界の名前は受け継がれないってことなのかね。


 HPはヒットポイントかヘルスポイント。

 MPはマジックポイント。

 そう素直に受け取っていいと思う。

 HPが満タンじゃないのはなんだろな。

 さっきまで歩いてたからか、パーツがちゃんとそろってないからか。


 あ、そういえば俺、この姿になってからお腹空いていない。

 リビングアーマーだから?

 ここまで食料手にはいる余地とかまったくなかったし、助かったけど。


 物理攻撃力と物理防御力、魔法攻撃力と魔法抵抗力もそのままの意味だろう。

 問題は、物理のふたつの数値に比べて、魔法のふたつの数値がスッゲー低いこと。

 一桁って……。

 それぞれ1がどのくらいの程度なのかは不明だけどさ。

 魔法の能力的なものがほぼないってのが明らかだ。

 そういやMPも12って、これもきっと少ないんだろうな……。


 ……次行こう、次!

 スキルの『霊体感覚』だ。


 なんだろう。

 よくわからないな。

 霊体の? 感覚?

 本来、霊体には感覚がないけど、このスキルを持ってる俺は特別にあるってこと?

 それつまり、俺は霊体だってこと?


 考えてみると、たしかに、この鎧が自分って感じはあまりしないかもしれない。

 穴空いても痛くないし。

 別の鎧の手甲を取り付けても動かせるし。


 そもそもリビングアーマーっていう存在は『動く鎧』じゃないのかもしれない。

 霊体が鎧に取り付いて動かしている――それがリビングアーマーとか。

 ま、推測だけどね。


 で、称号はなし、と。

 称号はどうやったら手に入るんだろう。

 手に入れたら、称号ボーナスみたいのでステータスやスキルが増えたりするのか?

 っていうか、レベルアップするには、普通にモンスターを倒したりすればいいの?


〈うーん……〉


 俺は謎の本をパラパラめくって他になにか書いてないか探す。

 が、なにも見つからない。

 むぅ、不親切な本だな。

 まあ、この本を持っている冒険者なら、今みたいなことは常識なんだろう。


 さて、そろそろ出発しようかな。

 あまり白骨死体さんと一緒にいるのもあれだし。

 

 ……待てよ。


 自分の身体を見下ろしてみる。

 この鎧は、盗賊に骨董品と言われちゃうくらい古いものだ。

 穴が空いて壊れたりもしてる。


 ところでここに、それよりは新しい感じの鎧がある。

 ……まあ、白骨死体が着てる鎧のことですけど。


 もし、俺の本体が霊体で、鎧自体は取り替えても問題ないとすれば。

 ここで交換してくってのはアリ?


 気になるのは、そんなことをして、俺の身体は本当に大丈夫かということ。

 それと、単純に死体怖い!


 ま、まあ、すでに手甲を片方もらってるし、いまさらか……。


 それじゃちょっと、失礼しますよ――?


 ――どごがあああああああん!


 ぎゃー!!?

 な、なに?


 めちゃくちゃびっくりした。

 俺はとっさに背後を振り返る。


 洞窟の通路と、いま俺がいる小部屋みたいな空間。

 そこをつなぐ穴。

 それを数倍に広げてしまうほど、壁をぶち壊して、巨大ななにかが出現していた。


〈な、ななな……〉


 驚きすぎて動けない俺の前で、それは、モゾリと動いた。

 丸い巨体が開いて、その本来の姿を現わす。


 それは自動車くらいのサイズはある――


 ――巨大なダンゴムシだった。

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