龍王奇譚 第三章 火炎破邪
10月猫っこ
序
遙か昔。
幾百、幾千もの年月の時間の彼方。
この六道世界で、二つの世界を中心に大きな戦が起こった。
一つは、天界と呼ばれる世界。
天帝帝釈天が治める、六道世界の中でも善神と呼ばれる神々が住まう世界。
もう一つは、修羅界と呼ばれた世界。
戦いの世界として認識されてはいるが、統治者であった
二つの世界は闘いが起こるまで、互いの世界に干渉することなどは一切無く、平和とさえ言える時間が流れていた。
だが、それは呆気ないほど簡単に崩れ去ってしまった。
争いの切っ掛けは、三千大世界を揺るがす事象が起きたことにある。
それは、天界が、修羅界が、共に自分達の考えを貫き通すには、余りにも十分すぎる事柄といって良かっただろう。
二つの世界の戦いは、永き時間を渡り熾烈を極めた。
多くの血が流れ、数多の生命が散り……。
そして大戦の終結は、天界の勝利により幕を下ろした。
幾多の屍をその大地にさらし、草木一つはえぬ荒涼とした大地へと変貌した修羅界は、誰一人として顧みられる事のない世界へと変貌してしまった。
全てを失い、世界としても滅亡した修羅界。
けれど、そこに住んでいた者達は、たった一つの希望を持ちながら死んでいったのだ。
それは、天界の者達に知られる事のない希望。
託された者達は、その願いに応えるよう人の世で産声を上げた。それは、滅びから何百年という時間の後のことではあったが……。
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