雨森照子のいる世界

雨世界

1 12月24日 夕方

 雨森照子のいる世界

 

 プロローグ


 二人。……ドームの中に、二人っきり。(大きなレンズのような透明なドーム。そして、まるで天国のような二人のいる世界。二人だけの居場所。逃げた先で、たどり着いた、大切な居場所だ)


 本編


 12月24日 夕方


 空は厚い雲に覆われている。予報では雪が降るようだ。(こんなどんよりとした暗い空を眺めていると)なぜ自分はこんなことをしているのか?  よくわからなくなってくる。荷物から地図を取り出し確認する。目的地までもう少しだ。肌寒い風が吹き抜ける。舗装もされていない道。木々と澄み切った空気。まあ、いいところかな。うん、悪くはない。これから会うことになる友達はこんな世界の中で暮らしているのか、少し意外だ。いや、そもそも環境なんて気にしないのかも? 仕事ができればどこだっていい。遥はきっと森にも空にも興味はないだろう。そして私にも。だからこうして追いかけているんだ。出会うことは偶然かもしれない。でも別れは偶然ではない。かってにいなくなるなんて許せない。夏は背伸びをしてから思いっきり深呼吸をした。それからまた歩き出す。とびっきりの変わり者、木戸遥に文句を言うためだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る