Interlude

 寒々しい春夜が彼の背を隠した。


 私は想い人のパーカーを見届けてから、何度吐き出されたか分からない溜息をつく。


 白いそれは、あの娘の髪色みたいだった。

 あの娘も溜息と同じように今日---いや。


 ポツリ、ポツリ。


 突然の頭に滴る水滴の感触は、私の涙じゃなくてただの雨だ。泣く感情なんて、とうの昔に捨てたから。無理して笑っていたら、そう、なっていた。


 けれど、今は久々に哀惜の念が身体を蝕んでいる。こんな感覚は久々だ。


 長年募らせていた想いは、結局曝け出すことができなかった。


 私の全てを見透かしていたような彼に、気を遣われて。笑ってくれて。


 私が何も行動を起こさずにバイトに明け暮れているうちに、まさかあの娘が彼と逢うなんて。それで彼が彼女に---そんなこと、思いもよるはず無いじゃない。


 急に私が焦って、彼に言おうとしたけど。

 そんな勇気、あるはずなくて。


 またあの娘は、私から大切なモノを奪っていくのかなあ。昔と同じように。

 別に昔のことを恨んでる訳じゃないけれど、やっぱりそれは辛いな。


 気付けば空は、号泣していた。


 強くなる雨足は私を打ち、化粧ごと洗い流してくれる。でも私の醜い感情は、濡れたコンビニの制服が身体に貼り付くように離れない。


 空を見上げると、雨が目に入った。

 今日が寒くてよかったなぁ。


 バイバイ。私の、妹さん。

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