第176話 快進撃
ヨハンはキル・クラウンを倒した後、元共和国領土を蹂躙していった。
帝国兵の抵抗もあったが、際立った将がいない帝国側の兵ではヨハンの敵にはならず。ランス砦で防衛に当たっていたカンナ軍も合流したことで、最後の三死騎がいる辺境伯領まで迫ろうとしていた。
しかし、その情報を得た最後の三死騎は軍を後方の帝国領土内まで下げ、ヨハンとぶつかることを避けた。
ヨハン軍は三死騎と戦っていたセリーヌ軍も加わったことで、30万近い軍勢になった。そのまま動かすのでは、指揮が分散する恐れもあるので、辺境伯領は今まで通り辺境伯に頼むことにして、カンナ軍をアリルーア草原に作られた砦の守護を命じ、セリーヌにはランス砦を預けた。
カンナとセリーヌが協力することで、王国へ続く中央が強固となった。
ヨハンは後方の憂いが無くなり、元共和国内を王国の手中に収めていった。
ヨハンの快進撃は元共和国内に留まらず。帝国の門と呼ばれる大橋に差し掛かっていた。
「ここを超えれば帝国領土だ」
「ええ。やっとここまで来ましたね」
元共和国領土の西から中央にかけてを王国に献上した。
東三分の一をガルガンディア領内と認めてもらうことで王室から恩賞を受け取った。ヨハンはさっそくアイスを名代として、ドワーフたちを派遣した。
各場所に要とある街の整備して、新たな街を作りを始めていった。
現在ガルガンディアには七つの街が出来つつある。それに連なる村々は、ヨハンが考えた方針に従い生活改善を行っている。
「ヨハン様は戦略の天才だと思っていましたが、領主としても無類の命君主だったのですね」
「褒めても何もでないぞ。でも、これまでと同じことをしていたら、民は苦しむばかりだ。みんなが笑って暮らせる環境を作ることこそ、本当に戦いを終わらせることにつながると思うんだ」
人は豊かになれば食事を奪い合っては争わない。ヨハンはそう信じている。
だからこそガルガンディア領内に住む者は等しく貧しさを感じないようにしようとしている。
それは食料の育成法を教え、衛生面や服装の改善まで考え実行した。
それらを人々に伝えることでやらなければいけない仕事が増え、家で燻りまともに仕事に就けない者まで働き口が得られた。
それは、これまで家を継げなかった次男や三男にも兵士ではない仕事が生まれ、外に仕事へ行くことが危なくない世の中へ変わっていくという。
ヨハンの環境づくりが成功したことを意味する。
「素晴らしいことだと思います」
ヨハンは種族という概念を取り払った。
ゴブリンやオーク、竜人族や獣人族、エルフやドワーフなどの精霊族。
所属として分けていた名前を取り払い。全てをガルガンディアの民として認めた。
同じ言葉を話す人なのだと、ヨハンは各街に学校を作り教えてることにした。
それは教会に逆らう行為であったが、共和国や帝国ではそれほど嫌悪感を抱かれることなく受け入れられた。
「この戦いが終わったら、あとはみんなに任せてのんびりしたいな」
「いいですね。二人でピクニックに行きましょう」
「ああ、いいな。リンが作ってくれるサンドイッチは美味いからな」
未来の話ができるほど、今のヨハン率いる王国軍は強かった。
しかし、大橋を渡れば帝国領土となる。
戦争はここからが本番であることもヨハンはわかっていた。
だからこそ、理想を語ることで互いの覚悟を図っていた。
「必ず行きましょうね」
「ああ」
軍隊が通れるほどの大橋は、関所が建てられ王国軍を退けるための巨大な門が建てられている。
さらに門の向こうで最後の三死騎である。
オクビン・シンガードが陣を引き、待ち変えている。
「進軍」
ヨハンがここまで来るのに一年の時が経っていた。
その間にランスが竜騎士を倒したと報告が来た。
それ以降の目覚ましい活躍を聞けずにいた。
焦りを感じた王都から帝国領土内へ進軍するように指令がきたのだ。
ヨハンもランスを助けたいと思っていたので、王都からの要請を引き受けた。
共和国内を手に入れたことで、ヨハンは土地以外に手入れたものがある。
それは各地に知らばっていた亜種族たちだ。
オークやゴブリンだけでなく、シルフィーやエルフ、ドワーフやノームなども人数が増えた。
それぞれの種族がヨハンの下で、ガルガンディアの民として生活をしている。
王国は亜種族を認めていないため、ヨハンがそれらの民をほしいと申し出たとき、喜んで渡してきた。
ヨハンは分け隔てなく民として彼らを起用し、今回の遠征でもヨハンを支える王国軍の半数以上が亜種族たちだ。
ゴブリン三万。オーク一万。コボルト一万。ノーム五千。ドワーフ五千。エルフ三千。ガルガンディアから一万。そして王国から派遣されてきた兵七千。
総合計八万の軍勢で帝国への進軍を成そうとしていた。
さらに竜人族が100だけではあるが参戦しており、遊撃隊としてヨハンの指示を待っている。
ヨハンは考えられる最強の布陣を連れてきたと思っている。
しかし、ヨハンはまだ知らない。
大橋を渡るということは、それを守る種族がいるということを……
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