第111話 街を作ろう 前半

雪解けが始まる芽吹きの季節。

ガルガンディア式軍隊訓練を終えて、休養期間を三日間王国第三軍に与えられた。


三日の間にヨハンたちにはやることが山ほどある。

帝国と再度開戦される前に、二人の将軍を中心とした細かな階級や陣形。

訓練の結果をまとめる期間が必要だったのだ。


結果を査定するのはヨハン、ゴルドナ、サク、リンである。

さらに、ライスとアイスにも手伝ってもらい。

新生第三軍の一人一人を評価していった。


ここで例を挙げておけば、体力作りに一か月かかった者がいた。

しかし、彼は魔力を纏うことに関しては一日で達成することができた。

体力がついたことで、自身の使う魔力をスムーズ扱うことができ本人も驚いていたという。


第三軍は人種が様々な揃っている。

だからこそ正しい評価をつけて使わなければならない。


イケメンことライスは、第二軍副総大将を務めていた人物で、貴族としての位の高い人物であった。

しかし、真面目な性格をしている彼は、ヨハンのことを大将と認めてくれている。そのため仕事の手伝いを頼めば快く引き受けてくれた。

第二軍副総大将として、剣術だけでなく。馬術、格闘術など様々な体力を作りをしていた。さらに貴族として高い魔力を持っていた。

そして、第二軍の参謀長を務めるほどの知識人でもあったのだ。

 

今回の訓練はまさに彼のためにあったのではないかと思われるほど彼に有利だった。彼が合格できたのは必然と言える。


アイスに関しては、平民からの叩き上げである。彼女は軍人としての日が浅く。

野山を駆け回っていた狩人の出身だそうだ。

ヨハンが出世した共和国との戦争の際に、ヨハンにその身を助けられことで、第三騎士団に入りを決めたそうだ。

ヨハンが勲章を授かり、貴族へなってしまったのでほとんど接点はなかった。

ずっと恩を返したと思っていたそうだ。


新たに優秀な部下を二人も手に入れることができた。

評価表を作りを終えたヨハンは、新たに隊分けを行うことにした。


紅組の総大将をアイスに、白組の総大将をライスにして、これから第三軍の絆と連携を強めるための訓練を行ってもらう。

ガルガンディア式軍隊訓練が個人の実力を高めるものであれば、これから行うことは仲間として意識をたかめるために必要なことだ。


二つの部隊に命じた内容は……街を作れであった。


現在ガルガンディアには5万人が収容できる居住区が存在している。

しかし、これからは食料供給や、人口増加が考えられる。

将軍が納める領地なのだ。そういうことがあっても不思議ではない。

また帝国との戦いの際に増援があっても受け入れられるようにして起きたい。

居住区が今のままでは足りないのだ。

 

そのため、紅白に分かれて南北に町を作りたいのだ。

ゴブリンたちの村は精霊族が攻めてきたときに破壊され、現在は国境の砦を中心にゴブリンたちの住処にしている。


ゴブリンには伝令役の任も与えているので、精霊領内に帝国が現れたときすぐに知らせることもできるので有効な砦となった。

他にも他領との領土の間や、王都に続く街道沿いにも同様にゴブリンやオークの砦を建設して監視に当たらせている。


「じゃあ、それぞれのほしい人材は確保したな?」


元々第二軍で指揮を執っていたライスは、第二軍の私兵をしていた者たちを自分の側近として引き上げた。

王国軍としては新参者で知り合いがいないアイスには、ヨハンが信頼できる三人の女性騎士を紹介することとなった。

ミリーたちもアイスのことを知っていたらしく。

快く承諾してくれたので、アイスの側近も決まり。

評価表に現した能力で、あとは振り分けていくことになった。


紅白の部隊を使って、ヨハンは競い合わせるように街作りをさせた。


南にはアイスに指示して、帝国に抵抗でできるトリッキーな仕掛けを施した先住民族が住んでいそうな街を。


逆に北にはライスに一任して王国式の煉瓦調の家と壁を作り、その中に畑や農作物を作れる場所を作るように。


設計図は元々考えていたモノを渡した。

他にも面白い草案があるのであれば、各自で組み込んでいいと伝えた。

この案件を上手く成功させたほうが、この軍の副総大将になることを言い渡した。二人はそれぞれの部隊を連れてガルガンディアを後にした。

必要最低限な飲み水や食料は渡している。

それ以上の道具や工具、余分な食料などは一切渡していない。

それらを調達するのも各将軍の役目であると言い渡した。


ガルガンディアには雪が降らない。

王国の東に位置しているのガルガンディアは、南に近いため雪が降るほど寒くならないのだ。

その代わり、山から冷気が下りてくるため霧が立ち込めることがある。

シーラ・シエラルクが得意とした霧が、広範囲に及んだのもガルガンディアの気候が関係していた。


雪の降らないガルガンディアは、冬場であっても作業が止まることはない。

木を切り倒し、街を作ることに支障はないのだ。

紅白に分かれた部隊にはそれぞれに課題がある。

このガルガンディアは広大な土地と森があるため、木材には困らない。

だからこそ、南に町を作るアイスは木材を利用した建築に取り掛かることができる。

しかし、木材を使うということは、どれくらい木を切っていいのか、どこを拠点にするのかが重要な要素になるため、着工を慎重にしなくてはならない。


対して北に町を作るライスは、木をいくら切ってもいい。

そのかわり木材が豊富にあっても煉瓦がないのだ。

煉瓦をどこからか調達する必要が出てくる。


「意地の悪い話だな」


作戦を聞いたときにジェルミーが言った言葉だ。

意地が悪かろうと、全てこちらが助けていては人は育たない。

自らで考え、行動できる者でなければ人材として必要ではない。


ガルガンディア要塞には、二千の兵士を自分の私兵とするため更なる訓練に明け暮れていた。


将軍が指揮する戦場は広い。

今までのように単独で戦いを挑んで決着をつけるということはできなくなる。

そんなときに自分の指示を他のものに伝える手足が必要なのだ。


「いいか、空を飛べるのと、百メートル五秒で走るのは必須だ。

あとは水の上とか走ってみるか?」


伝令とは、いかなる場所でも迅速に移動しなければならない。

貴重な譲歩を迅速に戦場から離脱して伝える必要があるのだ。

そのため彼らにはスピードと任務の重要性を叩き込み。

それと同時にヨハンの考えを理解してもららわなければならない。

考えを理解していれば、次にどんな指示を出すのか、ピンチのときにどんな行動を取ればいいのかまでわかるようになるからだ。


彼ら二千人のことを「影」と名付けた。

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