第40話 図書館でレベル上げ

 遊撃軍が出発する前に、二日間の休暇について考えた俺はいつもの図書館を利用することにした。


 図書館に入るとアリスが嬉しそうな顔で出迎えてくれる。アリスの好感度は良い感じに上がっている実感はある。

 奥手とかヘタレではないと自負しているが、未だに食事に行く約束すら実現できていない。それでも図書館に来て文学美女を見ているだけで癒される。


「いらっしゃいませ。ヨハンさん」

「こんにちは、アリスさん」

「今日はどういった本をお探しですか?」

「今日は兵法書があればそれをお借りしたいのですが」

「兵法書ですか?」


 今回は指揮官として戦場に赴かなければならない。兵士として戦場に赴くのと、指揮官として戦場に赴くのでは全く違う戦い方をしなくてはいけない。

 500人の部下を死なせないためにも、最低限の知識が必要になる。多大な期待をされても困るが、預かった以上は誰一人死なせたくない。

 彼女たちを死なせた場合は全て俺の判断が悪かったことになる。責任と同時に自身の経験や知識が多く必要になる。

 そのためにもヨハンにとって図書館は最適な場所である。


「はい。また戦争に行かなければ行けなくて、生き残るために必要なんです」


 戦争と聞いてアリスの瞳が潤んだように見えた。


「わかりました。ここにある全ての兵法書をお持ちします」

 

 気合いの入ったアリスさんは三つの兵法書を持ってきてくれ。


・ゴブリンでも分かる兵法書。

・初心者でも分かる軍師子法明が教える兵法書。

・あなたも今日から軍師になれる兵法書


 少なく感じるかもしれないが、同じ内容が重複しても意味がない。この三つはアリスさんが厳選して選んでくれた図書なのだ。


「ありがとうございます。さっそく読ませていただきます」


 礼を述べた俺はいつもの席に座ってゴブリンシリーズから目を通す。いつもながら絵が多くわかりやすい本である。


 ゴブリンシリーズでは、小規模戦闘に関する兵法書だった。一対一から五人ぐらいの集団までの戦闘における兵法が書かれている。


 軍師子法明では、小分隊から中分隊兵法書か書かれている。小分隊は5~10人前後の部隊を指し、一個小隊は小分隊が集まって出来た100人からなる。

 さらに、一個小隊が10個集まり1000人で一個中隊となる。今回の500人は半個中隊と呼ぶようだ。


 最後に呼んだ今日からあなたも軍師では、それぞれの分隊を使うときの応用書となっていた。

 王国に務める軍人として生きてはいるが、全くその辺の知識を持っていなかったので十分に勉強になる。

 アイゼンから帰る際に出くわした鉄兜達は50人前後だったので、半個小隊。


 応用編では、元の世界にいたときにも聞いたことがある兵法が書かれていた。


「ヨハンさん、三つとも読まれたら最後にこちらに目を通してください」


 最後にアリスさんが持ってきてくれたのは、難しそうな文字が書かれた分厚い兵法書だった。


 兵法三十六計と書かれている。


 元の世界で知っていた言葉で「三十六計逃げるに如かず」とは意味が違うようだ。三十六計とは戦術を六段階に分け、三十六個に纏めたことを言うらしい。 

 中隊で戦うのに役立ちそうだとその中から六つのことを抜粋する。


・打草驚蛇(だそうきょうだ)、 状況が分らない場合は偵察を出し、反応を探る。

・借屍還魂(しゃくしかんこん)、 死んだ者や他人の大義名分を持ち出して、自らの目的を達する。

・調虎離山(ちょうこりざん)、 敵を本拠地から誘い出し、味方に有利な地形で戦う。

・欲擒姑縦(よくきんこしょう)、 敵をわざと逃がして気を弛ませたところを捕らえる。

・抛磚引玉(ほうせんいんぎょく)、 自分にとっては必要のないものを囮にし、敵をおびき寄せる。

・擒賊擒王(きんぞくきんおう)、 敵の主力や、中心人物を捕らえることで、敵を弱体化させる。


 ヨハンの頭が良くなると、元の世界で読んだ兵法書を思い出すことが出来た。


 孫子に書かれている五事と七計を読み解けば、自身が見極める目を持った気になってくる。

 人の見極め、戦の見極め、流れの見極めを理解し考えるに至る思いがして、全てを見通すことができるように思えてくるのだ。


 二日間の間、出来るだけ図書館と、兵舎の図書室に籠って兵法書を読み続けた。


「もう、探しましたよ。ヨハン隊長!」


 三日目の朝、図書室で本を読んでいると、緑色のローブに身を包んだリンが呼びに来た。


「うん?リンか、どうしたんだ?」

「どうしたのかじゃありませんよ。皆さん集まっていますよ。それにヤコンさんと言う方が荷物も持ってきています」

「そうか、ちゃんと仕事をしてくれたみたいだな」

「どうして私が受け取り人なっているんですか?」

「俺は兵舎に居ないと思ったからな。リン、ありがとう」


 ヤレヤレと言った感じで、小言を言っている。礼を言うとリンは頬を赤くした。


「まぁ別にいいですけど。またヨハンさんが私を指名してくれたのは嬉しいですし」

「ああ、リンには特別報酬が出るように交渉もしているからな」

「本当ですか!?」

「ああ、また弟たちにおいしい物でも食べさせてやれよ」

「ありがとうございます」

「おう。そろそろ行くか」

「はい。お供します」


 図書でできるだけの知識を得ることができた。室内に籠っていたことで太陽の光がまぶしい。引きこもりには辛い出発となりそうだ。


現在のステータス


名 前 ヨハン

年 齢 15歳

職 業 冒険者(ランクC)戦士、エリクドリア王国第三魔法師団副団長

レベル 50

体 力 360/430

魔 力 503/580

攻撃力 243+10

防御力 283+10

俊敏性 302+10

知 力 472


スキル 

斧術7、投擲5、乗馬7、探索2、夜目2、気配断ち、攻撃力上昇、防御力上昇、敏捷性上昇、体力自動回復、魔力消費半減、経験値アップ、アイテムボックス

 

魔 法 

ヒール7、ウォーター4、ファイアー4、ストーン5、ウィンドー3、ライト3、サンダー3、アイス2、


兵 法 

背水の陣、釣り野伏、打草驚蛇、借屍還魂、調虎離山、欲擒姑縦、抛磚引玉、擒賊擒王


協力技 雷神剣(ランス)、エクスプロージョン(リン)


スキルポイント 32


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