第4話 とにかく勉強しよう
この世界はつくづくゲームの世界である。
昨日、数字と文字を勉強しただけで知力が上がり読めなかった文字が日本語へと変換された。
例えば露店商が書いている商品名が、今まで何を書いているかわからなかった。そこには果物の名前であったり、値段が書いてあり、今では意味を理解できる。
「それで図書館に行った意味はあったのか?」
「おう、文字がかけるようになったぞ。計算もできる」
そうなのだ。元々現代の知識があるのだ。文字や数字さえ分かってしまえば、あとは元の世界の知識が応用できる。露店商が書いてある数字を見て計算もできる。
そうすると市場の相場が分かるようになってくる。
銅貨一枚が千円という話をしたと思うが、銀貨は一万、鉄貨は百円、端貨と呼ばれる鉄くずが一円の扱いになる。
金貨は銀貨100枚の価値があるので百万ということだ。まぁお目にかかるのはもう少し上級の仕事をこなせるようになってからだろう。
ちなみに現在の俺の所持金は、冒険者ギルドで換金した素材のお金と、依頼を達成したお金だけだ。これまで貯めてきた金は旅支度で使い切った。
だから銀貨50枚、銅貨12枚が二人の所持金となっている。
そこそこあるように見えるが、装備の手入れや、日々の生活費を考えると心もとない数字だ。
「一日でそこまでできるようになるか?」
「成せばなる。それよりお前の方はどうだったんだ?」
「俺か?俺はパン屋と喧嘩して大変だったよ」
パン屋と喧嘩?ああ、そういえばそんなイベントがあったな。主人公が最初に出会うヒロインがパン屋の娘だったはずだ。
街に来てすぐに腹が減り過ぎてパン屋に入る。ゴブリンに襲われ親友も失っていた主人公は姿が汚すぎると追い出されるのだ。
激怒したランスが文句を言うつもりでもう一度店に入ると、美少女の店番に代わっていて、何も言えずに店を出る。
確かそんなイベントだったはずだ。
「それでどんな可愛い子がいたんだ?」
「わかるか?」
「お前が疲れる理由は美女だろ」
「そうなんだよ。喧嘩して追い出されたからもう一度店に入ったら可愛い子になってて、普通にパンは買えたし良いんだけど。なんだが疲れちまってな」
「お前らしいな」
オープニングよりも身綺麗な格好でパン屋に入ったはずだが、喧嘩イベントは起きたようだ。
どこにある店かとか、どんな子だったか聞いて後日行って見ようと当たりを付けた。俺の知っているこの世界のヒロインはドッド絵だったのだ。
実物がどれほど綺麗か興味がある。
「それよりも騎士になるためには仕官しなくちゃダメだろ?国に仕官ってどうやるんだ?」
「そんなこと俺も知るかよ」
ヨハンはバカなのだ。そんな知識が有るはずがない。だからランスに聞いてみたが、何も得るものはなかった。
「明日は仕官するためにはどうすればいいか調べて来るよ。ヨハンはどうする?」
「そうだな。俺はもう少し図書館にいくよ」
「なんだ?お前も可愛い子がいたのか?」
「まぁそんなところだ」
司書さんはなかなかに可愛かったから嘘はついてない。
「お前は本当に女好きだな」
「お前は逆にいつになったら女になれるんだ?」
「うるせぇ!俺だって普通に話をして恋をしたいんだ」
「はいはい。お前は美女はダメだからゴリラみたいな女がいいんじゃないか?」
「バカにするなよ」
ランスが威圧スキルをは発動した。おいおい、お前そんなスキルいつの間に覚えたんだよ。ちょっとチビリそうになったじゃなねぇか。
「はいはい。お互い明日のためにもう寝ようぜ。起きてても暗いしさ」
「……そうだな」
ランスも気を取り直して布団に入った。今日のステータスを見る。
名前 ヨハン
年齢 14歳
職業 冒険者(ランクC)戦士
レベル 13
体 力 120/130
魔 力 17/25
攻撃力 100
防御力 91
俊敏性 128
知 力 65
スキル 斧術3
魔 法 ヒール1
スキルポイント 10
んっ?レベルが上がってる。なんでだ?モンスターとか倒してないぞ?一日勉強してただけでレベルが上がるって、ヨハンはどんだけダメな奴だったんだよ。
まぁスキルも増えてるから、多分知識を増やすために勉強したことで経験値を稼げたんだろうな。魔力も多少増えているのはありがたい。何よりスキルポイントが10に戻ってるな。
今まではレベルが1上がるごとに1づつだったのに、レベルが10を超えて2上がるようになったみたいだ。
昨日見た経験値アップを獲得して、レベルを上げやすくしておく。残る4を何かに割り振れないかと物色してみる。今のところ目ぼしいスキルはないらしい。
まぁもう少しスキルポイントを溜めれば色々できるからな。今は勉強してレベル上げだな。
夜のステータスチェックを終えて眠りに就ついた。
朝になるとランスに起こされて朝食を食べてから街へ出た。ランスは仕官するためにはどうすればいいか情報を集めると今日も散策に向かった。
ゲームならばスケジュールを決めて、鍛錬に明け暮れたりする時期である。
冒険者として日銭を稼いだりするのだが、どうやらこの世界のランスは騎士になることしか頭にないらしい。俺がしっかりしなくちゃ心配だな。
「おはようございます。アリスさん」
「あっ、おはようございます。ヨハンさん。昨日に続いてきてくれたんですね」
どうやら昨日に続いてきたことで、アリスに名前と顔を覚えて貰えたらしい。
「はい。まだまだ勉強したいことがあるので、すみませんが魔法に関する本ってありますか?」
「魔法ですか?魔導書に関しては使用制限がありまして、現在お見せできる魔導書はこれしかないんですが?」
ゲーム内で図書館の項目がなかったので、知らなかったが魔導書には使用制限があるらしい。
代わりにと渡された魔導書にはゴブリンでも分かる魔法の原理と書かれていた。どうやら魔法とは、という当たり前のことが書かれているらしい。
アホなヨハンにはそれだけでも未知の知識になる。十分な資料として使えるだろう。
「ありがとうございます。これを読ませて頂きます」
アリスにお礼を言って、昨日と同じ席に座る。本を読むのは嫌いじゃない。まぁ現世の俺の話だ。
魔法に関する本は文字や数字と同じく、絵や丁寧な説明が書かれているのでこれを書いた人は本当に人にものを教えるのが上手いと思う。
アホなヨハンでも文字が理解できて、今度は魔法の原理が理解できそうなのだ。
魔法とは自然界に潜在する魔素エネルギーであり、大気中に存在する魔力を吸っていることで魔力を体内に溜めているのだ。
母親が吸う魔素を胎児が受け取ることで、人間は生まれたときから魔力を誰もが持っている。
そのなかでも魔力の容量が多い少ないは、胎児の才能であったり親からの遺伝も左右するらしい。
原理というから難しいことを考えていた。どうやら概ね予想した内容が書いてあった。
それでもヨハンは知らないことを学んだのでレベルと知識力が大幅にアップした。
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