第15話
我が家に戻って、今日に限って高校に来なかったお兄ちゃんを睨んだ。
「なんで今日に限って来なかったの」
「え?あー、お昼にやってるドラマの再放送見たかったからさ」
呑気に中学生の時の私みたいことを言うお兄ちゃんの前に、私は後輩3人組に拾ってもらったデザイン画を突き出した。デザイン画と一緒に今日会ったことを教えると、お兄ちゃんはあの3人みたいに瞳を輝かせて
「マジか・・・!いや、その子たち見る目あるな!」
自画自賛を始めた。
こういうところに腹が立つ。黙ってれば本当にいい洋服を作るそこそこカッコいい人なのに。
「で?引き受けたんだろ?早速作ろうぜ!」
「お兄ちゃんが作ればいいじゃん。私、課題あるから」
「は!?なんでだよ!」
「お兄ちゃんなら1人でできるでしょ?」
「でも、その後輩たちはお前がデザインして、お前が作ってくれると思ってるんだろ?」
しばらくお互い無言の時間が続いたあと、お兄ちゃんは不意に何かを思いついたような表情で指を鳴らして、私の顔をまじまじと見つめながら
「わかった。お前、悔しいんだろ」
図星をついてきた。
「そんなわけないでしょ」
「別にいいだろ!向こうはお前がデザインしたと思ってるんだから、お前の手柄ってことにしてやるよ」
「お兄ちゃん自画自賛激しすぎだから。うざい!」
「兄ちゃんに向かってうざいとはなんだ!」
「うざいうざいうざいうざい!キモいキモいキモい!」
「なんだと・・・・!!!!」
「神社で祓われろ!」
私は一喝するとお兄ちゃんを部屋から追い出した。勢いよくドアを閉めて、入って来られないように勉強机の椅子をドアに押し当ててやる。
ドアの向こうから抗議する声が聞こえるけど、どうせお父さんとお母さんには聞こえないからこのまま勝手に騒いでいればいい。
私は晴れない気分のままベットにダイブした。
・・・別に、自分の作品がいいって思ってるわけじゃないし、いまだにクラスのみんなと服を作っていても、自分の作品は華がないように思うし自信がない。
でも、お兄ちゃんの洋服が「素敵」って言われてるのを見ると・・・、なんか悔しい。
この2年で、お兄ちゃんの方が私よりも素敵な服を作るし、作業も手際がいいことは十分思い知らされている。そんなの、初めてお兄ちゃんが作った洋服を見た時からわかってた
それでも、どこか悔しがっている自分がいるんだ。
「オホホホ」
枕に顔を押し当てていたら、あの奇妙な笑い声が突然響いてきた。
まさかと思って顔を上げると、そこにはもうすっかり「おなじみ」になっちゃった魔導師が。
「呼んでないけど・・・!」
飛び起きた私の顔を、魔道士は相変わらず面白がるような笑みを浮かべながら覗き込んでくる。
お兄ちゃんが呼んでないのにやってくるなんて、初めてだ。
「明音さま、そんなに飛鳥さまに嫉妬されてなくてもよろしいじゃないですか」
「は・・・?」
「だって、あなたは、未練を残して死んでしまった飛鳥さまが「かわいそうだから」、小芝高校に行って、洋服を作られているんでしょう?」
え・・・。
いや、そんな・・・そんなことは・・・。
「私は・・・」
そう言いかけた時、目の前に魔道士はもういなかった。
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