君の声を聞くには遠すぎるし、君を見つめるには近すぎる
にこ
通学と花
いつからだろう朝がこんなにも憂鬱になったのは、朝日を見ることでこんなにも嫌な気持ちになるようになったのは。どこか違う世界の誰かになれたらなって昔からよく考えるけどそれはそれでめんどくさいだろうな。Melancholic
9月20日、だんだん寒くなってきた。朝は食欲が無い。それでも味のしない米を口に運ぶ。平日はいつもこうだ。僕は今日学校へ行く。明日も明後日も。別にいじめられているわけでもなければ、どうしようもないくらい勉強や運動が出来ない訳でもない。ただ漠然と嫌なのだ。それでも僕は学校に行くだろう、それ以外の選択肢がこの世界にはないのだ。入口しかないトンネルのように。
Go straight
駅のホームにはいつものように灰皿のような顔をしたサラリーマンが数人。電車はいつも7時13分に来る。僕はいつも2つの駅でしか乗り降りしないが電車は毎日同じ線路の上を回っているらしい。時間通りに。似たものどうし話が合いそうだな。毎日同じ道を走ってて飽きないのかい?君こそ毎日同じ時間、同じ場所で僕に乗るじゃないか!って僕らは笑い合う。ぐるぐるぐるぐ
僕の世界は彼女を意識しだしてから少しずつ変わっていった。 僕が乗った駅から3つ目の駅で彼女は乗ってくる。外見はパッとしない静かな女の子。ただ僕は彼女の出す不思議な雰囲気に気づいたら惹かれていた。彼女とは去年から同じクラスだ。彼女と話したことはおそらくないだろう。まず声を聞いたことがない気がする。彼女が僕と同じ車両に乗ると空気が全く違くなる。世界中の酸素が彼女の周りに集まっているかのように空気が薄くなるのだ。カラスのようなサラリーマンたちが乗ってきてもこの空気は変わらない。これが恋なのだろうか?電車は駅と駅の間を単調なリズムで走っている。ガタンゴトン、ガタンゴトン
僕らは当然同じ駅で降りる。彼女はいつも僕のすぐ前を歩いていく。少しは意識してくれているのか、はたまた彼女からしたら僕は周りのカラスたちと同類なのか。僕は彼女を見ることが出来ればそれで良かった。僕らは例のごとく僕の空気だけが薄いバスに乗り学校に行く。これが僕の世界の些細で唯一の幸せだった。Happiness
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