芝宮涼子は馬に乗りたい

mafumi

1.芝宮涼子が余計な気がする

 学生時分に取り組む事柄は、人それぞれに存在する。

 ある者は勉学に励み、ある者は友情を育み、ある者は部活に精を出す。ある者は恋をする、ある者は旅に出る、ある者はネットゲームにいそしむ、ある者は引きこもる、ある者は、バイトにまみれる。ある者は、異世界にとばされる──なんてことは流石にないか。

 一方で学生というのは、義務として取り組む事を強いられるものだから、思うようにならない事の方が多い。かくいう僕だって、高校一年も二学期になると、やりたい事より、やらなきゃいけない事に多く時間を裂く羽目になっていた。

 ま、それはある程度自分で選んだものであるから仕方がないのだけれど。


 僕は、馬術部に所属している。

 僕の住まう地域は、内陸部の高原にあって古くは馬の名産地だ。そのせいか、県内のいくつかの高校には当り前のように馬術部が存在していた。

 そして、わが校の生徒は、かならず何処かの部活に属さなければいけなかったから、僕は馬術部を選んだのだ。

 理由は、中学からの経験者が多いメジャーな部より、ゼロから始める生徒の多い部のほうが、気分的に楽だろうとか考えたからだった。

 その予想は大いに的中して、僕を含む一年生は、一律で馬術の基礎を学びつつも、馬に乗る機会も少なく、ひたすら馬房の掃除と馬の世話を強いられる羽目になった。

 これが、僕がいま取り組んでいるもっとも気の進まない「やらなければいけない事」の全容だった。


 しかし、これに一つ余計なことが加わる。

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