第10話 昔のことも
………はぁだる。
まぁこの部活はそういうものだと思ってたけどね、
まさかここまでだるいとは思いもしなかった。
買う物は画鋲にガムテープにビニールテープ。
まったく………準備の進行をしていた人は謝りに来て欲しい。
今は学校の生徒がよく使うと聞いたホームセンターに向かっている。
俺が前を歩き、
後ろの2人は賑やかだな。
聞こえるのほとんど久米の声だけど。
「着いたぞ」
見た感じなかなか広い。
他の学校の生徒も使っているらしいのでトラブルには気を付けてくれと菊瀬きくせ先生に言われ、経費を渡された。
他についてくる生徒はいない。
体育祭に携わっている生徒はどうやら本当に目の前のことで手一杯のようだ。
「じゃあ、中に入るか」
「えぇ、行きましょう」
答えたのは櫛芭だけで、さっきから久米は
ずっとへぇ、とかほぉ、とか言っている。
そんな珍しいか?
階を上り、商品の棚を巡って行き、目当ての商品を探す。
「え?
聞き覚えのある声がした。
声の主を見ると、これまた見覚えのある顔で、
「……
「あぁ。多分もうすぐ、きたきた。おーい!笠真がいたー!」
「え?笠真が!?」
それを聞いて走ってくる女子。
俺をいれて、この3人は幼馴染みだ。
保育園から中学まで同じ所に通っていた腐れ縁だ。
現在、美穂と隼真は同じ東道高校に通っていて、二人は付き合っているんじゃないかと自分の中でもっぱらのうわさ。
「久しぶり!」
「こんな所で会うとは思わなかったな。制服だし、笠真も体育祭か?」
二人から言葉をかけられる。
「まぁそんな所。俺も会うとは思わなかったよ。あと久しぶり」
「あれ?
久米が声をかけてきた。櫛芭も隣にいる。
「初めまして。俺、笠真の幼馴染みの野谷です。こっちは秋」
「初めまして!」
隼真と美穂は久米の問いに察してくれて、二人は自己紹介をした。
「こちらこそ!初めまして!私は久米です!」
「櫛芭です。初めまして」
自己紹介をひとまず返し、幼馴染みかぁと久米はなんだか変な感嘆の声を出す。
どうしたよ一体。
「しかしなぁ、笠真。お前こういう委員会とかもうやんないとか言ってなかったか?」
隼真は聞いてきた。
たしかに前LINEでそんなことを言った気がする。
でもな隼真、これ、委員会じゃないんだ………。
「これ、部活なんだ。そういう……」
経緯も原因も、自分でもよく分からない説明を隼真と美穂に苦労しながらなんとか伝える。
「………へぇ、人を助ける部活かぁ」
「そんな部活があるんだね!」
二人とも興味津々ですね。
………もし出来るなら代わってもらえないでしょうか。
「名前はなんて言うんだ?」
隼真が聞いてくる。
「……………名前……か」
「ねぇやっぱり名前決めようよ!」
久米が言う。
やっぱり名前あった方がいいか、うん。
「そうね。名前があった方がやっぱり活動しやすいと思うわ」
うーんそうだよなぁ。
………活動したくないとか言っちゃだめかなぁ。
だめか、だめって空気が言ってる。
「なんて名前が良いと思う?」
それからは隼真と美穂も入れて意見を出し合った。
それから少しだけ時間が経ったか。
「じゃあ雨芽くんは何が良いの?」
俺が反対意見ばかり出している事に気づき、久米が聞いてくる。
オタクは否定から入るからな。
自分から意見を出すのは難しいんだ。
「確かに、あなたの意見を聞いてみたいわ」
櫛芭ものってくる。
隼真も美穂も聞き入る態勢だ。
………どうしよう。
それっぽいやつ………それっぽいやつ。
「扶助部。………とか、どうだ?」
………………。
「うん。まぁ、良いんじゃないかな」
ぐっ。
久米の感想。
みんなもうなずくだけで何も言わない。
普通すぎたな……でも俺ボケのスキルないし………。
いたたまれなくなって
「じゃあ!俺、これ買ってくるから!!」
俺はレジに逃げた。
――――――――――――――――――――――――――
雨芽くんがレジに行った後、私は幼馴染みである2人に質問してみた。
「雨芽くんって、中学校の時、どんな人だったんですか?」
「どんな人、か。……まぁ、友達が多かったよな」
「うん。明るくて。とても優しい人だった。今も優しいけどね」
お世辞とは思えない。
さっき話しているのを見た感じ、雨芽くんとは本当に仲が良さそうだった。
「そう、ですか……」
想像と違った。
友達、多かったんだ。
なんで今は一人でいることが多いんだろう。
陽悟ひごくんと話してなければほとんどがそうだ。
「もしかして、今は違うのか?」
うっ……私はこの質問にどうやって答えるべきだろう。
未白ちゃん!助けて!
視線を送ってみるものの………、
「そうですね………」
やっぱり困るよね………ごめん!
「そうか。やっぱり中学校の最後の時の…」
「隼真」
今まで黙ってた秋さんが野谷くんを止めた。
「私たちも詳しく知らないし、嘘を言っちゃうかもしれないから、言わない方がいい」
それからは話を変え、話を合わせ、時間を潰した。
触れてはいけない。そう思った。
会計を終わらせ、帰ってくる雨芽くんを呼ぶ。
話を聞く前と後では、同じように彼を見れなかった。
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