第2話 失われたアイドル
奇跡的に目を覚ました少女は、名を『
目覚めた当初、そらは混乱こそしたものの、すぐに落ち着きを取り戻し、家族と共に生の喜びを分かち合った。
ただ、目覚めの代償はあまりにも大き過ぎた。
過去数年間――具体的にはアイドルとして活動をしていた時期の記憶が完全に欠落してしまっていたのだ。
日常生活に支障がないことが不幸中の幸いではあったが、それでもアイドル業への復帰は絶望的であった。
頭部に大きな手術痕が残っていたのだ。
流れた月日と粘り強い治療によって傷痕はだいぶ薄れてはいるが、顔も重要な商売道具であるアイドルという仕事においては、致命的な問題だ。
そのような事情もあり、そらの両親と所属事務所は協議の末、アイドルとしての復帰を断念するという結論で合意に至った。
ただ、事務所側も素直に受け入れたわけではなかった。
アイドルとしてでなく、タレントとしての芸能活動継続を提案していたのだ。
それは芸能人としての価値であるとか、将来性であるとかいった打算的なものではなく、小さな事務所ながら一緒についてきてくれた、彼女への居場所を残しておいてあげたいという優しさからのものであった。
だが、それらはそらの両親によって丁重に断られた。
その理由は、記憶を失ったそらにとって、急にタレント活動をと言われても混乱させてしまうという、もっともなものだった。
結局、事務所側も苦渋の決断を受け入れ、会社のホームページからも彼女の名前が消えた。
そして、アイドル『
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