喰らえ! ジャバヲック! オレは堕ちた勇者を狩る者
赤地 鎌
第1話 狩人の名は
「はいよ」
と、ギルドの依頼された報酬を受け取る男トージは、両手で握れる程の金貨が入った革袋を握り締めて、収納魔法を開いて放り込んだ。
金貨を渡したギルドの受付の男が
「次の依頼は、何時、受ける?」
トージは片手を上げて背中を向けて
「これで疲れたんだ。三日くらいは休みたい」
受付の男が
「また来てくれよ。アンタはウチで一番の稼ぎ頭なんだからよ」
トージは、歩き出しハーブ香の葉巻を出して口に咥えて歩いていくと、ギルドのテーブルで談笑する男達が
「よーう、女の敷かれるトージ様じゃあないか?」
共に談笑している男達が
「これからマンマのいるお城に帰るんですか?」
「いやーーー 女ばっかの城で、暮らしている情けないご身分、羨ましいねぇ…」
トージは、視線をバカにする男達に向け
「お前達も何時までも駄弁ってないで、仕事をしろ。このギルドから破門されたら次がないんだろう」
バカにする男達が苛立った顔で
「ハーレスに飼われてプライドがない犬様が、吠えるぜ」
と、声を放ち
「ハハハハハハハハハ」
と、笑い声が響くが。
「アンタ達、何言ってんの?」
ギルドの入口で、鎧に武装した女性達がいた。
その女性達を見て、バカにした連中が逃げようとするも、その前に女性達が投げた魔導槍が着弾して止めた。
鎧の女性達が逃げようとする男達に威圧を持って近づこうとすると、そのリーダーの女性の肩をトージが持ち
「よせ。無駄だ」
リーダーの女性がトージを見詰め
「トージをバカにするって事は、アタシ達のアテーナ・ハレスを侮辱しているに等しいんだよ」
トージが
「どうせ、連中は、稼ぎが少ないから絡んでいるだけだ。いちいち挑発する連中を潰していては、アテーナ・ハレスの名に傷が付く」
「その通りだ」
と、ギルド長の年長の男性ボザナが屈強な部下を連れて現れ、挑発した男達に
「お前達、最近…仕事をしていないよなぁ…。ギルドの契約で、月にある程度の仕事はこなして貰うのが鉄則だ。もし、出来ないなら」
挑発した男達は
「ムリが過ぎますよ。魔物退治なんて、大変なんですから…」
ギルド長ボザナが
「そうか…だが、トージは、今月に入って大型の魔物を数件もこなしている。仕事が出来ないヤツが、幾らほざいた所で説得力は皆無だ。ウチは仕事が出来ないヤツなんて必要ない。何時でも出て行っても構わないぞ」
挑発した男達は、バツが悪そうにして「すいません」と呟いて出て行った。
ギルド長ボザナが
「すまんな。トージ。ああいう…弱小の魔物を月に一匹、二匹程度を退治しただけで、オレは凄いハンターなんだ…と声ばかりが大きい連中が沢山いる。この辺りで免許制度ってヤツを導入しないといけないかもなぁ…」
トージは肩をすくめて
「別に気にしていない」
ギルド長ボザナが
「そうか。それと…帰りで悪いが…大きい仕事が入った。こなしてくれないか?」
トージに大きい仕事が入った、というのはとある隠語なのだ。
トージは、ハーブ香の葉巻からハーブの匂いを焚きながら
「何時だ?」
ギルド長ボザナが
「夜中に迎えが来る」
トージは頷き「分かった」と、告げて了承した。
トージは、住居のアテーナ・ハレスに帰って準備を始める。
アテーナ・ハレスとは、数キロ程度の空に浮かぶ
特別なマジックキャッスルであるアテーナ・ハレスには、様々な魔法制作機があって、強力な魔導具や魔導兵器を作っている。
このアテーナ・ハレスに暮らす事を許されているのは、トージだけだ。
トージは武器庫に行って、今回の特別な依頼に関しての武器を揃えている。
魔法収納に、武器達を入れて、直ぐに取り出せるようにタグ付けする。
準備をするトージの背中に、アテーナ・ハレスの総括をする娘が来る。
彼女は、フェリエス。
桃色の髪に、高めの透き通った声で
「トージ…この仕事を辞めれば良いじゃない」
トージはフェリエスの隣を通り過ぎて
「オレしか出来ない事だ。仕方ない」
フェリエスは、トージの左手を掴み
「私達は、それなりに強くなった。トージがそんな汚れ仕事をする必要はないわ!」
トージが背を向けたまま
「確かに汚れ仕事だ。最低最悪のな。誰かがやらなければならない。それがオレだった。それだけだ」
と、告げてフェリエスの手を解く。
フェリエスが出発して行くトージに
「バカ!」
トージは、それに手を振って答えた。
これからトージは、トージだけしか出来ない仕事をする。
それは、人殺しを殺す仕事だ。特注の人殺しである。
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