幸か不幸か 1

なんていう人生だ。

たぶん、僕は生まれ変わったのだろう。昔の書物にいくらか書いてあった。

人の魂は、死んで天に帰り、また現世に生を受ける。輪廻を繰り返すと。

ただ、僕は前世の記憶が残った状態で今世に生まれたのだろう。かなり珍しいと思う。

けど、それもここまで。

気が付いたら、また死ぬ直前だったなんて・・・・・

神様がいたら、蹴っ飛ばしてやりたくなるよ、本当に・・


あれからどれくらい経ったのか? 意識が戻ったが相変わらず体は動こうとしない。ただ担がれているのだろう。振動が伝わってくる。


「さて、着いたぞ」


ん? 男性の声? でもさっきの男性とは違う声だ。

たぶんだが、最初の男性が、僕の今世での父親で女性の方が母親なんだろうが、今の声は全く違う声だ。


「悪く思うなよ。これも仕事なんでな」


ドサッ!


い、痛い! い、痛みがある? まだ多少は感覚が残っているのか?

それにしても今の、投げられたのか?


「成仏しろよ。お前ら赤子や幼子の死体を森深くに置いていくのも実際は気が引けるんだぞ? でもな、こうしておくと森の魔物や害獣が腹を減らす事がなくて、村に危害が少なくなるんだ。死んでも村の為に働けるんだから本望だろ? まぁ、死体にいくら言っても分かりゃしないか。じゃあな。恨むなら親を怨めよ」


そう言い残した男の足音が遠ざかって行く。


ちょっと待て! つまり僕は魔物の餌なのか? 僕は生きているんだぞ! 

くそっ! どうにかしてここから離れないと・・・・無理か・・

もう死にかけて動けない。声も出ない。それなのに意識だけはっきりしている・・・・


なんの冗談だよ!


ガサ、ガサ、グルルルルゥ


?! 物音がする? 何かが近づいている。


ガサ! バリバリ! グッシャ、ガリガリ、バギ! グシャ!!


な、何だ? 何かが居る。何かを食べているのか? 

まさか、僕以外にも子供の死体があるのか? それを食べている?! 


だ、誰か! 誰かぁ! 助けて! 


そ、そうだ! 前世の記憶があるなら結界を・・・・無理か・・魔法が発動しない。体内の魔力量が絶対的にたらないのか? それとも死にかけているからなのか・・・


あの邪竜神との戦いの時だってこんな恐怖は無かったのに、独りがこんなに怖いんだ。

皆の事が思い出される。せっかく転生出来たのに会えずじまいで終わってしまうのか? 僕の人生って・・・・


「風刃!!」

 

ギャン!!? ドサ! グルルルル・・・・ダダダダ!! ガサガサ!


人の声がした。風刃、カザハ、精霊魔法だ。

誰かが精霊魔法で、魔物か何かを倒してくれたのか?


「・・・どうして、人族はこんな事をするの・・・」


綺麗な声の女性のようだ。なんとかして気付いてもらわないと! ・・・・くそ! 声も出なきゃ指一本も動かせないじゃないか! まずい、意識が・切れそうだ・

とにかく念じろ! 強い念は岩をも通すって言うじゃないか!

助けて! 助けて! 助けて! 助けて!!!


「ん? お婆様。何か感じませんか?」

「どうしたの? アルーラ」

「それがよく分からないのですけど、誰かに呼ばれたような? そんな感じがして」

「・・・・特に私は感じないけど・・それより、この子供達を埋葬してあげましょう」

「そうですね。それにしてもいくら貧しいからって、自分の子を魔物の餌にするなんて人族は何を考えているのでしょう」

「それはまた六大会議にでも議案として取り扱いましょう。それより早く済ませましょう。また魔物が血の臭いを嗅ぎ付けて来るわよ」

「はい。お婆様。それじゃあ私がこの子等を運びますので、お婆様は埋葬用の大きな穴を作っていただけますか?」

「いいのアルーラ、血で汚れるわよ?」

「関係ないです。いくら人族といってもこの子等は純真無垢な尊い命にはかわりないのですから」

「そう、それじゃあお願いね」


ちょ、ちょっと待ってくれ! 僕はまだ生きてるんだ! 気付いてくれ!!


いくら僕が訴えても念だけじゃ、どうしようもない! 


ガサ、ゴソ、ゴソゴソ、


ち、近くに来ている。とにかく何かないのか! 気付いてもらえる方法!


焦っている僕の体がふっと持ち上げられ浮遊感を感じる。


「お婆様、これで最後の子です。こんな麻袋に押し込められて可愛そうに。今私が出してあげますね」


!! こ、これはチャンスだ! ここを逃したら生きたまま生き埋めにされてしまう!


僕は必死に体を動かそうと、声を出そうと必死に力を入れる。

しかし、体は全く反応しない。


「ぼく、辛かったね。今、お姉ちゃんが大地に還してあげるからね」


は、離さないで! 手を! 手を! 離すなあああああああああああ!!


「ア、アア・・・」

「え?!」

「アアア・・」

「お、お婆様!! こ、この子! まだ、い、生きてる!!!」


や、やったあ・・・なんとか・これ・で・あれ? 意識・が・・・・・・

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