2「新たな仲間?」

 和樹君を、見つけた私は、魔王の力で、彼の現状を、探りました。

なお彼は、女性ではなく両性具有になっていた様です。

そんな彼は、今、三人の女性と暮らしています。全員、使用人のようで、

その中に一人、イヴと言う女性はロボットようです。彼女は、気に入りました。

和樹君と結ばれた後でも、使用人として、側に置いておきましょう。


 残り二人は、正直気に入りません。仕事ぶりは悪くは無いのですが

喧嘩ばかりで、その上、和樹君の悪口まで言う。

何よりも生理的に受け付けない。いずれ、辞めていただきましょうか。


 とにかく、今、彼は、恋人はいないようで、私の事が忘れられないのでしょう。

ただ、私は、生まれ変わった身、もう木之瀬鈴子ではなないのです

記憶は持っていても、身体は別物。故に、私は私を、証明できない。

悔しいですが、今の私として、彼に接せねばなりません。

そして彼を、私のものにする。


 そう、私は、私から彼を寝取るのです。そう敵は、かつての自分、

まさしく、自分との闘い。親切な人のアドバイスもありますし、

絶対に負けません。






 仕事を探しに、冒険者ギルドに行くと、


「カズキさん、丁度良かった」


と馴染みの受付嬢から、声を掛けられた。


「何か用か?」

「実は、パーティーメンバーの斡旋を頼まれていまして」


これもギルドの仕事であるが


「パーティーを組んでもらえませんか?」

「えっ?」


ダンジョンの時は、パーティーは組んだが、基本的に、組むことは無い。

それは組むほどの仕事は、してないからであるが

過去に組んだのは、イヴの事を知らしめる為だし、

最近は、イヴは連れていくけど、あれはパーティーとは言えない気がする。


「新人冒険者の、かわいい女の子なんですけど……」

「いきなり何で?」

「貴方となら、丁度いいかなと思いまして、お願いできませんか?」


別に、孤高の戦士を気取るつもりはないけど、

人手がいるほどの、大した仕事はしてないし、誰かと組むと、

何だか面倒な気がするし、あとデモスゴードの様に、突然のアクシデントで、

フルパワーを使わなければ、いけない場合もあるかも知れない。

その時、第三者が居れば、俺の正体がバレてしまうというリスクがある。


 そういう訳なので、俺も、男だから、かわいい女の子と言うのは気になったが


「悪いけどさ……」


断ろうとした。その時だった。


「あの、黒騎士さんですよね」


と声を掛けられた。


 声の主は、赤毛のミドルショートの中々の美少女であった。

歳は、まだ十代後半、ミズキとリリアの中間くらいに思えた

身体には、軽装ではあるが鎧を身に纏っていて、

体つきは、そこそこと言った所、背丈は今の俺と同じくらい。


「誰?」


と聞くと、受付嬢が


「この子が、貴方と、パーティーを組んでほしい新人冒険者ですよ」

「君が」

「貴方の事は、幾つかの村で聞いています。なかなかのご活躍だそうで」


そして彼女は、嬉しそうに笑いながら


「もしかして、私と組んでくれるんですか、うれしいです!」


と言い出し


「いやその……」

「私は ベルティーナ・ウッドヴィルで、まだ新人の冒険者です。

ベルとお呼びください」


と名乗ったのち、大きな声で


「不束者ですが、今後ともよろしくお願いします!」


言って、頭を深々と下げた。その大声の所為で、他の冒険者たち視線が集まり、

断りづらくなって


「頭、上げて……こちらこそ宜しく……」


そして受付嬢が、


「良かったですね」


と言って、笑顔を見せる。結局、俺は、押し切られてしまった。


 この後、二人で、ゴブリン退治の仕事を受注した。

予測難度が低めであったが、規模が大きく、一人ならきついが

二人ならちょうどいいというところか、

ちなみに、仕事は


「この依頼がいいんじゃないですか」


とベルが、見つけてきた。


「二人なら、ちょうどいいんじゃないですか」


と受付嬢の折り紙つきである。


 すこし遠方の村なので、出発は、翌朝。

その日は、interwine、夕食をとりつつ、雨宮と話をした。

もちろん話題はベルの事。一通り、俺の話を聞いた後

少し、心配そうに


「それは、気を付けた方がいいな」

「普通のゴブリン退治で済めばいいんだけどさあ、

アクシデントが起きる事もあるからな、この前の、グリフォンみたいに」


そのグリフォンは、以前、ミズキが戦っていた奴よりも大きく強い

いわば上級魔獣だった。まあフルパワーになる必要は無かったし

イヴの助けはあったものの、少々面倒であった。


「まあ、おかげで新しい武器は、手に入ったけど、使いづらいし」

「例の槍な、確かに使ってて、気まずい槍だな。

でもお前ならどうにかできるんじゃ」

「それもそうなんだけどさ……槍の事はともかく、

今度の仕事は、無事平穏ならいいんだけど」


 まあ、大抵は予測難度どおりで、問題なく仕事は済むが、

外れることもあるから、結局は、運次第。


(神様なのに、運だなんて……)


俺は、神様と言うのは運を司っていると、思っていたが、

この世界では、そうでないようだ。まあ俺は、神は神でも

暗黒神だし、


(運とか、そう言うのは光明神の方が、司っているのかな)


 ここで、雨宮が


「リスクは、あるけど、これが切っ掛けで、

お前にも、冒険者仲間が出来たらいいなって、俺は思うんだよな。

前の時は、それっきりだった見たいだし、あの二人は無理だろうし」

「仲間か……」

「この先、冒険者と活動するなら、そう言うのが必要だと思う」


仲間と言われたが、ピンとこなかった。仕事も、多少面倒な事が有っても

クラウもいるから、どうとかなるし、最近はイヴの力になってくれる

まあダンジョンの時は、人手が必要だったけど。


「仲間って、言われても、ちょっとな、俺、人付き合いって苦手なんだよな

面倒だから。それに、俺には、お前がいるから、それだけで満足だし」


すると、雨宮は


「うれしいんだけど、俺だけじゃ、だめだと思うんだよな」


と何とも言えない複雑な表情を浮かべながら言った。


 翌日、彼女と、イヴも加えて、馬車で出発し、一日じゃ到着しないので、

途中の村で宿泊、そして馬車を乗り換え、途中で一泊、

出会って間もないが、仕事だと思えば、緊張は、幾分か緩和される。

それでも、ベルと同じ部屋での宿泊は、緊張するので、

色々理由を付けて、部屋は別にしてもらった。

あとベルは、イヴの事が気に入ったみたいで


「私も、同型の自動人形、欲しいです」


と言っていた。「魅了」は除去したはずだが、

それでもイヴには人を引き付けるものがあるのだろうか。


 その後、午前中には目的の村に、到着し依頼主もあった。

この村でもと言うか。村からの依頼はどこも同じで、

依頼主は村長である。この辺のゴブリンも、雌らしく、

前と同じく、兜を外し、性別確認の後、昼過ぎに、

村人の案内で、ゴブリンの巣へと向かった。

場所は、ゴブリンの習性もあって、場所は違えど、やっぱり森の奥の洞窟。

村人は、


「終わったら、連絡をください」


と言って、通信スキルが付いたマジックアイテム。雨宮のとは違って

手のひらサイズの、鉄の箱のような物だが、それを渡し、

使い方等を教えた後、帰って行った。


 さて、イヴは、洞窟の前で待機、


「イヴさんは、連れて行かないんですか?」


とベルから言われたが


「彼女は、もしもの時の助っ人だから、仕事に参加せずに

近場で待ってもらっているんだ」


と答え、洞窟に入る。俺は、「暗視」があるし、

彼女も、「暗視」が使えるとの事で、灯りは必要なかった。

いつもの様に、ゴブリン退治が始まる。

第一波は、数体のゴブリン、


「私に任せてください」


彼女は、短剣を手に、俺の前に出て、敵を倒していき、

第一波は、彼女一人で倒した。だがすぐに第二波が来る。

今度は、さっきとは比べ物にならないくらい大勢だ。

まあダンジョンの魔獣に比べれば、ちっぽけであるが。


 今度は、俺も前に出て、「習得」と「斬撃」は、発動済みで、

敵がやって来ると、あとは身を任せて、

攻撃を避けつつもクラウで敵を倒していく、取りこぼしたと思える分は

ベルが、倒していく、途中からは、一緒に戦っている感じで

戦いの中、時折、彼女の様子を見たが、第一波の時も含め、

今も、なかなかの手際の良さで、ゴブリンを倒していた。

なお、落盤防止の為、バーストブレイズは使えない。


 襲って来たゴブリンの最後一匹を倒し、


「ふぅ……」


と一息ついた。


「すごいですね。話に聞いた通りです」

「君もすごいぞ。本当に新人さん?」


俺の見立てであるが、本当、新人とは思えなかった。


《彼女の腕前は確かです》


とクラウの折り紙つき。


 さて今回は、一番最初の時とは違い、全てのゴブリンが襲ってきたわけではなく、

洞窟内には、まだゴブリンが残っている。まあ、ゴブリン退治は、

いつもこんな感じで、残っている敵を、各個撃破する。

周辺把握があるとはいえ、これが結構面倒なのだ。

ちなみに、ベルは、魔法で、サーチが使えるので、これで、洞窟を解析し

敵の位置を把握できるとの事。


 周辺把握で確認したところ、今回は、いつもより規模が多いから、

残されたゴブリンの数も多かった。なお人は捕まっていない。

そして第二波を倒した後、少し進んだ所で、道が二手に分かれていて、


「手分けしましょう。私は、こっちに行きます」


と言って、走り去ってしまった。


「ちょっと……」


と俺は呼び止めようとした。腕は立つみたいだが、

まだ新人との事だから、少し心配になった。

もし何かあったら心苦しいし


《彼女なら心配ないと思いますよ。》


と言うクラウからの意見もあり、


(まあ、周辺把握で気を付けておこう。)


と思いつつ、彼女が向かったのとは違う方へと進み、

残りのゴブリンたちを倒していった。


 そして、「周辺把握」を見る限り、ベルも、うまくやっているようで

彼女の行く先々では、敵の反応が、あっという間に、消えていく


(本当に、新人さんか?)


と再度感じた。そしてベルの手際と、二人で、手分けしているからか、

いつもより規模は多いにもかかわらず、いつもより楽に感じた。


 敵をあらかた片付け、あとは、丁度、ベルが向かっている場所にいる

敵だけとなった。その為、合流も兼ねて、俺も同じ場所に向かっていた。


「なんか変だな……」


これまでは、直ぐに敵の反応が、消えていたから、

着くころには、終わっているだろうと、思っていたが

この時は、敵の反応が、なかなか消えないのだ。


《彼女、苦戦しています!このままでは、大変な事に!》


クラウの言葉を聞いて、俺は、走り出していた。


 そして、近くまで来ると


「いやぁ!助けてぇ!」


と言う悲鳴が聞こえて来て、急がねばと思った俺は、

武器をフレイに切り合え、ゴブリンの姿を確認すると、

近づきながら、素早く撃った。

弾丸は、フレイの「誘導」もあって、ゴブリンのみを撃ち抜く。

そして、彼女の元に着くころには、ゴブリンは全滅していた。


「大丈夫か?」

「はい……」


怪我は、かすり傷程度、彼女は、ゴブリンに押さえつけられ、鎧を脱がされていた。

俺が間に合ったからか、服は大丈夫なようだが、

一歩間違えれば、手籠めになるとこだったようだ。


「その拳銃、今のは貴方が……」

「まあな……」


実際はフレイのおかげだけど


「ありがとうございます……」


今ので、仕事は終了だが、


「もうゴブリンは、居ないから、一休みしようか」

「はい……」


あんな目に合って、辛いであろう彼女に、どう声を掛けていいか分からなくて

取り敢えず、休憩を提案した。


「そうだ、ぶどうジュースあるけど飲む?」


そう言って、俺は、ドリームボトルを取り出そうとした

以前のジュースは、飲み干していて、今、入っているのは

来る前に水を入れてきたもので、

もうジュースに変わっている頃であった。


「すいません……」


そう言うと彼女は、突然、俺に抱き着いてきた。


「ちょっと……」

「少しだけでいいんです……このままで、いさせてください」

「わかった……」


それで彼女が、気が晴れるなら、そう思って、

俺は、彼女の好きにさせた。まあ俺は、緊張で、気が気じゃなかったが



 この時は、彼女の事しか考えてなかったが

後々、思いかえしてみると、物語に、よくある展開だと思った。

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