6「戦いが終わって」

 何処かの部屋で、仮面の男、ジム・ブレイドが机の前に座り

机の上に置かれた水晶玉を見ていた。

そこには、和樹たちの様子が映し出されていた。

水晶の横には手のひらサイズの円盤状のものが置いてあった。


「事は終わったか、なら次は………」


ジムは、円盤を手に取ると、それをじっと見つめながら呪文を唱え始めた




 さて事は終わり、逃げられないようにミズキに


「家に帰るまで、俺と行動を共にしろ」

「俺と一緒に暮らせ」


と言う絶対命令を下した。彼女は体を少しビクッとさせた位で

後は無反応だった


 そして、この後はどうするか考え始めたのであるが、そんな時 

気絶している連中、死んだ爺さんの体、場所は人によって異なるが

妙な文字の様なものが浮かび上がってきた。


「これは生贄の印!」


 ここで、さっきまで黙っていたミズキが驚いたような表情で声を上げた。

そんな彼女の手の甲にも同じものが表れていた。

ただ彼女のは直ぐに消えた。


 次に、更なる異変が起きた、倒れている奴らが、消え

赤い煙の様なものになった


「何が起こって……お前なんかしたのか!」


と俺は、思わずミズキを問い詰めるが、困惑している様に


「私は、何も、私にも、訳が分からないんです!」


と否定する。本当の事を言っているように思えたが、鵜呑みには出来ない。

ただ煙が、洞窟の外へと向かって飛んで行ったので

そっちの方が気になって、それ以上追求せず、俺は、再び兜をかぶると、

煙を追った。そしてミズキも付いてくる。


 洞窟の外でも、同じことが起きていたが、さらに


「何だ、ありゃ!」


空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、煙はその中心に吸い込まれていた。


「バーストブレイズ!」


 思わず、魔法陣を撃ったが、弾もまた、魔法陣に吸い込まれて消えた。


「な……」


そして直ぐに、煙を吸い尽くし魔法陣は消えた。





再びどこかの部屋にて、ジムが


「これで良し、それにしても、あの爺さんの、ご自慢の魔獣どもと

ヤツを戦わせれば、もう少し力が溜まると思ったが、期待外れだな」


と愚痴の様なものを言ったのち、


「まあいい、次の準備だ」


そう言うと、円盤を懐に仕舞い。軽い足取りで部屋から出て行った。






 あの後、釈然としない気持ちを抱えながら、イヴの戦闘モードを解除させつつ、

帰路に就くことにした。当然、絶対命令でミズキは、俺と一緒に帰る。


 さて彼女は、あの状況について、知らないと言った。

先も述べた通り本当の事を言ってるように見えたが

過去に騙された手前、信じられず、


「俺の質問に正直に答えろ」


と言う絶対命令を出した後、尋ねたが


「本当に知らないんです。ただ、あの魔法陣は、生贄魔法の一種かと、」


「生贄魔法」

文字通り、生贄を捧げ、何かを起こす魔法の総称。

大きく分けて二種類あり、魂だけ、あるいは、そこに魔力も含め、捧げ

何かを呼び出すもの。これは、悪魔召喚や暗黒神復活の儀式が相当する。

魂だけなのは儀式の都合上、この世界とは、違う別の世界に

生贄を干渉させなければならず、その際に肉体が邪魔をする為。

もう一つは肉体の一部、時には肉体そのものと魂を生贄とし、

何かを引き起こすと言うもの。

起こされることは、破壊なり、逆に創造なりと色々ある。


 なお生贄魔法の中には、攻撃魔法を吸収すると言うものあるらしく

俺のバーストブレイズも吸収されたとの事。


「生贄の印」

肉体を生贄にする場合、事前に対象の体に書いておく必要のあるもの。

基本、魔法で書くため消すのは容易ではなく、書く時と

儀式の時以外では、目視もむずかしい。

なお、印の形は、大まかには共通であるが、細かい部分では儀式によって異なり、

印から生贄にして、どういう効果がある探ることが出来る。


「ただ、魔法陣も印も初めて見る魔法でした。」


「魔法陣」

魔法発動の際に、浮かび上がる。円状の紋様。

発動する魔法によって、その形は異なる。

発生は、基本的には一瞬であるが、防御魔法や召喚魔法、生贄魔法など

発動中、ずっと発生している物もある

浮かび上がる場所の関係上、魔法陣が見えにくい魔法や

また「サーチ」など魔法陣が発生しない魔法も存在する。


 聞いた話だと、魔法陣は、種類のよって

大まかに決まった形があるが、細かい部分を見ると個別の魔法によって異なる

巨大な魔法陣は、大まかな形から生贄魔法である事は確かだが

生贄にして、何をする魔法かは分からないそうだ。

そして、「印」の方からも分からない。なお、彼女の印が消えたのは

俺の契約で不老不死になってる影響らしい。


 さて、イヴに、ミズキもつれて、帰路に就くわけだが、

ここまで馬車で来たわけだから歩きだと大変。

後で、馬車が来るとは言ってたが、罠だったわけだから

嘘っぱちだと思ったし、ミズキに話を聞いたが、その通りだった。


「あっ!」


ここで宝物庫にあるを思い出し、


(アレを使って帰るか。でも目立つよなぁ……)


だけど、やっぱり歩きは辛いので乗って帰った。ちなみに、鎧の事もあって

「契約」の事を警戒して先に、「書き換え」の方を試した。

思った通り、乗り物を使うには「契約」の必要があったが、

特に問題点はなく、結局「書き換え」を行わず、そのまま「契約」した。


 なおこの世界では、目立つ乗り物であるため

町の近くまで、乗り物で移動し、人気のない場所で降り、宝物庫に仕舞った後

そこからは歩いて、アパートまで帰った。

なお、生贄魔法に関する話は、乗り物の中で聞いた。


 あと全くの余談であるが


(そういや、アイツら、どうやって帰るつもりだったんだろう)


 これも乗り物に乗ってる時、思い立って、

ミズキから聞くのだが、ここは教団の儀式場の一つで

あの爺さんの転移魔法で全員移動するとの事。

ちなみに、あの爺さんは、魔獣支配と転移に限れば、雨宮以上だそうだ。


 その後、ミヅキは俺の部屋で暮らしている。なお俺の部屋には空き部屋が

あって、そこが彼女の自室としていた。

しかし俺は彼女への恨みを忘れたわけじゃないので、

タダで住まわせるわけにはいかず、

前の住人が、残していったメイド服を着せ、掃除を主な仕事とする。

俺専用のメイドとして暮らしてもらう事にした。


 彼女に掃除を任せるのは。イヴが、掃除が壊滅的で、俺が掃除をしていたのだが、

その手間を省くためである。もちろん絶対命令で頼んだ。

 

 あとメイドなのは、別に俺が好きな訳じゃなく、彼女が家に来た時に、

今後の事を考えて、絶対命令で


「暗黒教団の紋章が付いたものを身に着けるな」


と言ったら、彼女は俺の前で、全裸になったのだ。

俺は、ローブくらいだと思っていたが、

なんと彼女の場合は、身に着けてるものすべてが該当した。


 俺は、女性を全裸にして、そのままにしておくような変態野郎じゃないので

急いで服を用意しようとして、とりあえず前の住人が、

残していったメイド服を着せて、しかもサイズはぴったりだったので

その流れである。

 

 あと全くの余談であるが下着は無かったので、イヴに調達させた。

まあ俺が買いに行っても、見た目的には女性だから、

変な目で見られることは無いだろうが、それでも恥ずかしかった。


 それからは、彼女は黙々と掃除係をしていて、俺は生贄転生の事などを

話しつつ、自分が、彼女が知っている暗黒神でない事は、話していたが

返答は無かったので、会話として成り立ってなくて、

実質、この一週間、彼女との会話は無かった。


 別に彼女と仲良くするつもりはない。

彼女と一緒に暮らすのは、あくまで保身のためだ。

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