最後の人類は異世界に誘われた

アークアリス

001

青空の下、野原で数人の子供が遊んでいる。

それはとても自然体に見えた。


それを一人の青年が眺めていた。


「とても精巧だ。」

「・・・。」


風は吹いているが、頭上の太陽は動かない。


「何時まで、そうしてるんだい?」

「・・終わりまで。」


少し考えて、男は言った。


「死ぬのは怖いか?」

「・・ああ。怖いね。」

「君がいなくならないと、終わりは来ないが?」

「自殺する勇気は、僕にはないんだ。」

「そうか。私はそろそろ店仕舞いがしたいのだが。」

「・・・。」


青年は黙りこんだ。


「なんで彼らを、作ったんだい?」

「・・みんな居なくなった。だから、友達が欲しかった。」

「友達にするには、彼らは足りないな。」

「・・僕には出来なかった。友達って言うのは、作るものであって造るものじゃないんだ。ましてや創るなんて・・、僕には出来ない。」

「でもそれじゃ、虚しくないか?」

「・・、しょうがないだろ。それが僕なんだから。」


男はまた少し考えた。


「別のところへ行かないか?」

「・・あるのか?」

「あるとも。まあ、こことは少し勝手が違うが、君ならどうにでも出来る。」

「・・、良いのか?僕みたいな人間が行って。」

「君なら大丈夫さ。」


青年は黙った。


「たとえ見えなくても、あそこの彼らが教えてくれてる。」

「・・予想は外れるかも知れない。」

「それでも問題ない。それで困るのは私じゃない。」

「いいのか、それで。」

「向こうに行けば友達作れるかも。なんせ生まれたてだ。」


青年は空を見上げた。


「不変の世界で叶わぬ夢を想いながら彼らを眺め続けてても、しょうがない。だろ?」

「・・それは、そうかもしれない。」


青年が目を瞑り、世界の崩壊が始まる。

世界が黒に塗りつぶされ、最後の一欠片となったとき、その中央にゲートが現れた。


「あの先が次の場所だ。」

「長い間、世話になった。」

「ああ、本当に永かった。」

「・・向こうにも、君はいるのかい?」

「居ることには居るが、分裂してたはずだ。」

「そうか。じゃあ、行ってくるよ。」

「君の旅立ちに祝福を。」


青年は軽く手を振って、ゲートを潜り抜けた。

後ろを振り返れば、世界はもう閉じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る