第7話 目的

 4人を乗せたドラグは1時間ほどで俺の家に到着してくれたのは正直助かった。

 あの雰囲気を馬車で3日間ととかは正直耐えられなかったから。


 到着して扉を開けるとすぐにヴェルとバンが迎えてくれたがその反応は思っているものと違うものだった。


「ご主人さま、お帰りなさいませ」

「主、おかえりなさいませ」


「・・・あれ、二人ちょっとやつれた? 元気になったと思ってたのに」


「そりゃこの4日ほど干し肉しか食べてませんからね・・・。もう顎が限界です。奴隷時代のほうがちゃんとしたもの食べれてたかもしれません。パンとかスープとか」


「私もおおむね同意見です。やはりあの判断は正しかったかと」


「そ、そうか・・なんかごめん。今日から二人増えるからよろしく」


 そういって後ろの二人をリビングに入るよう促す。

 彼らは嫌々ながらもリビングに入ってきてくれた。


「よし、じゃあまず・・・」

「ちょっとまて」


 おれがこの先の事をしゃべろうとした時だった。

 突然俺の話が横からさえぎられる。

 呪われている少女だ。


「お前は一体何者だ?」

「俺は完全回復薬を開発したもので君たちの怪我を治すために引き取った者だ」


「治す? この呪いをか? はっ、それは無理だな。だってこれは病とかそういう類ではないしそもそも治してくれるな」


「というと、君はもうすぐ死ぬのか?」


「ああ、この呪いでな。おまえも薄々わかっていたろ? 呪われているものがこのタイミングで競売にかけられる意味を。ようやくこの腐った世界からおさらばできるってことだ」


「そっちのあなたは? そうだな・・・この紙に書いて俺に伝えたいことがあれば教えて」


 そういって紙とペンを渡すと何か文字を書き始めた。

 が、俺には読めない。多分エルフ文字って奴だろう。


「ちょっと俺読めないからヴェル頼む」

「かしこまりました。えーっと、『俺を今すぐ殺せ。もうこの世界に用はない』」


「というと?」


『舌を切られてから長いこと経つせいでもう味が思い出せない。料理人としてこれは死ぬより悔しいことだし、何よりお前の意図が分からない』


「・・・・そうか、そうだよな」


「それになんだこの連中はそろいもそろって平和ボケしたような顔しやがって、人間にされた屈辱を忘れたのか?」


「いえ、覚えてますよ人間が私たちに何をしたか。私だって数日前は奴隷として売られて未知の病になって死を待つだけでした。ただご主人が救ってくれたのです」


「はっ、この回復薬を作ったって奴がか。ならおい、なんでお前は今日私とそこの舌無ししか買わなかった? そうだよな、絶望から救ったエルフのほうが扱いやすいもんな!!」


「お、お前!!」


「バン、おちつけ。いいよ続けてくれ」


「ちっ、気取りやがって。いいさ続けてやるよ。お前は思わないのか? 私たちを殺すほうが救いの手になるって。でも殺さないよな? だって大金はたいて買った商品だもんなぁ! 払った分くらいは働いてもらわねえと割に合わないもんな! だから私は殺されることを望む。もしかしたらお前は呪いを解けるかもしれねえが、もしここで私が死ねばお前は1000万どぶに捨てたことになるからな」


『俺もそう思う。お前のこれは慈善活動か? なぜほかのエルフを救わない? 俺たちはお前の自己満足に付き合わされているだけか? 不良品を治して、それで感謝されるのが目的か?』


「そうだよ、自己満足だ。ただ一つだけ違うことがあるけれど。・・・俺は4日前に目標を3つ立てた。それは完全回復薬の材料を仕入れること、腕のいい料理人を雇う事、そして・・・君たちの首輪を破壊する方法を探すこと」


「はぁ? 首輪を破壊だ? そんなことして何になる!?」


「まあ聞いてくれ。そして俺は4日前ここを旅立って王都に滞在して今ここに戻ってきたわけだが・・・俺はこの王都滞在ですべての目標を達成することができた」


「ど、どういうことだ?」


「アイナ」


「はい」


 パキンッという音とともにアイナの首輪が外れる。

 こいつには外れた時に位置を知らせるトラップが仕込まれていたがもちろん解除済みだ。


「な・・・・・・」


「俺は君たち5人の首輪を外そうと思っている」


「・・・お前は馬鹿か? そんなことしてどうなる?」


「ああ、言い忘れていたけど『主人の命令には逆らわない』って魔法だけは残してそのままにしておいたけどね。ほら、アイナの首筋にあざが残ってる」


 アイナの首筋を指さすとそこにはあざのようなものが残っていた。いや、残しておいた。


「これで俺が生きている間、君らは俺の命令を従わないといけないから俺を殺すこともできない。ただ一つ首輪と違うのは」


「俺が死んだら君たちは自由になるってことだ」


「「「「『・・・・・』」」」」


「料理人、君の質問に答えるよ。これは慈善活動なんかじゃない。自己満足かと言われればその通りだ。じゃあなんでこんなことをしているのか。簡単な話だ。これは呪われている少女きみの答えにもなるけど、俺には成し遂げたいことがある。だから俺が死ぬまでは払った分は手伝ってもらおうとも思ってる」


「はっ、そうかよ。なら私は・・・」


「それに、俺の父親は魔物に殺された。もし誰かが完全回復薬を開発してくれたら俺の父親は助かったし、もし俺があと一年早く完全回復薬を開発できていれば母親が病で死ぬことも無かった。だからおれはこの薬で救えるものがあるなら救いたかったんだただ単純に。この回復薬ができたのはほんの1週間前くらいだしね」


『それが健常者のエルフを見捨てる理由にはなっていないが?』


「そうだよ。ただ、もし俺がこの薬を使わなかったら君らは死ぬか死んだように生きていたよね? だから俺は君たちを救った、俺にしか救えないから。それにここまで話すつもりはなかったんだけど・・・俺はさっき成し遂げたいことがあるって言ったよね? それってなんだと思う?」


『エルフのハーレムを作るとかか?』


「いや、それもいいけどちょっと違う。そしてそれを真顔で読むなよヴェル・・・。まあいいや、正解はすべてのエルフの所在地が分かるようになる魔法の開発、そして君らの誰かに完全回復薬の作り方を伝授することだ」


「なっ!!」


「ここまで言えばわかるよね? 俺が死んだあと君たちは自由。そして君たちは他のエルフのありかが分かるし、さらに言えばその他のエルフたちは基本的に完全回復薬を水で薄めたものでも回復できるくらいの症状だろうからこれで多くのエルフを助けられる。もしかしたら国として再起できるくらいにはなるかもね」


「そ、そんなこと考えてらしたのですか?」


『ふん、だから健常者のエルフは我慢していろと? お前が死ぬまで』


「なるほど、確かにすべてのエルフを金で買うというのは無理な話ですからね。だからまずご主人にしか救えないエルフ、いわば私たちを助けてその後ほかのエルフの場所が分かる魔法を託したのちどうするかは私たちにゆだねると。そういう事ですね? 結論から言うと、ご主人はエルフたちが助かる道を探しているということになりますが」


「まあそんな感じだ。もちろん犠牲がないわけじゃない。だってこうしている内にも俺にしか救えないエルフはいるかもしれないからな。それに他のエルフも今頃どんな扱いを受けているのか考えるだけでもおぞましい。ただ・・・もう俺はエルフが雇えなくなっちまった」


「それはどういうことですか?」


「なんか競売の上限があるらしくてこれ以上はダメですって言われちまった」


「おそらく個人が強力な軍団を持たないようにするためでしょうね」


「まあそんな感じか。それにそんな位置が分かる魔法なんてできるかどうかわからねえし・・・。これで満足か?」


『・・・俺にはおおむね満足のいく説明だ。その魔法が開発できるありきであればな』


「わたしは・・・・・」


「よし、じゃあまずはこれを飲んでもらう。二人ともこれを。俺の命令には逆らえないはずだよな?」


「バン、アイナ、二人を抑えてくれ」


「「承知しました」」


 こうして二人は他の者たちと同じように舌は再び生え病は綺麗さっぱり無くなった。


「ざ、残念だったな・・・」


 ただ一つ、呪いを解除できなかったことを除けば。

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