物語の真実

搗鯨 或

悪役

 私は何をしてしまったのだろう。


 グツグツと鍋を煮ている彼女は私を睨んでいる。

 子育てもしない酷い親共から助けただした子供らは、最後はいつも私に刃を向ける。この子たちも彼らと同じ。 

 甘くて可愛いお菓子の家に快く招き入れ、食物をあげ、清潔な衣類を着させ、ふわふわのベッドに寝かせてあげているのに。

 一回だけ兄の方を牢にいれたが、あれは実の妹に手を出そうとしていた彼が悪いのだ。妹は眠っていたからそのときのことを知らない。醜い老婆が、愛する兄をいじめてるという光景しか、彼女はみていないのだ。


 私は子供たちのことを思って、あれをしたのに、毎回このような目に合うのは何故? 私の顔が醜いから?

 

 元々私はこのような顔ではなかった。何度も何度も鍋に入れられ、何カ所も何カ所も火傷を負い、毎度毎度爛れた肉を冷水で冷やし、このような醜い顔になってしまったのだ。これが所謂、悪役というものなのだろう。

 

けど、私は忘れない。

不幸な子供たちを救いたい想いだけは。

今度は、絶対に、幸せな家庭を……!

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物語の真実 搗鯨 或 @waku_toge

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