第44話 二人の秘密行動

食堂の定位置に何時もの二人の姿があった。

洞窟から内部への大きな扉は荷物の搬入搬出で昼間は殆ど開いていた。

食堂の扉も常時、利用する人がいて開いたままの状態だった。

二人が誰にも気付かれずに席に戻る事は彼らにとって簡単な事であった。

二人は只、寄り添って眼を瞑っているだけでは無い。

キャサリンが人口頭脳のアダムにいろいろな質問をし勉強していた。

そして解らない処を時々彼に尋ね理解を深めていた。

例えば今は慣性制御装置についてアダムに質問していたがアダムには装置の構造を説明する事しか出来ず理論はまだ彼の頭の中だけにしか存在して居なかったので彼に尋ねていた。

<慣性制御を理解するにはそれ以前の理解がまだ足りません、残念ですが、光の特性、速度を測る方法と理論、重力の特性、まだまだ熟考して下さい>

<そうですよね、まだまだ重力の事、光の事、解らない事ばかりです、私に慣性制御が解る様になるでしょうか>

<大丈夫です、諦めない事が大切です、貴方は粘り強いですから>

<ありがとう、良い面を見てくれ、言い方を変えれば、諦めが悪い、執念深い・・・ですものね>

<処でアダムに聞いたのだけれど母船は最初、月の裏側に在ったのね>

<そうです、聞いたと思いますがアメリカのアポロ計画が出た時に現在の小惑星帯に移動しました、ですが移動させるのが少し遅かった様で月周回衛星に写真を何枚か撮られてしまいました、NASAもロシア、当時はソ連でしたが情報開示はしていません>

<へ~ぇ、まだ極秘情報があるのね>

<私の知る限りでもいっぱいありますよ>

<ふ~ん、アダムに聞いてみるわ、宇宙人とか遺跡とか地底世界とか、いろいろね、面白そうだわ>

<何度も言いますが、全てを教えてくれる訳ではありません、内容もですが貴方の知識の度合にも寄ります>

<私が何を何処まで理解しているかに寄ってと言う事???>

<そうです>

<アダムは私の教育係、先生ね、良し頑張るわ、よろしくね、アダム>

<お任せ下さい、ミス・キュサリン>

キャサリンがアダムと話している間、彼は慣性制御装置を搭載した搭載機のテスト状況の詳細を確認していた。


見学と発掘作業を行っていた博士達が昼食と休憩に戻って来た。

重機を操縦する作業員達は現地に設置された食堂兼休憩所を利用していた。

勿論、博士達の中には現地の食堂を利用する人達も居た。


「貴方達二人はずっと此処にいたの」

キャサリンの母・ヘレンが二人の処に来て呆れた様に尋ねた。

ヘレンの後ろにはマーガレット、ジョナサン、カリー、ヘーゲンが従っていた。

「お母さん・・・何処に居たと思う???」

「・・・貴方達・・・まさか・・・二人だけで・・・」

勿論、秘密の事だけに船の話は出来ずヘレンは押し黙った。

「二人は何処かに行っていたのですか」

「さぁ~、どうでしょう」

「お母さん、明日は議会への出席がありますので昼食の後に一度、家に戻りましょう、カリーはキャサリンの助手として一緒に家に帰る事になります、他の方は此方での仕事を続けて下さい、ジョナサン、マーガレットは貴方の助手です、しっかりと教授をお願いします」

「はい、了解です」

彼の言葉をキャサリンが通訳して伝えた。

周りに大勢の人がいるので彼は英語が出来ない振りを続けていた。

ジョナサンとマーガレットは考古学者たちと一緒のテーブルに向った。

二人は幹部たちと何時も一緒では教授達の気持ちが遠のくと判断し一緒のテーブルを避けていた。


「そうそう、婿殿、ジョナサンが貴方に尋ねてほしいと言っているのよ、ピラッミッドの金の純度を調べたいので少しサンプルを取っても良いかですって」

「お母さん、それはジョナサンの意見ではありませんね」

「えぇ、何処かの教授達の要望の様よ、何故解ったの」

「何故って、金の純度なんて純真な考古学者は気にしないでしょう、考古学者なら不純物が何処かを知りたい、どの遺跡と似ているのか知りたい、と言うのではないでしょうか???」

「確かにそうね、金の価値を気にする何て変よね、トレジャー・ハンターが紛れ込んでいるのかしら」

「此れだけ人数が多いと一人や二人はいるでしょうね」

母と娘の親子が語りあった。

「婿殿の情報収集能力は凄いでしょ、解らないのかしら」

「さぁ~、どうかしら」

「皆さん、申し訳無いのですが、私は大統領へのテレビ報告会が在りますのでこれで失礼します。

お見送りが出来ませんがご勘弁下さい、又、お会いしましょう」

ヘーゲンがテーブルを離れて行った。

「お母さん、アダムに聞けば良いじゃ無い」

「アダムが教えてくれないから聞いているのよ」

「すみません、アダムってどなたですか」

カリーが当然の様に質問した。

「カリー、今は聞き流してね、これは極秘中の極秘事項だから気を付けてね、此れから私と一緒にいる事になるから極秘ばかりよ、覚悟してね」

「は・はい、解りました」

「それからね、カリー、まずは日本語の勉強をしてね、ジョナサンと貴方がいたから家でも英語で話していたけど、いつも我が家は日本語なのよ、此れは彼が来る前からの事よ」

「日本語ですね、嬉しいです、勉強したかったのです、本当ですよ」

「疑ってなんか居ませんよ、今、世界中で日本語の勉強をしている人はとても多いらしいわ」

「どうして皆さんは日本語が出来るのですか」

「その話は家に帰ってからにしましょう」

キャサリンは英語を日本語に変えて彼に話掛けた。

「貴方、直ぐに帰りますか」

「皆の準備が良ければ何時でも良いですよ」

「お母さん、カリー、今から直ぐに家に帰るけど良いかしら」

キャサリンが英語で二人に尋ねた。

「オーケー」

「イエス」

「では、行きましょう」

「あの~、飛行機はあるのですか」

カリーが当然の問いを発した。

「私達だけの専用機よ」

「えぇ~そんなに、このプロジェクトは重要なのですか」

「まぁ~、その辺の事情はぼちぼちお話ししましょう」

「さぁ~、帰るとなったら早く帰りましょう」

ヘレンが皆を急かす様に立ち上がった。

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