第42話 ピラミッド
翌朝、待ちきれなかった者たち、朝食を食べない者たちが先に見学に出掛けた。
見学用の建物は前日からの徹夜の作業で完成していた。
その建物から見えるピラミッドの先端はとても小さく双眼鏡、望遠鏡が何台も用意されていた。
プロジェクトの幹部たちはゆっくりと朝食を食べてバスに乗り見学に出掛けて行った。
重機による発掘作業は現時点では中央からまだ遠い為、バス数台で近づき近くでの見学が許された。
約1m程の黄金に輝くピラミッドに皆が魅了され只々見惚れるばかりだった。
誰かがぽつりと言った。
「此れって純金かなぁ~」
釣られて次々に発言が続いた。
「厚さはどれ位かな~」
「純金の塊って事は無いですよね~」
「何処まで掘れば全体が見えるのでしょうか」
「エジプトのと同じ大きさだと高さは150m、幅は230m以上ですよね」
「その大きさの全てが黄金色ですか」
「まさかずっと下まで純金ですか、まさかね~」
「エジプトへ行ったのですが、ずっと下まで黄金でしたよ」
「そうか、君も行ったのか、私も行ったのだよ、あれは見物だったねぇ~」
「君達も行ったのか、まぁ、考古学を学ぶ者なら行って当然だな」
「世界中から人が集まり行きたくても行けない人がいっぱい居たそうだ」
「確かに凄い人だったなぁ~」
「あれは本当かなぁ~、今では現地の人も着ない民族服のカラベーヤを着た人が関係しているらしい、と言うのは???」
「タイミングはぴったりだったが人にあんな事が出来るものか」
プロジェクトの関係者で見学に出掛けない者が二人いた、勿論、彼とキャサリンであった。
彼が食堂の壁に寄り掛り彼にキャサリンが寄り掛る姿は基地の食堂の常設の彫刻の様に見慣れた風景になりつつあった、二人の前のテーブルにアイス珈琲があるのは言うまでも無い。
基地の食堂のテレビ、各部屋のテレビで全体を映したピラミッド、細部を映したピラミッド、採掘工事の進捗状況などが見られる様になっていた、勿論、彼が設置要請した設備である。
また、プロジェクトのメンバーに配られたノートPC、携帯電話、パッドからも見る事が出来、自分たちの意見や気付いた事を皆で共有出来るサイトも設置されていた。
サイトにはいろいろな意見が書かれ議論が白熱していた。
食堂、会議室のあちらこちらで意見交換が行われ、即刻、出された意見がサイトに上げられる様になっていた。
中でも一番の話題はピラミッドの建設年代についてであった。
二日目に彼とキャサリンが座る壁際にジョナサンがやって来た。
「お願いがあります」
「何でしょう」
ジョナサンにキャサリンが応えた。
「重機の採掘は中央からまだまだ遠い処で行われています、そこで中央の発掘を行いたいのですが許可を頂きたい」
「良いでしょう、但し、作業員はいません、皆さん自らが行う事になります、宜しいですか」
「はい、そのつもりです」
「許可します、重機の担当からの危険注意勧告が出た時は即時中止が条件です」
「承知しました」
「必要な用具の保管場所はミスター・ヘーゲンの補佐官が教えてくれます」
「はい、ありがとうございます・・・彼にお礼をお伝え下さい」
「はい」
ジョナサンが遠巻きに様子を伺っていた博士たちに駆け寄り結果を報告すると皆の顔が綻びわいわいがやがやと出かけて行った。
「貴方の予測は何処まで、先まで出来るの???」
「時間の問題ではありません、人の欲求の問題です、人の心の動きを理解しているだけの事です」
「先程の博士たちの中に初日に文句を言っていた二人が居ましたが大丈夫ですか」
「二人は議長に選ばれた彼に嫉妬しただけの事です、今ではプロジェクトに選ばれた幸運に感謝しているはずです、今では彼の一番の理解者ですよ」
「それは良い知らせね、処で私の今度の訓練は何時、お母さんは何時、ジョナサン、カリー、マーグには何時知らせるの」
「我々二人は今からではどうですか、他の人はまだですね、特にマーガレットはまだまだですね」
「マーグの性格は変わるのかしら・・・まぁ少しずつね、じゃあ行きましょうか、貴方」
キャサリンの言葉が終わった途端に二人の姿が食堂から消え宇宙にあり船の搭乗口が目の前に在った。
キャサリンは驚く風も無く搭乗口へ漂って行き、その後を彼が追う様に漂って入って行った。
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