第41話 エリア51
其処には300メートル程の間隔で四角を描く様に4箇所の建設作業現場があり、その内の一か所は完成間近い様に見えた。
完成が近い塔は10メートル程であった。
これも彼の提案で建設が進められていた。
彼の設計図では先端から鋼鉄製のロープを伸ばし対角線上の塔の下部に繋ぐ。
これを4つの先端から繋ぎ出来た四角錘に幕を垂らし内部を見られ無い様に遮蔽するのである。
ピラミッドは先端の1メートルが出ているので9mの余裕が上にはある。
エジプトの物と同じ成らば深さ150m、幅230m程の穴を掘らなければならないのである。
彼ら研究者は仮に作られた小さな遮蔽用のテントの中に交代で入り実物を見分した。
最後にヘーゲン以下プロジェクト幹部が入り実物を見分した。
それは金色に眩しく光るピラミッドの先端・キャップ・ストーンと言われる部分が見えていた。
たがエジプトのピラミッドが光を放った時、キャップ・ストーンなどと言うものは無く全体が金色に輝き、キャップ・ストーンは後世の人達の思い込みに過ぎないと言われる様になっていた。
何人かの学者たちもそうであった様にジョナサンも手を差し伸べピラミッドに触った。
ジョナサンは他の触った人達と違い失神する事は無く先端から砂に埋まった部分までを熱心に触った。
皆も次々に触り初め残されたのは彼とヘーゲンだけとなった。
ヘーゲンは手を伸ばしては引っ込め、手を伸ばしては引っ込めと何度も繰り返したが最後は諦めてしまった。
「欲が捨て切れない」
ヘーゲンがポツリと独白を言った。
バスに皆が乗り先程の会議室へと向かって戻り始めたが行きと違い帰りは観た感想を言い合う者たちと黙って考え込む者たちに別れていた。
少し早い食事の後、再度会議室に皆が集まった。
ヘーゲンが椅子から立ち上がりマイクへと近づいた。
「では、本日二度目の会合を始めます、まず現状をお伝えしておきます。
見て頂いた様に外部からの遮蔽の為の大きなテントを作る作業を行っています。
このテントの設計も材料も彼から提供された物です、完成予想はこの様になります。」
ヘーゲンがそう言うと左の壁面を指さすと壁面に画像が映し出された。
「四本の支柱からケーブルが対角線上の支柱下部に張られ出来た四角錘にテントを張る事になります。
この作業に一週間を予定しています、その後、発掘作業になります。
大まかな部分は重機を使いますが大部分は手作業になるでしょう。
それまで皆さんはお仲間と一緒に考えるなり一人で考えるなりして下さい。
皆さんの中には、一週間も前に何故集めたのかと疑問に思われる方もおいででしょうが、此れも守秘義務契約の一環とお考え下さい。」
黄金に輝くピラミッドを見せられた後ではどの様な要求をされても飲むしかなかった。
その時、部屋のドアが開き一人の軍人が入って来て壁際に座る将軍に耳打ちした。
ヘーゲンが気付き話の間を空け、その様子を見つめた。
話を聞いた将軍は入って来た軍人の連絡将校をヘーゲンの元へ行かせた。
連絡将校がヘーゲンに近づき耳打ちした。
暫く耳を傾けたヘーゲンは連絡将校と将軍に頷くとマイクに向かった。
「少々お時間を下さい」
ヘーゲンはそう言うと後ろに座る彼・サクライの前に行き話始め様とすると彼が手で制した。
「建設工事は中止し明日から重機を入れて採掘を始めて下さい、採掘現場から50m離れた処に教授方の見学用の建屋を準備し明日からここと現場を往復するシャトル・バスを用意して下さい」
「・・・はい、解りました」
ヘーゲンは首を傾げてマイクの前へと戻った。
<何故、彼は知っているのだろう>
「予定が変更になりました、明日から採掘工事を始めます、皆様には現場近くに見学する場所を準備致します、現場へはバスを定期的に運行します、では、本日はご自分の部屋へ戻られてお休み下さい、なお、食堂は24時間何時でも利用できます・・・解散です、お疲れ様でした」
教授たちの宿舎は2階と3階の一人部屋が当てられ、ヘレン達は地下2階の将校用が当てられた。
彼とキャサリンの二人は勿論、一部屋である。
全ての部屋にはベッド、シャワー、トイレ、机、洋服掛けと物入れ用の箪笥があり、将校用の部屋には6人用の応接のテーブルと椅子がありベッドは横幅が広いダブルでバスタブも付いていた。
「ミスター・サクライ、何故私が話す内容が解ったのですか」
食堂でプロジェクトの要人たちが食事をしている時にヘーゲンが彼に尋ねた。
キャサリンが通訳して彼に伝えた。
「あの時点で貴方が私に尋ねる内容は一つしか無いでしょう」
「何処から情報が漏れたのでしょうか」
「現代は国家だけでは無く民間でも衛星を持っている時代です、特にエリア51は注目の地点ですから何処かの国の誰かが見ていても不思議ではありません、秘密が難しい時代です」
「テレビのニュースでは衛星画像が流れていました・・・確かに」
「エリア51は何かと話題になりますからね、此処に宇宙人がいるのでしょう」
ヘーゲンと彼の話にマーガレットが割り込んだ。
「馬鹿だねぇ~この子は、テレビの話題を真に受けて」
「どうして、嘘だと解るの、お母さんは知っているの、議員だから秘密を知っているのね」
「違いますね、ミス・マーガット・ヘイウッド、もし、此処に宇宙人がいるのなら人類は今頃火星に何人も住んでいるでしょうね、だからそのな者はいません」
「・・・成程、そうね、でも本当は火星に人が行っているんじゃないの」
「それ程の大事業を秘密にする事は無理ね、お母さんが保証するわ、ジョナサンが正しいと思うわよ」
ヘレンとキャサリンは彼の船で月も火星へも行っていて人類が居ない事を知っているとは此処では言う訳にはいかなかった。
同じく知っているキャサリンと彼は黙って皆の話を聞いていた。
「でも、どうして信じている人がいるのかしら」
カリーも会話に参入した。
「そうよね、何か理由があるはずよね、日本のことわざにあるのよね、根も葉も無い処に煙は立たず・・・何等かの理由が無ければ噂も広がらない、と言う意味かな、FBIで何か秘密にしている事があるんじゃ無いの、お姉さん、それとも彼なら何か知っているのかなぁ~」
「・・・」
キャサリンは無言だが珍しく彼が話出した。
「イエス・キリストを神様と思っている人は世界中に何人いるでしょうか、イギリスの、スコットランドのネス湖にネッシーと言う恐竜がいると信じている人が世界中に何人いるでしょう、イエティー、雪男、アトランティス、ムー、古代の宇宙人、バミューダの魔の三角地帯などなど・・・貴方がたは信じますか、信じていますか、世界中に信じている人が大勢います、何故でしょう・・・それが理由です」
「・・・今の世の中で真実って何、何が真実なの」
「光がこの世で一番早い・・・でしょうか」
マーガレットの独白の様な言葉にカリーが物理学者らしい答えを出した。
「まだ、人類が発見していないだけかも知れないわよ」
キャサリンが初めて口を開いた。
「じゃ~あ、私は生きている」
「マトリックスと言う映画を知っているでしょ、貴方も私も機械に繋がれて夢を見ているだけかも知れないわよ」
マーガレットの意見にキャサリンが疑問を投げかけた。
「・・・」
「貴方がたは何時もそんなに難しい話をしているのですか」
ヘーゲンが何とも言えない声で質問した。
「いいえ、家で一番多い話題は食べ物なのよ、食べ物特に甘い物、ケーキが多いわね」
ヘレンがヘーゲンの質問に答えた。
「私は仕事柄でしょうか、人の話方や語調などからいろいろと判断するのですが、娘さん、お姉さんの方ですが、何か答えに含みを感じるのです、彼女は言っている以上の事を知っている様に感じたのですが」
「えぇ~、お姉さんは何ていったかしら・・・光が一番早いと言うカリーの言葉に・・・人間が発見していないだけかも知れない、と、えっと、マトリックスの話ね、これのどこに含みがあるの」
「そうですね~、例えば光よりも早い物を知っているか、マトリックスの様な物が現実にある、と知っているか、でしょうか」
「ミスター・ペーゲン、お姉さんは只のFBIの下っ端ですよ、物理学者でも心理学者でもIT技術者でもありませんよ、極秘プロジェクトに参加できたのも彼の通訳だからですよ」
「そう言えば、彼は先程、英語を話しましたね、通訳は必要ないのでわ」
「ミスター・ヘーゲン、お願いがあります、その事は内緒にして下さい、彼の流儀なのです、彼が英語を喋らない、理解しないと思っている人は本音を言うのです、その為に彼は話せない振りをしているのです」
「・・・成程、解ります、解りました、秘密にしておきます、でも、と言う事は私は信用されたのでしょうか」
「と言う事だと思いますよ」
「ありがとう、議員」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます