使徒・古き者ども
イミドス誠一
第1話 第一の啓示
エジプトのギザには大きなピラミッド三つとスフィンクスがある。
クフ王、カウラー王、メンカウラー王のヒラミッドだ。
エジプトの二大産業の一つが石油であり、もう一つが観光だ。
近年、クーデターや暴動が相次ぎ、観光産業に大きな打撃を与えていた。
一見平和そうな今も観光客が乗る観光バスには警察官か軍人が銃を持って同乗していた。
又、町の角々には自動小銃を持った兵隊が何人も立っていた。
20xx(14)年5月のある日、それは突然始まった。
スフィンクスが太陽の光の反射を強めた様に徐々に光り始め、次にクフ王のピラミッド、次にカウラー王のピラミッドと次々に輝き出しその輝きが増して人々が見つめていられない程になり目を顔を背けた。
そして目が慣れた頃に見直すとスフィンクスとクフ王のピラミッドは金色に、カウラー王のは白く、メンカウラー王のは銅色に輝いていた。
これまでも巨大で圧倒していたが今は荘厳で威厳に満ち豪華賢覧だった。
多くの人々がその場でひれ伏し額を地面に押し当て祈りを捧げていた。
この日、アメリカと日本のテレビ局が取材に来ていて二台のテレビ・カメラが克明に捕らえていた。
日本のクルーのカメラは最新型の8kカメラだった。
このニュースは忽ち世界中に配信された。
現代はネットワークの時代だ、現地に居た観光客、現地人の携帯から写真や動画が撮られネットにアップされた。
その数時間後には飛行機もホテルも予約で満杯になってしまった。
世界中の富豪たちはこぞって自家用機をエジプトへ飛ばし、ホテルが空いていないと知ると持ち船でエジプトを目指した。
四つの輝きは夜になっても続き、まるで昼の様に輝きその荘厳さが際立って見えた。
アメリカと日本のテレビ局の映像が世界中のテレビ局に売られ拡散した。
ただその内容は局毎に異なり概ね輝き始めからの物だった。
元の画像を持つアメリカの日本の局の放送を見た視聴者から二つの局に電話が殺到し、電話の内容は一貫していた。
映像の最初の方に小さくではあるが異常なものが映っていたのだ。
それは現地の衣服、ガラベーヤと言うが・・・を着た男が一人映っており、その男がスフィンクスの前に立ちスフィンクスとピラミッドに向かって手を突き出していたのだ。
そして四つが輝き始め光に包まれた時にはその姿は消えていたのだ。
それはまるでその男がこの現象を起こしたかの様に見えたのだ。
その男の正体と行方を世界中の放送局が探した・・・だが所詮は後姿しか映っておらず無理な話だった。
実は探していたのは報道機関だけでは無かった、各国の政府、特に諜報機関が探していた。
と言うのも輝きが二日経っても三日経っても収まらず、その輝きの意味に人々が気付き始めたからだった。
変化は輝きだけでは無く形にも有った、スフィンクスは風化の跡も無く顔は人の物では無く犬の様で色は黄金色だった。
クフ王のピラミッドも同様に完全な四角錐で欠けた処も無く色は黄金色だった。
カウラー王のピラミッドも同様に完全な四角錐で欠けた処も無く但し色は白だった。
メンカウラー王のピラミッドもこれまた同様に完全な四角錐で欠けた処も無く但し色は銅色だった。
このことから世界中のエジプト考古学研究者がこれまでの意見を変え、これが建設当時の姿に違い無いと言いだしたのだ。
その意見の中にはスフィンクスとクフ王のピラミッドとされていたものは、これまでの建設年代よりもかなり古い、何千年も古いのではないか・・・と言うものも有った。
もし、この現象を例の男が起こしたのだとしたら・・・諜報機関が動きだしたのも無理からぬ事だった。
だが、何分にも後姿だ、現地のガラベーヤ姿から各国の諜報員がエジプトで活動した。
ところが現地に行った各国の諜報員は驚いた・・・現地の人々・・・男性の殆どはジーンズにTシャツ姿でガラベーヤを着ている者が皆無だったのだ。
そして有力な情報としてその日、ガラベーヤ姿の東洋系の男を見たとのものがあった。
輝きは一週間続き突然消え姿も元に戻ってしまった。
その間に25人の人が病院に搬送された。
スフィンクスとピラミッドから黄金を取ろうとした者達だった。
しかし不思議な事に触った者達も大勢いた。
好奇心で触った者と盗もうとした者の違いだった・・・人々は呪いだと噂した。
輝きが消えてもエジプト観光の熱は冷めず歴史上最高の観光客数となった。
だが各国のニュースからは消えて行った。
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